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重い心

     Φ重い心Φ


 

 僕の心臓には、一本の矢が刺さっている。その矢は時に立っていられなくなるぐらいに重くなったり、グルグルと回りだしては僕の心をかき乱していたり、その矢を中心に僕が回っていたり、急に溶けだしては身体の中を潜っていったり。


 いつから刺さっているのか僕には分からない。痛みもないし、邪魔にもならない。もしかしたら、生まれる前から矢は刺さっていたのかも知れないし、手や足や頭と同じように矢も生えて来たのかも知れない。

 時々それが僕よりも大きくなる事はあるけれど、それでもその矢は僕の体の一部だった。


 多くの人が、その矢について色々と言ってきた。僕には理解できない事ばかり言ってきた。

 多くの人が、すぐ抜いてしまえと言ってきた。

 多くの人が、すぐ捨ててしまえと言ってきた。

 多くの人が、なぐさめるかのよう言ってきた。

 誰もが僕を責めずにこの矢が悪いと言ってきた。


 そして多くの人が、変な目付きで覗いてきた。

 そして多くの人が、矢が飛んで来ないかと怖がった。

 そして多くの人が、見えない場所に隠れていった。

 誰もがこの矢は危険なんだと言った。でも僕には理解できない。この矢は僕の体の一部なんだから。


 ふと恐怖がひろがる事もある。訳も分からず暗闇から逃れたくなる時もある。矢が大きく成りすぎて計り知れない不安にさいなまれる時もある。それでもこの矢は僕の体の一部なんだ。


 誰も触ろうとしない。誰も気づこうとしない。いつも僕の理解できない言葉を投げつけてくるだけで、みんな逃げていく。追いかけても矢の悪口を言うだけで、自分達にも刺さっている矢の事は誰も何も語ってくれない。


 まるで僕だけに在るかの様に、言葉を投げつけてくるだけで、誰も彼も自分達に刺さっている矢の事は教えてくれない。



 僕の心臓には一本の矢が刺さっている。それは僕の体の一部。

 皆の心臓にも一本の矢が刺さっている。それで僕の体を刺してくる。いつの時でもいつの日も、僕の体を刺してくる。その度に僕の矢は大きくなっていく。グルグル回り、そして大きくなっていく。

 僕を包み、矢だけが大きくなっていく。



 いつの日か、僕が矢の一部になった時、それでもこの矢は僕の体の一部なんだろうか。僕には分からない。




たまに心が重くなる

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