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不確定すぎる作戦

「大魔法『転移』!!」


僕は魔力を帯びた2本のくさびを投げると同時に叫ぶ。


すると、2本のくさびがそれぞれ、2体のボスを囲むバリアの中に入る。


ライナが込めた魔力は相当なもので、僕が投げた勢いがそのまま残っているくさびは、それぞれのボスの体を容易に貫く。


それでもくさびはそのまま直進し、ボスの後ろ側のバリアに反射し、再びボスを貫く。


それ以降もくさびは、バリアに反射し、ボスの体を貫き続けた。


やがて2体のボスは息絶え、大量の金と装備を残し、バリアごと消滅する。


そして金は、僕らの貢献度に応じて分配され、実体がなくなる。


勝った。僕は初めてのクエストで成功を収めることができたのだ。


そこへギルドメンバーが僕に走り寄る。そしてカイが、


「おい、これはどういうことだ?まさかお前、俺たちに無駄なことをさせたのか?」


と聞く。


僕は地面に落ちているくさびを拾い上げ、この作戦、というか僕の思いつきの全容を説明する。


「このくさびに魔力を込めて、僕の大魔法『転移』でバリアの中に入れた。それだけだ」


それ自体は、至って単純なのだが…


「その際に、不確定な要素が2つあった。一つは、あのバリアは内側から外側に出る魔法にも有効なのかどうかだ」


これが有効でないと、バリアを逆手に取って何度も反射させるという作戦自体が成り立たない。


これに関しては先ほど、僕が放った魔法から生じた火の粉がバリアの内側で反射するのを見たから、これは問題ないのだが…


「もう一つは、あのバリアがそれぞれのボスの意思の力で保たれたものかどうかだ」


前に僕がウォードンと勝負した時、僕を拘束した水は彼が落とし穴に落ちると同時に消滅した。


これはつまり、あの水は彼の意思の力で保っていたものであり、消滅したのはウォードンの集中が途切れたためであるからだろう。


それと同じように、2体のボスのバリアも意思の力で保たれたものかと僕は最後まで考えていた。


これに関しては、確認のしようがなかったため、成功するまで僕は気が気でなかったのだ。


僕の作戦を聞いたカイは、


「そんな穴だらけの作戦で俺たちを動かしたのか…?ふざけんな!」


と怒鳴った。まあ当然と言えば当然だろう。


それをリーダーが、待て、と止める。


「ミト、カイの言うことはもっともだ。お前の作戦は、穴が多すぎる。1つでも綻びがあれば破綻してしまっていた。」


その言葉に、僕は何も言えなかった。するとリーダーは、だが、と続け、


「お前のその場にある物で作戦を考え出す柔軟性、それを実行に移す度胸は、指揮官にとってなくてはならない才能だ。現に、こうして私たちは、誰も欠けることなく勝利を収めている。」


と僕を褒め、


「及第点だ。ミト、今後も能力を磨き、私たちに知恵を授けてくれ。」


と言った。


***


「それは良かったですね〜♪あと4年10ヶ月、もっと頑張って魔王倒してくださいね〜♪」


僕は自分の部屋で、3日ぶりに『コール』を発動し、レイさんにこれまでの出来事を話す。彼女が僕を監視しているのは知っているのだが、この興奮した気持ちを、誰かにぶちまけたかったのだ。


「そう言えば、ボスからなんかドロップしてましたよね?あれってなんですか?」


「『炎獣人の鎧』っていうアイテムです。結構耐久値は高いんですが、リーダーが『このギルドのローブに劣るな。市場に売りに出そう』と言ってました」


「ふーん。楽しそうですね、海斗様♪」


「ていうか、こっちも聞きたいことがあります。この世界にはーーー僕以外に、転生した人はいるんですか?」


レイさんは、少し黙ってから、


「どうでしょうかね〜♪ご自分で確認して下さ〜い♪」


と言った。


話にならない。僕は「ちょ、ちょっと待ってくださーい!」というレイさんの声を振り切り、『コール』を解除した。


それから数分後、ふと気づく。レイさんは、僕の質問に対して、否定はしていなかった。


だから、もしかしたら僕以外にも転生した人がいるかもしれないんだ。いや、いないとおかしい。


それなら、あの人もいるんじゃないか?


そこまで考えて、僕は強烈な眠気に襲われ、眠りにつく。


この調子なら、敵が強力な魔王であっても倒せるかもしれない。


僕は眠りにつく直前にそう思った。







本文に書ききれなかったこの小説の世界を紹介します!

炎獣人の鎧

強靭な硬さと、炎魔法への耐性を兼ね備えた上級装備。だが、ライナ特製のギルドローブに劣るため、市場に350000ゴルで売り出された。

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