|89……山奥のおいしい水
大晦日です。
投稿が被ったのは偶然です。
今年一年『なろう』にもこんな地味な小説を読んでいただいた皆さんにもお世話になりました。
これからもよろしくお付き合いくださいませ。
聖水にもなるキレイな水。
「それがこの国では生活用水の一部です。料理もおいしくなるという話なので恵まれてますよね」
「さすがに生活用水に聖水を注いだりはしないんですよね?」
「普通に湧水のままですね。聖水用の湧水はこの国の品が一番良い効果が出るとかで、そのままでもよく売れるんですよ」
どっかの山の天然水が高値なミネラルウォーターとして売られているようなものだね。
必要な物を必要な場所に必要な時に届ける事で業績を伸ばすプリークレット。
商売上手だ。
「話は変わりますが、僕をビスコースさんに紹介してくれた旅人のお二人は今どうしているかご存知ですか?」
「剣士と吟遊詩人の二人連れですね。今はジルミの首都ギャドリンを拠点にしてうちの長距離護衛を専属で受けてもらっていますね」
戦えるキリトピオルさんとリィシフルさんは、国をまたぐキャラバンに付いて旅をしてるんだね。
国内を回って訪問販売と買い取りをしているキャラバンとは別口かな?
「うちは加工品より素材を運ぶ事が多いので、民間密着企業と言えますかね」
「そうなんですね」
「お金持ちは希望を叶えるためにお金を惜しみませんが、時間を惜しむので大変なんですよ」
「あ~」
そういうのはあるかも。
逆に一般庶民は作るための時間がかかることも、運ぶのに時間がかかることもわかってくれるので、取引も親しみを持てるのだとか。
そうこう話しているうちに目的の山奥の湧水が作る泉に到着。
泉の大きさがそれほどでもないので、一馬車ごとに時間を置いて汲み取って行く。
一台目の担当以外は泉の前に休憩場所を作り始める。
もちろん僕も!
一部の人は周辺の見回りに出ていて、他は近場から大きめの葉っぱを取ってきて敷物にしたり、中にはテントを作る人もいた。
主に日差し避けみたいだけど。
――――――――――---‐733字・ギャドリン=集まり。名前だけの首都ですが。
僕はそんな皆を見回しつつ僕の受け持つ荷車の順番になったので、湧水の詰められた樽を積んでいく。
重力軽減手袋の力が遺憾なく発揮されたよ。
水魔法要員は余裕あったみたいで良かった。
じゃなかったら手作業で汲むことになっていたかもしれないからね。
手作業は自分の手持ち分だけで十分だよ。
(自分の分を汲むのに魔法頼めるほど神経は太くない)
ちなみに自分の分は六台分の荷車と馬車が満タンになってからの収集に決められてました。
それまでは食事をとるなり仮眠をとるなりの休憩時間になっていたので、泉の周りの植生などを見て回っていたよ。
料理も出来ないし強くもないから自ずとこうなるね。
あ、ちゃんと歩き詰めの体は休めたよ。
泉の中を覗いてみたら深い底の方に水草が生えていた。
何かと聞いてみたら、あれが生えているおかげで湧水が聖水としての効果を高めるのだとか。
名前はキュリファイだそうで、ジルミにしか自生しないという話。
まさに特産品!
ありがたいね~と思いながら夜鏡の片割れと普段使いの水筒を泉の水につける。
水筒はすぐ満タンになるけど、そのまま集中して鏡の先をキチンと樽の上に持って行ってから解放する。
影室の中も心の目(インベントリって言うんだっけ?)で認識できるので満タンになる度に水を止めて移動を繰り返す。
……意外と止めるのに力がいるね。水圧のせいかな?
でもそのかいあって『山奥のおいしい水』GETだよ!
続いて背負子の空樽を丸ごと泉を沈めて、腕力に頼って引き上げる。
手袋大活躍!
これで高めの彫刻用石を買った分がマイナスにならないで済みそうで良かった。
背負子に水を満タンに詰めた樽をロープで括り付け、衝撃防止に毛布を巻いて上から背負子の色紐を巻く。
準備OK。
他の人が終わるまでその辺の石を【変化】で加熱させてオピにあげたりしていた。
ヴァクツミットの親父さんに倣ってスキルを使って熟練度を上げないとね。
オピが石にかじりつき抱き付いているのを眺めてる。和むね。
――――――――――---‐825字・キュリファイ(=浄化する)。もちろん野草採取もしました。




