ついに転生!?
「えーと…ここは…」
僕は今、天使と向かい合って椅子に座っている。
時は少し遡り、僕が天界に来た直後。
呆然としていた僕に、天使が笑顔で僕の死を告げた時だ。
「嘘だ…そんなはずない!僕はまだ死んでないんだ!」
僕は自分の死を受け入れられず、天使の前でも必死にこの現実を否定していた。
「いいえ、嘘ではありません。あなたは先ほど、乗用車に衝突して即死しました。なんなら見ます?自分の死体♪」
天使は、満面の笑みのまま、弾むような口調で恐ろしいことを口にしていた。
再びはっきりと自分が死んだことを告げられ、僕は言葉を失う。天使は、そんなことお構いなしと言わんばかりに続ける。
「申し遅れました。私はあなた、川島海斗様担当の天使、レイです」
レイと名乗った天使は、少し声のトーンを落として続ける。
「あなたはこれから、正式な転生の手続きをします。私と来てください」
「え、でもあの扉の前で並んでいる人たちは…」
僕は自分の目の前の光景を見て、それからレイさんを見て聞く。するとレイさんは、
「あの方達は、病気などの要因で天命を迎えて亡くなった方達です。彼らは生前の行いによって、天界でどのような待遇を受けるかが決まります」
と、分かりやすく僕に説明する。そして、
「ですが、あなたの死は天命ではありません。天界では、あなたのような方のために特別措置を用意しています。ここじゃ何ですから、別の場所に行きましょう」
レイさんはそう言うと、自分の目の前にドアを出現させた。レイさんはそのドアを開け、
「どうぞ、中に入ってください」
と、僕に促した。
僕とレイさんはその中に入った。
***
ドアの向こうにあった部屋はかなり広く、どこを見渡しても真っ白で、恐怖すら感じるほどだ。
僕の向こうに座っているレイさんは、
「では、海斗様に適用される特別措置について説明します」
と、笑みはそのままに、冷静な口調で言う。
「あなたのように、不慮の事故で死亡した方は、もちろん天命によって死亡した方と同じように天界で過ごし、いずれ来る転生の時を待つことも出来ます。」
と続け、さらに、
「ですが、あなたにはもう一つの選択肢が用意されています。ズバリ、『異世界転生』です!!」
彼女は、最初に出会った時よりひときわ高いトーンでそう言った。
ここまでレイさんの話を黙って聞いていた僕も思わず、
「え…異世界…転生…えぇ!?」
驚かずにはいられなかった。
異世界、それは多くの男たちの夢だ。
現実では冴えない自分が異世界で最強になったり、可愛い女の子に囲まれて過ごしたり…
僕はそんなラノベを数多く読み、もし自分が異世界に行けたらと妄想を膨らませていたものだ。
まさかそんな妄想が現実になる日が来るとは…僕は、自分が死んだという絶望よりも、異世界に行けるという嬉しさを感じていた。
「ちょっと!話は最後まで聞いてください!」
レイさんは、少し怒ったような口調で言った。
「あ、はい。すみません。続きをどうぞ」
僕は、テンションが上がりすぎたことを反省する。
「それでは、続けます。あなたが望むのであれば、残った命を異世界での生活に使うことが出来ます。気ままなスローライフを送ったり、モンスターを狩って最強を目指したり、自由に過ごして下さい♪こちらも、全力でサポートします♪」
「もちろんですっ!!」
僕にとって、選択肢は一つだった。