レギュラー×レギュラー
「ふぅ…明日、何しようかなぁ…」
僕は今、ギルドのアジトにある大浴場に入っている。
大浴場と言うからには、メンバーが少数のうちのギルドにこんなものが必要かと思うほど大きい。あと浴槽で泳げる。
僕が初めてのクエストで功績を挙げてから、1週間が経った。
超高難度クエストはあれ以降なかったが、暴徒の鎮圧、要人の警護、モンスターの群れの撃退など、様々なクエストをこなしていった。
そしてーーー明日は、念願の休みである。
そんな貴重な休みにやることが浮かばないまま、明日の朝を迎えた。
ライナの音響魔法によって強引に起こされ、大部屋で朝食を摂る、いつもの朝だ。
僕はとりあえず街を見て回ろうと思い、寝間着からシンプルな無地の服と半ズボンに着替えた。
ギルドローブでもいいのだが、堅苦しいし、「開拓者のギルド」ははじまりの街では有名なギルドだ。街で目立ちまくってしまう。
着替えが終わり、自分の部屋を出た時、ちょうど部屋を出ていたライナが、
「あれ?ミト、どこか行くの?」
と、僕に話しかけてきた。
「うん。ちょっと街をブラブラしに行ってくる」
「えー?ちょっと待って、私も行くよ」
え?私も行く?それって…女の子と二人きり!?
「ちょっと着替えるから、外で待ってて!」
まだ混乱したまま、僕はアジトのドアの前で待つ。
てか、結構長いな。もう15分くらい経つぞ。
それでも待ち続け、やっとライナがアジトを出てきた。
ライナは、白いワンピースに帽子というシンプルな服だったが、なんというか…すごく可愛い。
「さ、行こ!」
僕はライナに連れられ、街へ向かう。
元々僕が行こうとしていたのに、彼女はあたかも自分が僕を誘ったかのように僕を様々な服屋、アクセサリー店に連れていった。
この街歩きで、どこの世界でも、女の子はショッピングに時間がかかるということを僕は思い知った。僕は、彼女の積極性に軽く辟易しつつ、
「これどうかな?可愛い?」
「うん、可愛いよ」
「これとこれ、どっちがいい?」
「君がいいと思った方」
という会話を何度も繰り返した。
結局彼女は大量に服を買い、この手の話の常として、荷物は僕が持たされた。彼女は、とても満足しているようだった。
僕は、今度は僕の番だと言わんばかりに、ライナを武具店へ連れて行った。なんとなく、彼女も行きたそうだったからだ。
今の小刀が少し刃こぼれしたため、新しいものを買いたいと思い、僕はいい小刀を探していた。懐が暖かいから、多少高いものも余裕で買えるし。
そんな中、ライナも盛んに武器を2回触り、性能を確認していた。特に靴。
「あれ?ライナは後衛だからあまり動くことはないんじゃないの?」
「うん。ちょっとカイにプレゼントしたくて。ほら、私あの子にちょっかいばっかり出してるでしょ。お詫びしたくて」
あれ?おかしいな。カイはいつもライナにいじられる時は紅潮していた。つまりカイはライナに脈アリってことになる。
ライナはそんなカイの気持ちをわかってて、あえて彼をいじっていると思っていたのだが…
もしかしてこの子、その性格に反して鈍感!?
結局ライナは、素早さが1.3倍になるかなり高価な靴をカイに買った。僕が奢ろうとしたが、彼女が「いい。自分で買う」と言ったので、やめておいた。
そのあとは、適当な露店で食べ歩きをした。
見たことない肉を使った串焼きや、見た目も味もベビーカステラによく似た焼き菓子などを買い、ライナと一緒に近くのベンチに座って食べた。
「いやぁ〜楽しかったねぇ〜。ミト、今日はありがと」
「いやいや。僕も結構楽しかったよ」
ショッピングに、食べ歩き。
これは僕がラノベで読んだ「理想の異世界生活」と言うよりは「現世で1回はやりたかったこと」だが、まあいい。楽しければいいのだ。
「日もかなり落ちてきたし、そろそろ帰ろうか」
「うん!」
僕がライナと帰ろうとしたのを遮ったのは、
「ねぇ、そこの君。君って…『転生者』?」
という言葉だった。