か98……スキルで3分クッキング?
僕は日影が出来そうな窪みや北側に歩いていく。
そして目的の草は意外と簡単に見つかった。
まるでアルプホルンのような形のピンク色の花が出迎えてくれたからだ。
下の方から順に咲いて順に実がなるようで、目的の白い実も採れた。
背丈が意外とあったのも良かった。
ナイフで身を割いてみて種が赤いのも確認。
見つけるのが試験の一環だけど皆で食べる分に使うなら多めに採って行った方が良いかな?
気になった葉っぱ部分をちぎって判別棒に近づけてみると、くっついた。
おお!食べられるとくっつくのか!(自分でも初めてでよくわかってない)
もっと探そうと歩いているうち、覚えのある野草がいくつか見つかる。
一応判別の為にさっき作った判別棒を近付けて見るとくっついた。大丈夫だね。
根元で刈り取った野草は水で湿らせた端切れに巻いて袋に詰めていく。
参加者の皆も慣れない作業で疲れるだろうし、野草はいくらあっても悪いものじゃないはずだしね。
白い実と野草を集める。
探すの結構楽しい。
もういいかなと戻ろうと足を向けるとオピが立ち上がって鼻をヒクヒクさせていた。
「どうかした?」
「キュ~」
何故か短い前足で方角を示しているみたいだ。
首を傾げて見せると、急かすように顎に頭突きされた。
痛いよ。行けばいいんでしょ。
そこにあったのは川でした。
林の中なのに結構な幅があって渡れない。
あ、そう言えば水筒が空だったよね。
ここのは飲めるかな?
一応コップに汲んで判別棒を刺してみる……特に反応は無いみたいだけど避けなかったから大丈夫かな?
汲み直して飲んでみる。うん、おいしい。
オピを下ろしてやると川に寄って行った。のどが渇いていたのかな?
僕も水筒に水を汲む。
オピが真剣に見つめる水面を覗くと魚が光っていた。
釣ってみる?
僕は影室があるからこの間作った釣り竿も保管してる。
周りには誰もいないし出しても違和感はないよね。
「よし、釣ってみよう」
――――――――――---‐785字・花桐草=ブラーフン・タン・ブラーフ=ブラトーブ。
現存のブラトーブは観賞用で実もなりません。
もちろん使うのは教官が作った疑似餌。
川の深さが分からないので浮きは無しで、まずは深さを測るつもりで投げてみる。
沈んでくな~と見ていたら、ぐいと横に引っ張られた。
「え?」
僕は慌てて余計な糸が伸びて行かない様に糸の束を押さえて引きに耐えてみる。
右に左に糸が動く。ただ投げただけなのに本当に掛かったみたいだ。
僕の足元でオピがオロオロしている。踏んじゃいそうだよ。
この釣り竿はリールを巻くという機能がないから先に深さに合わせて糸の長さを調整して釣るはずが、このままではひたすら魚が疲れるまで引っ張っていないといけないのか?
どうしよう!
どうにか魚を暴れない様に止めないと!
この体勢で出来るのはスキルを使う事か?
確か月の中は【停止】だった。
動きを追いかけるのは難しいか……じゃあ糸の先で発動するように釣り竿を伝って魚までスキルを送っていく。
釣り竿を支えながらの発動なので操作は難しいはずだけど、今回は辿っていくだけだから何とかなりそうだ。
……もうちょっと……届いた!
「キュイ!」(お疲れ!)
引きが無くなって糸がたわんだので、思わず溜息がこぼれちゃったよ。
僕は竿を置いて糸を手繰り寄せていくと、フェイツベイを飲んだ魚がぶら下がっていた。
川魚で二十センチはきっと大物だね。
もう疲れた。
さっさと釣り具をしまって魚は(生臭いので)その辺から採ったつる草でぶら下げると先生のいるとこに戻って行った。
戻ってまずは狩りで捕らえた獲物の血抜き。
ウサギとか鳥とか狩って来た人がいたみたい。
低難易度の水の【吸着】と風の【拡散】と月の【反射】が使用可能だけど、まず使えない場合の方法を見せられた。その時に先生が使ったスキルは木の【促進】で、これは時間の早送りなので無くても可能だと言ってた。
まるでTVの料理番組のようだね。
獲物を斜めに立てかけた板の上に固定して、血は自然と流れ出して板の下の器に貯まる。
出来る事なら血は造血剤の血清研究に使われるとかで、集めて売ると良いそうです。
出来ない場合は地面に穴を掘った中で血抜きして穴を埋めないといけないとか。
――――――――――---‐866字・思いがけなく引っ張られると驚きます。




