ステータスを確認しよう
「おぉ…ついに来てしまった…」
僕は、天界からこの異世界に転生した。
どうやらここは街の中のようで、目の前には建物が立ち並び、人々の賑わいがよく聞こえる。
新しい生活への楽しみと、もう後戻りできないという不安が入り混じった複雑な感情のまま、僕は自分の情報を確認する。
僕が異世界転生する前に、レイさんはこの世界でのルールや、天界側の支援について教えてくれた。
かなり長い話だったし、聞き流している部分もあったので、ここで言うのは控える。
とりあえず、天界でレイさんに言われた通りに人差し指を2回、何かを触るように振った。
そうすると、自分のレベル、経験値が書かれたウィンドウが出てきた。街もRPGで序盤に出てきそうだが、こういうところもRPGらしい。
もちろん、今来たばかりなので、レベルは1、経験値は0だ。
所持金に関しては、100000ゴルと書いてある。これも天界側の支援だ。「ゴル」とはこの世界のお金の単位らしい。
僕は、ウィンドウの中から、「ステータス」と書かれた部分をタッチする。
そこに出てきたステータスはーーーー
HP 5
MP 5
攻撃 1
魔攻 1
防御 1
魔防 1
知能 125
素早さ 1
幸運 1
回避 278
なんだこのステータス!?
バグとしか思えない!なんで知能と回避以外ほぼ1なんだ!?
例えレベル1でも、各ステータスが10程度はあるはずだ!
僕はそう突っ込まずにはいられなかった。
一旦冷静になって考えてみよう。まず、知能が125というのは恐らく、現実世界での僕の知能を数値化したものなのだろう。
だが、それ以外のステータスは全くもって不可解だ。何故ほとんどのステータスが1で、回避だけアホみたいに高いのだろう。
これ以上考えてもわからない。とりあえずこの問題は後回しだ。
次に見たのは、「ステータス」の画面にある職業の欄だ。
そこには「大工」と書いてあった。
……戦闘職ですらない。なんだよ大工って。
とりあえず、「ステータス」の画面を閉じ、「魔法」の画面を開いた。
プチフレア
プチアクア
プチサンダー
………微妙すぎるな。
字面を見ただけで弱さがわかる。
そして僕は、その下にある2つの魔法を見た。
大魔法『転移』
コール
大魔法!?これも天界の支援だろうか。僕は、すぐにそれを見てみた。
大魔法『転移』 消費MP 0
自分の半径10メートル以内の50kg以下の人や物を、同じく半径10メートル以内の好きな場所に移動させる魔法。1日に1回しか使えない。
拍子抜けしてしまった。大魔法って…こんなに微妙なのか。
そして、この「コール」と言うのが気になる。僕は、この「コール」も見てみた。
コール 消費MP 0
天界の者と会話できる魔法。会話1分ごとに、1MPが消費され、0になると自動的に終了する。1日に1回しか使えない。
天界の者と会話!?僕は、すぐに発動した。
『はーい、レイでーす♪海斗様、もしかして「コール」使ったんですか?』
レイさんの声が聞こえてきた。
「ちょっとレイさん!?なんであんなに僕のステータスが貧弱なんですか!?」
MPを極力使いたくないので、さっさと会話を終わらせようと早口で言った。
『海斗様はせっかちですねぇ…。ステータスの話ですが、ちょっと転生の際に不具合が起きてしまったのでちょっと弱くなっちゃいました♪もう転生したものは元に戻せないので、頑張ってくださいねー♪』
強引に会話を終わらせようとするレイさんを止めるように、慌てて僕は喋る。
「待ってください!え、もう戻せないんですか!?困りますよ、なんか救済措置ないんですか!?」
『うーん…じゃあ、上に掛け合ってみます。切らずに待っててくださいね』
残りMPは4、早くしないと会話が強制終了されてしまう。MP切れを恐れながら3分ほど待った後に、レイさんがまた弾むような口調で、
『上に掛け合った結果、現世に戻してあげてもいいと言われました♪その条件はーーー「魔王を倒す」ことです!』