夢のギルド!!
ここは僕の部屋。人1人のための部屋にしてはなかなか広く、大きなクローゼットもある。僕はその部屋にあるベッドに寝転んでいる。
だが、ここは宿屋ではない。はじまりの街の一等地に建つ、豪邸の一部屋である。
時は遡り、僕がウォードンを倒した翌日。
僕は役場の窓口から、賞金であるウォードンの300万を手に入れた。金に対する執念が強そうなウォードンから1日で300万を奪える辺り、役場の人間は強いんだなと心から思った。
僕はとりあえず5万ほどを使って、短剣や回復アイテムを買った。
だが、そのあと僕に、300万を手に入れたことを超える衝撃が襲った。
誰が広めたのかは知らないが、僕は悪党を倒したヒーロー扱いされていたのだ。その日の新聞では、僕がウォードンを倒した記事が一面に掲載されていた。
そして街を歩いていた僕のもとには、様々なギルドの人たちが、僕に自分のギルドに入らないかと誘ってきた。その中には、僕の低ステータスを理由に僕のギルドへの加入を断った連中もいた。
ギルドに入ることができれば魔王討伐に近づくのは理解しているのだが、今まで僕をゴミ扱いした奴らが手のひらを返してギルドに誘っているのに怒りがこみ上げ、僕はそれらのギルドへの誘いを全て断った。
「まだどこのギルドにも入っていなくてよかった。少年、私のギルドに入ってもらえないか?」
声がした方を振り返ると、僕はものすごい圧力を感じた。
僕より頭1つと半分くらい背が高く、濃い青のロングコートを纏ったその男が、凄まじいオーラを放っていたのだ。
そしてそれに気圧されていたのは、僕だけではなく周りの人間もそうだった。それに加え、民間人は「開拓者だ…」「あの男の子、あそこに入るの?」などと呟いていた。
僕がそのオーラに気圧され、何も言わないでいると、男はこう言った。
「私のギルドに名前はない。だが、民は我らをこう呼ぶーーー『開拓者のギルド』と」
***
そして僕はその場でそのギルドに入り、今に至る。そう、僕が今いる豪邸は、『開拓者のギルド』のアジトなのだ。
あの男は、「君の歓迎会の準備をするから、そこで待機してくれ」と僕をこの部屋に案内し、どこかに行ってしまった。
ベッドに寝転ぶ僕は、昨日までイノシシ狩りのために山小屋で寝ていたのが嘘のようだ、と思いながらこの1ヶ月のことを思い出す。
そして僕は、この1ヶ月で一度もレイさんに連絡をしていなかったことを思い出し、「コール」を発動した。
『海斗様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!何で私に全然連絡くれないんですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
うるさっ。鼓膜破れるかと思った。
「仕方ないじゃないですか。こっちだって事情があったんだし」
そして僕は、この1ヶ月のことをかいつまんで話した。するとレイさんは、
『長々と話してもらって申し訳ないんですが、私全部知ってますよ?だって見てましたし♪』
は?見てた?そのくせに僕に話させたのかこの天使。そう思うと腹が立ってきた。
さっきまでのうるささはすっかり収まり、いつものように弾む口調になっていた。だから僕は余計に腹が立った。そして僕は一つ疑問が浮かび、レイさんに聞く。
「てゆーかレイさん、この世界で死んだらどうなるんですか?ドラ○エみたいに教会とかあるんですかね?」
『普通に死にますよ。まあ復活アイテムがあれば別ですけどね。だから海斗様がウォードン?とかいう悪党と勝負してた時は私、本当にヒヤヒヤしました。まあ、天界が授けた大魔法で勝利して良かったですけど♪』
復活アイテム?僕がそれを聞こうとした時に、僕の部屋に足音が迫ってきたので、
「じゃあそれはまた今度で。ちょっと用があるので今日はこれで」
と言って一方的に切った。
その直後、僕をギルドに誘ったあの男が来て、
「さあ、準備ができた。私と共に来てくれ」
と言った。