底92……モベリージャム美味
僕はこれが掲示されててもきっと引き受けないと思う。
名前で何だかわからないのがいただけない。
僕の英語力はこんなもんです。
「セロファンは糸玉を作る虫の名前です。虫がお嫌いでしたら別の物をお勧めしますが?」
虫を糸玉を取る為に育ててるのか……あ、蚕の事だね。
あの動かないと白樺の小枝みたいな芋虫だ。(人によっては鳥のフ○に見えるらしい)
顔を見ると新幹線みたいに見えるのが特徴だよ。(でもあれは目じゃなくて模様なんだよ!)
毛虫は(毒とか見分けつかないから)苦手だけど、芋虫なら平気だ。
「虫は平気です。未経験者でも大丈夫なんですよね?」
「はい求人一枚で一日分になります。長期にしてしまうと、やはり見てから嫌だと言われやすいようです」
まあ感じ方によるよね。
テントウムシやダンゴムシが集まってるの見ても気持ち悪い人はいる。
「いつ入ってもいいんでしょうか?」
「役所の方から受給者がいる旨を伝えまして、双方で日程の調整をしていただきます。
まずは話し合いの時間を取りたいので、ご希望の時間はありますか?
その時間でいつなら会えるか会社の方で調整されます」
まんまハローワークだね。
「あ~僕の方で決められた日に休みを入れるので、午前なら10時頃、午後なら2時くらいでお願いします」
「かしこまりました。お伝えしておきます。連絡は宿に届くようにしておきますね」
「お願いします」
★☆
そうして面接に行ってみると、やっぱり蚕飼育でした。
「求人には手伝いと曖昧に書いてしまったんだが、こまごまとした雑用がいろいろあってね。
その時々に臨機応変に動いてくれるような人が良いんだ。
現在兼任している仕事があっても構わない。どうだろうか?」
「困ってらっしゃるのはわかりましたが、大まかにでもどんな雑用があるか聞いてもいいでしょうか?」
――――――――――---‐742字・現在のセロハンが蚕の名前から来ているのかは不明です。
「そうだね。一番忙しいのがエサのモベリーの葉を集める事だね。休憩以外は立ちっぱなしだし。
その次が葉の入れ替え作業。こっちは嫌がる人が多いかな?」
ああ~体力と精神力が両方削られるんですね。
人が来ないの納得です。
「他には糸を紡ぐ仕事もある。こっちはコツをつかんだ手先が器用な人が多いな」
「僕的にはどこでも大丈夫とは思いますが、今回は講習受けたくて仕事受ける形なのでそれぞれ一回ずつやってみたいと思います。良いでしょうか?」
「ああ、少しでも他の奴に休みを取らせてやりたいから、希望の日を前もって教えてくれるかい?」
「わかりました」
そうして請け負った仕事がこちら。
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セロファン小屋の手伝い
・モベリーの葉の集荷 一回
・小屋内の葉の入れ替えと床の掃き掃除 一回
・セロファンの糸紡ぎ 一回
勤務時間八時から十六時(昼休み一時間・昼食付き)
賃金 一回、小貨三十五枚
どの仕事も常勤の者がサポートに付きますので随時聞くように。
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僕が今日までルバラートでやって来た仕事が出来高で四回参加でおよそ小貨七十二枚なのと比べたら確かに安めに依頼だね。
まあその分夜半の仕事は無いみたいだけど。
あ、計算しやすいから小貨で言ってるけど支払いはちゃんと小判貨で貰ってるよ。
小銭ばっかりジャラジャラは邪魔です。
で、体験してみて、
モベリーの葉を集めるのは手袋のおかげではかどったし、
入れ替えもセロファンを古い葉っぱに乗せたままで移動すると喜んで新しい葉に移動していくので楽だった。掃除も草食なので臭いもほぼ無い。
セロファンも余裕持って飼育しているようで一テーブルの数は気持ち悪くなるほどでなくて良かった。
入れ替えた古い葉の中から糸玉を探すのは別の人の仕事らしい。
ちょっと聞いてみたら野生のモベリーにも時々糸玉が出来る事があるとか。サバイバル知識GETです。
ついでに昼食で出たモベリージャム乗せたパンが美味しかったです。
――――――――――---‐804字・桑を英語にしたらモベリーでした。
現実の桑の実美味いです。
種の多いブルーベリーと言えば近いかもしれません。
成分的にはわかりませんが。




