まさかの無策!?
「えーと…無いよ、作戦」
「はァ!?」
僕たちは今、ダンジョンの最深部、ボス部屋にいる。
そこで僕の仲間が、チート級のボスと戦っているのだが…僕は、そのボスを倒す方法を決めていないのである。
「じゃ、じゃあ、今あのモンスターと必死に戦ってるリーダー、カイ、リオさんはどうなるの!?あの人たちは意味無いことしてるの!?」
隣で戦いを見ているライナがそう叫ぶ。
「いや、意味のないことじゃない。1つだけ思いついてることはあるけど、まだそれを実行に移せるだけの情報がない。だから今は『作戦がある』と言えないんだ」
この言葉でライナは我に返る。
そう。そのためにはまず、確認したいことがある。
そのために、まずは1回彼らにボスを倒してもらわないといけない。
その時、ちょうど赤い方のボスのバリアが壊れた。
そしてリーダー、カイ、リオさんは目にも留まらぬ速さで赤い方を斬り、倒した。
その瞬間、青い方のバリアがなくなり、守るものが何もない状態になる。
リーダー、カイ、リオさんの3人が青い方に剣を振ろうとし、ライナも拘束魔法を発動し、魔力の縄を青い方に向けて飛ばす。そして僕も、お助けとばかりに『プチフレア』を発動する。
しかしそれはどれも間に合わず、青い方の手の一振りで赤い方が復活し、また両方のボスにバリアが展開される。
3人の剣と、ライナの出した魔力の縄、僕の出した小さな火の玉は全て弾かれる。
「くっそー!!間に合わなかった!またやり直し…ミト?」
普通なら、見逃してしまうかもしれない。だが僕は、その瞬間を見逃さなかった。
僕の『プチフレア』から出た火の粉が、青い方のバリアの中で反射し、消えるその瞬間を。
これなら…上手くいくかもしれない。この異形のモンスターを…倒せるかもしれない!
「リーダー、カイ、リオさん!今は戦って、あいつらの気を引きつけて!」
僕はそう叫び、ボス部屋の壁に向かう。
石でできた壁から、『掘削魔法』を発動し、30cmほどのくさびを2つ作る。
そしてライナの所へ行き、
「これに魔力を込めて!うんと強い魔力!」
「魔力って…そんなことして何になるの!?」
「いいからやって!時間がない!」
僕がそう言うと、ライナは自分の手に魔力を集め、それを2本のくさびに送り込む。
魔力で紫に染まったくさびを持ち、僕はボスのもとへ走る。僕は前にいる3人に向かって叫ぶ。
「リーダー、カイ、リオさん!下がって!」
3人はそれを聞くと、大きく飛び退いた。
2体のボスは走ってくる僕に対し、炎と水を吐く。
それが合わさって水蒸気となり、僕の視界は真っ白になる。
それでも僕は走るのをやめなかった。
そして、真っ白な視界から突如として2つの大きな拳が出てくる。僕はそれを自分でも驚くほど大きく飛んでかわす。
そして空中で、くさびを持った両手を振り上げる。
成功するかは分からない。元はここで考え出したことだ。
だが、僕を信じてくれたリーダーとリオさん、半信半疑で僕の言うことを聞いてくれたライナとカイ。
彼らのために、僕は絶対にこれを成功させたい。そして僕は、
「大魔法『転移』!!」
2本のくさびを投げるのとほぼ同時に叫んだ。