は93……釣りなのに森の中
なかなか話が進まないのはキャラクターがしゃべりたいことを全部しゃべらせようとしている為です。
読みづらかったらスミマセン。
もう一つのバイトの糸紡ぎ。
これは三個の糸玉から糸を引き出し縄を綯っていく作業。
途中で糸が途切れたら引き出して繋げて再び綯う。
これ凄い丈夫!
釣り糸に使えたら最高じゃないかな?
アドバイザーのオススメは適切だったみたいです。
そうしてGETした無料券で釣り講習に参加しました。
「今日ここに集まってくれた皆にまず言っておく。釣り道具を一般人が持ち歩くことはあまりない。
食料として魚を捕る漁師は基本釣りではなく網を使う。
網がない場合は銛を使う。
だから釣りは紳士のスポーツで道楽だと言われる」
まあ、そうかもね。
魚がかかるのは必ずじゃないし、槍とかの武器ならともかく釣り竿を常備してるって何か弱そう。
「そういう訳で、この講習はその場で釣り具を作り出し、釣るべき得物に合わせたエサとスキルの使い方を教える」
おお!
小さなざわめきが起こる。
「早速材料を探しに森へ行くぞ。付いてこい!」
突然走り出した教官に教わる方の僕達は一呼吸遅れてしまったが、慌てて付いて行く。
僕は森のはずれで荒い息をついていた。
街が見える位置とは言え、ここまで走らせるって何か意味があるの?
「まず竿だ。竿に使う木は生木が良い。引きの際にしなるので枯れ木では耐えきれない場合があるからな」
……しなって折れるって、どれだけ大物を釣るのを想定してるんだか。
良いけど。
森の樹木に囲まれ、竿になりそうな枝ぶりを見上げてみる。
……イフェリオちゃんと森に行ったのを思い出した。
とは言え僕には精霊樹の見分けは付かない。
でも嫌われて森で彷徨うのは勘弁してもらいたい。
周りの参加者は僕みたいに深刻な顔はしていない。
知らないのかな?
でも怖い僕はそれでも、試してみた。
「こちらの森の精霊樹様に枝をいただける木を紹介いただきたいのですが、お願いできませんか?」
周りにある中でひときわ太い木に手を当てて見上げると、呟いてみる。
――――――――――---‐780字・サバイバルは釣り竿から作る!
……
沈黙が恥ずかしい。
木に向かって話しかける痛い奴だ!!
やめよう。
普通に良いサイズを探せばいいんだよ。そうだよ。
溜息をついて木から手を離し動き出そうとしたら、ぼとっと胸の辺りに何か落ちてきてくっついた。
瞬間的に鳥のフンかと思って胸の上を見て驚いた。
そこにいたのは十個ほどの棘の先が赤くて、体が白みがかった緑色で半透明の物体だった。
形的にはオナモミって引っ付き虫に似ている。
赤い棘。
つまりそれは毒を持っている証拠だ。
生き物を触る時の基本だね。
でも半透明でアバの異種みたいにも見える。
しかし大きさがコブシ大。
アバよりは小さいけどこれ何? オナモミにしては大きいよ、これ!
でもって毒あるよね?
どうしたらいいの?
手で触るのは不味いよね。
考えてるうちに、それはもきもきと上に向かって這いだし始めた。
わーーっちょっと待って!! 虫だーー!!
恥ずかしい叫び声は何とか心の中だけに留めて、その辺に落ちていた小枝をそれの進行方向の前にかざす。
毛虫とかはこの方法で移ってくれるはずだ。
セロファンだってそうなんだから。
もきもき
もきもき?
何とか枝に移すのに成功。
虫は上に行く習性があるから枝を縦にすると先っぽでグルグルしていた。
その辺に放してあげようかと思ったら、虫は棒の先で立ち上がった。
つかむものを探してる仕草だね。
きょろきょろしていたがある方向を向いてビシッと固まった。
その体勢かなり辛そうなんだけど?
何となく、本当に何となく虫の捻じれた体勢が直るように僕が向きを変えてみる。
虫は本当に決まった方向を向いているみたいで、まっすぐになった。
その方向に目をやると、木々の間その先に……風もないのに枝を揺らす木が一本。
「うわっ!」
僕が思わず小さくつぶやくと、枝の先の虫がこちらを仰向けに振り向いて前足をもきもきと動かして見せた。
え!?
――――――――――---‐763字・もきもきと棒を這う姿は可愛いよ?




