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二章 * 南へ 3

今回少し短くなりました。

 王都とその外側の境界線を示す立ち並ぶ木々の間を真っ直ぐ南へ伸びる道に馬の足が入ると同時に、会話をせず一気に馬を走らせた。早馬に慣れていない二人にはその速さで乗馬しながら会話は困難だろうとガイアが判断したからだ。

 リュウシャがとても優秀な馬だから安心して走らせていいと断言した通り、リオンは手綱を握り、体をまかせているだけで良かったのでひたすら走らせることが出来た。

 それでも初日、初めての早馬、日の入りが早い季節、そんな理由で経験者二人は早目にその日の移動を切り上げた。


「あの、もう少し進んでも私は大丈夫です」

 リオンが気を遣われたと思ったのだろう、宿探しをしてしまおうと言ったガイアに焦りを隠せぬままの早口で言った。

「焦る必要はない、先行隊は恐らくとっくに夜営の準備をして食事の支度をしている頃だ」

「そう、なんですか?」

「ああ、内乱制圧や確実に実戦とわかっているときほど計画的に休息をとって体力や魔力を温存する。そういう判断ができるからこその団長だ、いくら先行隊だとしても遠方や僻地への遠征で部下を使い物にならなくするようなバカはしないよ。今先行隊を指揮しているのは40世世代の団長で、性格には難ありの男だが、その辺の判断力は一流で、部下を大切にするのでも有名だ。あのジェスターと組んで国境線を守ってきた実力者だ」

「そうなんですか」

 ほっとしたリオンの顔を見て、ガイアも表情を緩めた。


 程なくして宿は見つかった。王都から早馬で数時間南に下ったところにあるこの町ネイバはそれほど大きくはないが、宿代が割高な王都を迂回して南へ行きたい者が立ち寄ることもあり、宿や入浴施設、休憩処に食事処など、旅人相手の商売で成り立っている。その為急な悪天候などで大勢の人々が足止めされない限り、大抵は選り好みさえしなければ宿を見つけられる。若い二人がいきなり野宿も辛いだろうと思ったのもあり、この町が選ばれたのだろう。


「困った」

「なにがですか?」

「ここの宿は自炊だそうだ」

 それのどこが困り事なのかと、リオンが首をかしげる。旅に付き物の自炊はリオンは慣れているしフィオラもそういう訓練を受けていると聞いてるから別になんの問題もない、そう伝えようとした時だった。

「久しぶりに腕がなるな」

 宿を決めたリュウシャとそれに付き合っていたフィオラの会話。

「リュウシャ様もよくされたんですか?」

「もちろん、今晩のごはんは任せてくれ。得意なんだよ」

「おおっ?! いいんですか?! 頼もしい!! 嬉しいです!!」

 その会話を耳にして、そして凄まじく嫌そうな顔でガイアが告白。

「恐ろしく不味いんだ」

「えっ?!」

「部下が黙って食うのを勘違いしててな。そして奴は味覚バカだ、気絶しそうなくらい辛いとか胃が痛むくらいしょっぱいとか、飲み込めないくらい甘いとか‥‥。何でも食らう魔物も食わなかったという伝説まで作ってるんだ。上皇は殺人メシと呼んで一切口にしない。本人にその自覚がないからたちが悪い」

「‥‥疲れてるってのを理由に、屋台で食べませんか?」

「賛成だ」


 屋台に行くのを渋るリュウシャを言いくるめて四人は馬を預け、取れた二部屋を確認して荷物を置くと、宿のすぐそばの屋台に入る。

「味が薄いな」

 疲れた体に染み渡るようなほかほかで程よい塩加減の野菜たっぷりの美味しいスープに不満そうに塩を振りまくるリュウシャにあっけに取られ、そして作らせなくて良かったと心底思ったリオンだが、食事がすすみ、明日の進む予定などで話が弾むなか、不意に彼女は

「あ、そうだ。忘れないうちに」

 と言って、お金や薬の入った小箱を入れてある腰巻きの小さなバックを開け、ビートから受け取った皮袋を取り出す。

「そう、気になっていたんだ」

 まだ振るのかとツッコミたくなる位今度は肉に塩をかけていたリュウシャの手が止まった。

「それはなんだ? 微かだが、魔力を感じる」

「そうなのか?」

「ああ、意識しないとわからない。フィオラは気がついていたか?」

「す、すみません、私」

 焦ってどもったフィオラにリュウシャはにっこり微笑む。

「お前が気がつかない程の技術ということだからきにしなくていい」

 そしてその笑みをリオンにも向けた。

「まったく、恐ろしい男だな。ビート、といったか?」

 そしてリオンは苦笑い。


「その話はまた。それよりこれをどうぞ。今回わたしがいるので‥‥使う機会はなさそうですけど」

 話をそらすように、リオンは3人に袋から取り出したのもを差し出した。

「‥‥これ、琥珀?」

「うん、手頃に買えるものだから宝石としては価値はないわよ。小さいし質も良くないの、必要なものだけどお金はかけられないし」

「あ、ほんとだ」

 女性の小指の先よりは大きいだろうか。3人の手には形も色合いも違うが琥珀が乗っている。そして指でつまんでじっと見つめたフィオラは驚いた。

「魔力、かすかに感じる!! しかも、この魔力って、まさか」

 そこまで言って自分の声が大きいことにビックリしたフィオラがパッと口を手で塞ぎあたりを目だけでキョロキョロ見渡す。幸い周りは酒の力もあってかとても賑やかだ。誰もフィオラの言葉に振り向いたりしていない。安堵の息をついたものの、口から手をおろした彼女は驚きそのままだ。

「これ、リュウシャ様、こんな小さな物に付加出来るなんて聞いたことないです‥‥」

「出来ないことはないよ。ただ、相当の集中力と、魔力を極限まで絞り込んでも不安定になることなくかなり器用に魔力を使えればの話だがね」

「おい、なんなんだ?その魔力は」

「身守りの結界」


 フィオラとガイアがリュウシャの発言に硬直するそば、リオンは

「ん?」

 と『それがなにか?』と顔に書いてある錯覚がみえるような笑顔。


(いやはや、とんでもないのが王都にやって来たものだ)

 リュウシャが呆れ半分、面白さ半分のため息に似た息を吐いた。

(どうりで王家親子三代揃ってこの娘とあのビートという男を受け入れたわけだ。‥‥リオンはもちろん未知数、そしてビートは敵にするにはあまりにも危険‥‥。こんなのを堂々と支援するのがあのアルファロスか)

 そんなことを考えるリュウシャの手が今度は辛い香草たっぷりの小壺に伸び、スプーンも使わず直接小壺を傾けて肉にかけた。三人が、それ食べれるのかぁ‥‥と、遠い目をした。

先日ふと、何にでも七味唐辛子をかける知人がいたのを思いだし、思い付いたキャラ設定でした。

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