嵐
ここは、はじまりの街を出て少し歩いたところにある草原。
今は日の出をした直後だから冒険者の数は少ないが、倒しやすいモンスターが多く出現するため、狩場として人気のスポットである。
そして僕は今、何体かモンスターを倒して、岩の上でひと休みしているところだ。
依然として僕のステータスは低いままだが、弱いモンスター程度なら倒せるようになってきた。そのため、ここ1ヶ月は経験値効率のいいこの場所でレベル上げをしているのである。
ただ、僕はひとつ気になるところがある。僕がライアに負けてから1ヶ月、僕の身の回りには何も起きていないのだ。
ライアが放った「また会うと思う」というセリフから、必ず僕に何かをしてくると思っていたがそんなこともなく、僕は平和に1ヶ月を過ごしてきた。
何か妙だ。これから何かが起こるのではないかーーー
その考えを遮ったのは、岩の下からの唸り声だった。
声のする方を見てみると、5体程の狼のようなモンスターが、僕を餌を見るような目で見て、唸っていた。
やばい、これーーー喰われる!!
僕はそう思って、岩から下り、全速力で逃げた。
だが、素早さが低い僕が逃げられるわけがなかった。すぐにモンスターたちは、僕に追いついてきてーーー
***
「うぅ…痛てて…」
僕は今、草原を出て、ギルドのアジトである豪邸に帰っている。
腕や足が痛む。あの後、僕はモンスターたちに襲われ、怪我を負ってしまった。
回避能力が働いたため、重傷は免れたが、身体のあちこちを噛まれてしまった。
帰ったらライナに治してもらおう…
そう思って僕はアジトに辿り着き、ドアを開けた。
「ただいまー。ライナ、ちょっと治してほし…」
そこまで言ったところで、この豪邸の中の異様な空気に気がついた。
僕に特別な能力などはないはずだが、この重い空気にはすぐに気付いた。
僕はモンスターに噛まれた痛みも忘れ、その空気がより強く感じられる大部屋に入った。
そこでテーブルを囲んでいたのは、リーダー、カイ、リオさん、ライナ、そしてーーーライアだった。
「お、帰ってきたね。ハロー、ミトくん♪」
周りのギルドメンバーから発せられる張りつめた空気に反して、ライアはとても明るかった。
「え、えーと…何がどうしてこんなことになってんの…?」
僕はこの静寂をかき切ってこう言った。
「うん。あのね…ってミト、怪我してるじゃない!今治すからね!」
ライナはそう言って、僕に回復魔法を発動した。傷の痛みを思い出す暇もなく、僕の傷は全て癒えた。
「お、ありがとうライナ。それでライア、何でお前はここにいるんだ?」
「うん。そりゃあもう…このギルドの存続についてだよ♪」
ギルドのーーー存続!?
やっぱり、あれだけのことがあったのに何も起きないはずがない、と僕は考え歯噛みした。
嵐はーーーもう既に吹き荒れている。




