新地の開拓
「う…うぅ…あれ?」
僕は、自分の部屋のベッドで目を覚ます。それはいいのだが…
実は僕、ここに至るまでの記憶がほぼないのである。
何とか思い出せるのが、僕がギルドのメンバーと祝杯を挙げた時だ。
それもこの料理が美味しそうだとか、この食材は見たことないとかの、料理を食べる前の客観的な感想だけで、いざ食べる時の記憶となると、思い出せないのである。
てゆーか、めちゃめちゃ頭痛い。生まれて初めての酒を飲みすぎてしまったのだろうか。
18歳の僕が酒を飲んでいいのかはよく分からないが、異世界って15歳くらいから酒飲んでいいイメージあるし、まあいいだろう。
そんな僕の思考を遮ったのは、ギィィィィィィィィィィィン!!という大きな音だった。その直後に僕のドアを開けたのは、このギルドの紅一点であるライナだった。
「こらっ、ミト!起きなさーーい!!」
***
そして僕は今、昨日祝杯を挙げた大広間で、ギルドメンバーと共に朝食を摂っているところだ。
「ねえライナ、さっきの不快な音ってライナの魔法?」
僕が聞くと、
「そうだよ。私味方をサポートする魔法が得意だからね、相手を不快にさせる音響魔法も一応使えるよ」
あれを使うと、自分たちも音で戦いどころじゃなくなりそうだな。そしてライナは続ける。
「まあこんなの実戦じゃ使えないけどね。でもうちにはこれを使わないと起きない人がいるから…って、リオさん!また食事中に寝て!!」
ライナが叫んだ方を見ると、僕より年上らしいリオさんが、パンを咥えながら寝ていたようだが、ライナの怒鳴る声で「はっ!」と目覚めたようだ。
なるほど、確かにこの魔法は必要だな。この人、誰かが起こさないといつまでも寝てそうだもん。
そんな中、僕はさらに疑問が生まれて、ライナに質問する。
「てゆーか、昨日の豪華な食事といいこの朝食といい、誰が作ってるの?」
「私だよ。昔からこーゆーの得意なんだよね。昨日の食事と言ったら、ミト、あれから大丈夫だったの?」
ん?あれから?
「ごめん、僕食事の時の記憶がないんだよね。何があったの?」
「え!?まああんなに飲んでたし仕方ないか…君、みんなが引くくらい料理を食べてお酒を飲んで、テーブルの上で変な踊りしたりして…ここで寝ちゃってたから私がベッドまで運んだんだよ?」
あ、ベッドまで運んでくれたんだ。ありがとうございます。ていうか僕、初めての酒でここまでやったのか…
そんな話をしていたら、ここまで黙々と食事を摂っていたカイが口を開いた。
「チッ、ライナ…お前、こいつが入った途端うるさくなりやがって…もうちょっと普通に食えないのかよ」
その言い方にライナは笑顔を崩さずに、
「分かった!カイは私に構って欲しいんだね?ならそう言えばいいのに〜♪」
と返す。
「ち、ちがっ…そんなんじゃ…」
とカイは、顔を赤くしてそう言った。これはまさか…
そう考えていると、僕らより早く朝食を食べ終わったリーダーが話し始めた。
「食べながら聞いてくれ。私たちが次受けるクエストが決まった。そしてミト、このクエストで君のお手並みを拝見させて貰うぞ」
本文で書ききれなかったこの小説の世界を紹介します!
職業
人間一人一人に定められたものであり、基本ステータスや習得する魔法に影響する。基本的に変更出来ない。
どの職業になるかはランダムだが、血縁者の職業になる可能性がやや高くなるようだ。
ちなみにミトは最下級職の「大工」、ライナは「補助者」、カイは「疾走者」、リオは「幻術師」、オリバーは最上級職の「統率者」である。