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無間地獄での出会い

 かつて、幻想郷と外の世界を手中に収めようとして跡形もなく消滅した白銀の髪の美青年ーー十六夜境夜。


 彼は闇の中でゆっくりと意識を取り戻し、周囲を見渡す。


「俺は確かに死んだ筈……」

「そこに誰かいるのか?」


 その言葉に振り返るが、辺りは闇に覆われていて解らない。


 境夜はその声に警戒しながら問う。


「誰ですか?……姿を見せなさい」

「……何を言っている?」

「その足りない頭では質問の意図が解らなかったでしょうか?

 俺はお前が何者かと聞いたのですが?」


 境夜の問いに声の主は笑う。


「足りないのはお前の方ではないかね?」

「……なに?」

「まさか、此処が何処かさえも解らないのか?」

「……」

「ふっ。とんだ笑い者が来た様だ。

 まあ、少しは退屈しないで済む」


 闇の中、数人の声が響き、境夜を苛立たせる。


「まあ、良い。ようこそ、無間地獄へ。

 私の名はキトラ。幻想郷を手中に収めようとして失敗した竜人だ」

「……ほう」


 境夜はその言葉を聞いて、うっすらと笑みを浮かべた。


「お前もーーいえ、貴方も幻想郷を支配しようとしたのですか?」

「その口振りだと、お前ーーいや、君もそうなのだな?」


 二人は視認も出来ない中で互いを同じ種類の悪だと認識する。


「貴方はどんな事をしたんですか?」

「数億単位の生物を殺し、独裁者達を裏から支配した。そして、幻想郷をも支配しようとした」

「なかなかの犯罪っぷりですね。素晴らしいですよ」


 境夜はそう言って素直にキトラを誉めた。


 本来ならそんな話をされれば、狂人の戯言とも恐怖の対象とも取るだろう。


 だが、此処は無間地獄。


 大罪を犯した者だけが来る地獄である。


「そう言う君は?」

「俺のした事など、貴方に比べれば、可愛い物です。

 幻想郷の全ての異変を再現し、それからーー」


 そこまで言って、境夜にノイズが走る。


 そこから先の記憶が飛んでいるからだ。


 境夜はそこで頭を抑え、思考が低下するのを堪えた。


 それ以上は開けてはいけない何かがある。


 そう察して、境夜はそれ以上を考えるのを止めた。


「? どうかしたのかね?」

「……いえ、なんでもありません。少し頭痛がしまして」

「頭痛?」


 境夜のその言葉にキトラはしばし、考え込む。


「もしかして、君は肉体を持ちながら、此処にいるのかね?」

「貴方は違うので?」

「当然だ。無間地獄は大罪を犯した死者の魂が落ちる深淵の地獄だ。本来なら、あり得ない事だ」

「本来なら、ですか」


 境夜はそこで考え込むとニヤリと笑う。


「キトラさん、でしたね?……此処から出たいとは思いませんか?」

「なに?」


 その言葉にキトラが問い返すとすぐに何かを察して低い声で笑う。


「成る程。君にはそれが可能だと言うのかね?」

「当然ですよ。俺は独学で幻想郷に侵入した経歴がありますからね」

「素晴らしい」

「その時は俺と一緒に此処に追いやった奴等に復讐しませんか?」

「君が実際に此処から出れるのを証明出来れば、その提案に乗ろう。

 いや、それだけではなく、君を新たな独裁者として迎え入れようじゃないか」

「貴方が支配者でなくて良いのですか?」

「私は少々、厄介なのに目を付けられているのでね?

 それに裏から支配するのであれば、私が手を下しているのと変わらない」

「ふむ。まあ良いでしょう。全ては野望と復讐の為に」

「期待しているよ、境夜君。精々、頑張りたまえ」


 二人はそう告げると再び、闇と同化する。


 悪の再臨。


 それは白紙に戻された存在と無間地獄に幽閉された魂だけの存在との出会いから始まった。

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