はじめてのクエスト
「みんな、ついにこのダンジョンの長との戦いだ。心してかかれ」
僕のギルドのリーダー、オリバーがそう言って僕らを鼓舞する。
僕らは今、ダンジョンの最深部、ボス部屋の門の前に立っている。
時は遡り、3日前の朝食時。
リーダーはテーブルに地図を広げ、僕らが挑むクエストについて説明する。
「私たちが行く予定のダンジョンは最近存在が確認された。はじまりの街近くの山の地下だ」
リーダーは地図の山を指差す。ていうか、ここって…
それを答えてくれたのは、リーダーだった。
「ミト、君がイノシシ狩りをし、ウォードンと無謀な戦いを挑み勝ったところだな。それでは続けよう」
次にリーダーは、ダンジョンのボスについての説明をした。
「私の傘下のギルドに偵察・交戦させた結果、このダンジョンの長は2体。それぞれ火と水の魔法を使うモンスターだ。それだけならまだいいのだが…」
リーダーは、少し険しい表情で続ける。
「そいつらは、自分たち以外の魔法を反射し、物理攻撃でもなかなか壊れない魔法壁をお互いの周りに作るのだ。そしてやっと魔法壁を破壊し片方を倒しても、もう片方が瞬時に復活させ、また魔法壁を出現させる」
流石にチートすぎる。こんなの僕たちだけで倒せるのか…?
「このダンジョンの存在が明るみに出れば、特権階級を始めとしたはじまりの街の民が混乱する。よってこのクエストは通常のギルドに依頼できないのだ。決行は3日後。ミト、君に任せるぞ」
***
そして今に至る。
僕にとって初めてのクエストのここまでの道のりは、本当に僕が必要かと思うほどすんなり終わった。
無駄に長いダンジョンの中にいた無駄に多いモンスターを、ギルドのメンバーたちは草刈りの要領で倒していた。
ただ見ているだけのライナと僕にも多少経験値は入っているようだが、それは後で見るとしよう。
「さあ、入るぞ」
リーダーがそう言ってボス部屋の門を開け、入った。
その後、リオさん、カイ、ライナの順でボス部屋に入る。
数々の戦いを繰り広げてきたのだろうが、彼らは驚くほど冷静だった。
それに少し恐れを抱きながら、僕もボス部屋に入る。
明かりがないと進めないほど暗かった門までとは打って変わって、ボス部屋はやけに明るかった。
だから僕らには、2体のボスの姿がはっきり見えた。
大きさは僕の10倍以上で、胴体は人のような形だが、顔は肉食動物のそれだった。そしてその異形のモンスターが、赤と青の2種類いる。
そのモンスターたちは、僕らの姿を見ると、この部屋に響き渡る雄叫びを上げた。それには流石に僕も身震いする。
「ミト、私たちはどうすればいい?」
ライナが問いかける。
「とりあえずライナは全体に強化魔法!カイ、リオさん、リーダーは片方に集中攻撃!」
「おい、新入り!リーダーの話聞いてたのか!?片方を倒してもすぐ蘇生するんだぞ!?」
カイが怒鳴る。そこにリーダーとリオさんが、
「今回のクエストでは、指揮権を彼に託している。黙って従え」
「そうだよ〜。ミトくん、すごい作戦を思いついてるんじゃないかな〜」
となだめ、3人は赤い方のモンスターに向かう。
ライナはそんな3人に強化魔法を発動した。
そして僕とライナは、3人の戦いを見ることしかできない。
実際、3人の戦い方は見事なものだった。
確かにボスの力は凄まじい。2体の息の合った攻撃は、僕が一撃でも食らったら一発アウトだ。
それに対して、寸分の狂いもない動きで戦うリーダー、攻撃、回避を猛スピードで行うカイ、幻惑魔法で自分たちの幻を出現させ、注意を逸らして戦うリオさん。
この3人も化け物だな。僕は、改めて自分がすごいギルドに入ったということに気付かされた。そんなことを考えていると、横で一緒に見ているライナが、
「あれじゃただ戦ってるように見えるんだけど…作戦あるんでしょ?」
と聞いた。
「えーと…その…」
「え?あるんでしょ、作戦」
「うぅ…ないんだよ、作戦」
そう。僕はまだ作戦が決まってないのである。
本文に書けなかったこの小説の世界を紹介します!
パーティ
2〜8人で組むことができる集団。メンバーの状態はタブを開けばいつでも確認でき、モンスターを倒した時の経験値とお金は、戦いでの貢献度に応じて、最低10%の割合で分配される。