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始まりの語り

はじめまして。

そしてここに来てくださったことに感謝です。

ありがとうございます。

初投稿で、いきなり連載に手を出してしまいすでに苦悩してますが(苦笑)、なんとか続けていくつもりなのでよろしくお願いします。



「私たち」の世界には多種多様な生命が存在している。

 遥か昔、その多種多様な生命の均衡を崩すことが起きたとされ、私たちはそれを本質も何も分からぬまま《(いにしえ)から続く問題》と呼ぶ。それでもなんとか知恵を絞り協力し、そして問題と向き合い解決しようという努力によってここまで歴史を紡いできた。

 

 けれど‥‥。


「ここにいたのか」

「珍しいのね?」

「なにが?」

 振り向いた先には幼い頃からよく知る、心を許すことが出来る数少ない理解者であり、そして兄弟というものに縁薄い私にとっての近親者である一人が、ゆっくりとした歩調で近づいてくる姿があった。

「いつもは‥‥もっと落ち着いているわよ。今日のあなたは意識しなくても刺々しい感情を撒き散らしてる、面白くないことでもあったのかしら」

 彼はそう言われ、顔に刻んだ険しさを緩めることもなく、何一つ変化を見せない。

「大規模遠征が決まりそうだ」

 その言葉に私はまた彼に背を向け前方に広がる整備された、美しい町並み広がる景色を見つめた。

「そう」


 この世界の問題。いつでもどんなときでもあらゆる問題はあった。ささいなもの、歴史に残るもの。けれど今この時代の《古から続く問題》は私たちの祖先が守り抜いてきた脆弱(ぜいじゃく)でささやかな平和を脅かし始めた。


「あなたも?」

「分からない」

「わからない?なぜ?」

「陛下も議会もどれだけの規模にすべきか頭を悩ませている。それで俺たち騎士団も意見を求められたまではいいが、そこでも意見が割れてしまったからな。最終的には陛下がお決めになるが‥‥。最近はとにかくよく揉めるから、陛下もいつになく慎重だ」


 領地をめぐる国家間の争い、国政を左右する内政の争い、どんな時でも歴史につきまとっていたそんな争いが今は驚くほど息を潜めているのも、《古から続く問題》が数十年前からじわりじわり‥‥とその勢いを増し人々の生活に確実に暗い影を落とし始めている。


 私の生きるこのティルバ国がある大陸には複数の国がある。その国のほぼ全てが同じ《古から続く問題》により同じ状況になりつつある。


 広大な海の向こう別大陸があると、他にも多数の島があるとされるけれど、私たちはそれらと交流する手段を持つ者は皆無に等しく、またそれらの別大陸や島々も同じ状況なのかどうか伺い知れる者もいない。

 けれど少なからず私は自分の中にある感覚と力で感じとることは出来ていて、やはり状況は(かんば)しくない。この世界は至るところで()()()()によって侵食され始めている。


 そう、今この世界そのものがまるで終焉(しゅうえん)に向かっているかのようだ。


「それで私のところへ、来たのね?」

「ああ」

「この先どうなるか、予見しろと言うのね。」

 彼は私の隣に並びテラスに肘をつき前屈み気味に体を少し傾けた。彼は返事をする代わりに頷く。

「見えないのよ。困ったことに」

「え?」

「数日前から力がとても不安定で。今日はねぇ‥‥予見は、せいぜい身近な人が明日転ぶことくらいだったら見えるんだけど」

 勢いよく彼は体を起こして目を見開いて私の肩を強く掴んで顔をぐっと近づけてきた。そんな彼を私は真っ直ぐ見つめる。

「おい、こんな時に!」

「落ち着いて。力が使えないとか無くなってしまった、というわけではないのよ。困ってはいるけれど」

「なん、だ?どういうことだ」

 困惑をにじませて眉間にシワを寄せた彼の手をそっと退け、私はまた町並みを眺める。

「何て言えばいいかしら、とても表現が難しくて‥‥。私の力を凌ぐ《何か》を持つ人物が数日前この王都に入ってきてからよ、力がうまく使えなくなったわ。押さえ込まれているような感覚があるの」

