打倒魔王!
「はぁ…これからどうしよう…」
僕は、宿屋のベッドの上で寝転がり、これからの生活に不安を感じながら呟いた。
というのも、僕は3時間ほど前、レイさんから、5年以内に魔王を倒せたら現世に戻す、という条件を提示された。
今の僕には、そんなのはまず無理な条件だった。なぜなら、ステータスが知能、回避を除いてほぼ最低値、職業も大工、魔法もほとんどいいものがない、そんな僕に魔王が倒せるわけがない。
てゆーか、僕がレイさんに求めた「救済措置」っていうのはこんなんじゃなくて、チートアイテムとか強力な助っ人とかだったのに!
だが、僕にはこんなところでくよくよしてる暇はない。結局、あの後MPが切れたため、僕とレイさんの会話は終了し、これ以上の情報を引き出せなかった。
まず僕は、動きやすい服を買い、着替えた。転生した直後は気にならなかったが、死亡した時のままの制服姿だと、街で目立ちまくるからだ。
その次に、魔王についての情報を知るため、市街地でその辺に人に魔王について聞いてみた。
それによると、魔王はこの世界を裏から統べる闇の権化で、魔王に立ち向かった数千人にも及ぶ命知らずの勇者たちは、誰も生きて帰れなかったそうだ。
他にも、魔王の大魔法を受けた者は存在を消される、あらゆる攻撃、魔法が通用しないなど…
それを聞いた僕は、もう諦めてこの生活を受け入れてしまおうかと本気で考えた。
だが僕は、ここでめげるわけにはいかないと、自分を奮い立たせた。こんな異世界生活、一刻も早く終わらせたいからだ。
次に僕は、酒場へ行った。RPGの世界ならば、ギルドかそれに相当するものがあると思ったからだ。ギルドに入れれば魔王討伐に近づくと思いながら、僕は酒場に入った
冒険者らしき男たちの騒ぐ声、強いアルコール臭、酒を運ぶ大人の女性。
これぞRPGの世界という感じだった。
僕はそんな喧騒を潜り抜け、ギルド募集の掲示板に向かう。
そこには、様々なギルド募集のポスターが貼ってあった。
とゆーか、異世界の文字ってどんなものかと思ったら、普通に日本語だな、と僕は思った。
いや、ホントは別の文字で、僕の目には日本語に見えてるだけかもしれない。
さっきその辺を通る人に魔王の話を聞いた時も日本語が通じたし、これも天界側のサポートだろう。
言語の話はさておき、僕は掲示板に貼られたポスターに書いてある募集場所に、片っ端から向かってみた。だがーーー
「ステータスがほぼ1?そんなやつ入れるわけねーだろ!アッハッハッハッハ!」
「大工って最下級職じゃん。そんな人を入れたら俺たちのギルドの評判が下がるよ、ほら出てった出てった」
「初心者歓迎とは書いてるけどね、正直君みたいな見込みのない人は入れる余裕がないんだよ」
ことごとく断られた。
そして今、僕は宿屋にいる。
魔王の力は底知れず、ギルドへの加入も断られ、もうどうしたらいいのかわからない。
そして、ギルドの人たちが言ってたことももっともだった。こんなステータスが低いやつが欲しいなんてギルドはまずない。
これも街の人から聞いたが、職業というのは、レベル1の時の能力値で決まるものであり、変更はできないらしい。なんて残酷なシステムなんだ。
そんな感じで途方に暮れていた僕だが、ある時ハッと気付いた。
要するに、経験値を貯めればいいんだ。
経験値を貯めて、レベルを上げれば、必ずどこかで僕を入れてくれるギルドが見つかる、そして魔王討伐にグッと近づく!
「やってやるぞぉぉぉぉぉぉ!!」
僕は、宿屋の中に響き渡るほどの大声で叫んだ。
これが漫画か小説なら、僕の目には火が灯っていることだろう。
作者が掘り下げられなかった「知恵とavoで世界を救う物語」の設定を垂れ流す欄です!
はじまりの街
ミトが転生して最初に来た場所。その名前に違わず、モンスター狩りが苦手な者や冒険を始めたばかりの者が多く、この世界の中で規模も人口も最大級の街である。
ただ、街の長がめんどくさがりな性格のため、正式名称は未だ決まっておらず、呼称である「はじまりの街」が正式名称のように浸透している。