「お前の力を凌ぐ、だって?ばかな。聖女のお前がそれを言うのか」

 信じられないと言いたげな彼を横目に、私は落ち着いている。

「ええ、でも悪いものではないのよ。王都に張り巡らせている私の結界に何の抵抗もなく入っているんだもの、しかも結界を壊す気配は感じられない。間違いないわ、私を凌ぐ力だけれど悪いものではない、絶対に。でもその力が確かに私の力の妨げになってる。その原因を突き止めない限り私の力は不安定なまま。時間が立てば対策も取れるでしょうけど」

「原因か、それなら‥‥じゃあ、探しだしてその人物を連れてくればいいな?」

 私はついため息をついてしまった。

「どうやって?」

「なに?」

「ほとんど力が使えないのよ。かろうじて人というのがなんとなく分かるだけ、性別すら判別できないわ。見ようとしても完全に私の力を押し返してくるの。この感じだと、本人は無意識、いいえ力のことすら無自覚かもしれない。押し返してくるだけで仕返しをする気配が全くないんだもの。つまり、その人物が何かしら私の力を感じ取って反応を見せてくれるか、その人が魔力を使うかしない限りどうしようもないのよ。余程の魔力持ちね、全体を押し返してくる感じだか場所の特定も困難よ」

 押し黙ってしまった彼に向かってまた私はため息をついてしまった。

「ね?困るでしょ?」

 少し軽々しい言い方をした私に今度は彼がため息をついてみせた。

「なんだ、そのふざけた言い方は」

「私の話をちゃんと聞いていた?」

 不思議そうな表情をした彼に私は微笑を浮かべてみせた。

「悪いものではないのよ」

「それは、つまり」

「必ず私たちにとっての大切な、必要な力となる人物であることは間違いない。そしてそう時間をかけず私とあなたはきっとその人と出会える、それが今の私に出来る私のための最大の予言」

 

 古から続く問題。


 幾度となく人々が立ち向かっても解決には至らない反面、なんとか共存してきた過去と現在がある。そしていつも一定ではなく変動的で平和と混沌を繰り返したという事実。この時代、この世界は混沌に入ったのだろうと感じている。混沌のあとに訪れる(つか)の間の平和。私はその鍵となる人物こそが私の力を凌ぐ者だと信じている。


「お願いがあるの」

「なんでも言ってくれ」

「ありがとう。外出許可をとってほしいの、もちろんあなたが護衛として。出来れば日数は指定せずに。確率は低くてもじっとしているよりも直接私が探すのが一番だわ。会うか、魔力を使ってくれれば分かるはずよ、きっと」

 彼は少しだけ考えた様子をみせたがすぐに見慣れた穏やかな顔をして頷いてくれた。

「外出許可か、いいよ、大丈夫だろう。お前の力に影響しているなら許可は取りやすいかもしれない」

「陛下に今の事を話してくれてかまわかないわ、その方が話も通しやすいでしょうし」

「わかった、それに今議会が決定を出さない限り俺たちも動きようがない、待機するだけだろうから騎士団も動かせる許可をもらおう」

「お願いするわ」

 

 個人の単なる欲でしかない。私はたとえ脆弱であろうとも平和を望んでいる。生きる世界を選べるのなら私は平和な世界を選びたい。

 この世に誕生しその生をまっとうするまで様々な喜びや悲しみを感じていきていくならば、それらすべてを受け止めて体感できる世界がいい。それこそが人である証だと思うから。

 混沌の世界はきっとそれを許してはくれない、訳もわからずただただ必死に生にしがみつくだけの、思い出一つすら残せないままで虚無感を抱えて死にゆく人生が待っている。

《古から続く問題》に、この時代向き合うのは私たちであることは間違いない。ならば私は正面から向かい合い微力であろうとも解決する力になりたい。そしてそれらを後世に伝承していこうとも思う。たとえ私たちが解決できたとしてもまた訪れるかもしれない混沌の世界で生きる人々のために。


 そして私たちは「その人」と出会う。

 

 そこから始まるのは「その人」が歩くことで紡がれる物語り。

 

「その人」と愛すべき人たちの、笑って、苦しんで、泣いて、そして笑ってを繰り返す物語。

この時点ではなんのこっちゃ?ですので、気長にゆるーく読んで頂けるとうれしいです。

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