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段ボールの底はどこですか?  作者: きりみっ
ジルミ
88/187

ボ88……都会の物価で計算しないで下さい

 背負子しょいこ自体を寝かせて背もたれ部分に二つ並べる形で三個積み、さらにどうにか増やせないかバランスと重心を考えて頭の方にもう一樽が限界かな?

 もう一つどうにか考えたけど上手く縛れなかった。結局四樽で決定。


 背負子の立てた枠を外さないで積もうとしたからこんなもんだろうね。

 せっかく背負子にくくったので、このまま事務所に預かってもらって最後の運搬が終わったら買い出し。

 丸一日かかるって話だったから一応棒ジュースとサンドイッチの弁当セットを三食分、荷づくりにも使える毛布とロープ他に野菜と果物。手持ちのキャンプ道具にもチェック入れて僕的には万全の備え。

 ビビりなのが見ただけでわかるね(苦笑)。


 そうそう、影室に準備する予定だった空樽は鏡の大きさの都合で開いた手の平に乗るサイズになったよ。

 でっかい物をギュイーンと吸い込んだりする機能は無いみたいだ。

 鏡を使わないで影室を開けられる様になるまではこれで頑張ろう。



 翌日、事務所で背負子を引き取って気合いを入れて準備をしていると、馬車が三台乗りつけられた。


「おはようございます」


「おはようご……ビスコースさん?」


 僕の前に立っていたのは、このルバラートに一緒に来たプリークレットのビスコースさんだった。

 僕は背負子に影室に入れない物を積んでいたけれど、ビスコースさんは心配になるほど軽装だった。


「モリヤさん。こちらで働いていたのですね」


 僕が上半身ごと頷くとニコリと笑みを見せて軽く頷いた。

 こちらでは顔が見えないようなお辞儀はしないみたいで、上半身を軽く斜めに傾けるか、今のビスコースさんのように首だけ斜めに傾げる。共に瞬間的な動きですぐに戻すけどね。

 ビスコースさんの所作は同等か下位の相手に見せる動作。

 僕みたいなバイトには当然だね。

 僕の使った方は偉い人に向けるもの。大店おおだなには当然の対応だよね。


――――――――――---‐768字・初見のあいさつは顔は見ても目を見てはいけません。


「今日はプリークレットの馬車もご一緒させていただきますね」


「それでしたらリーダーにお願いします」


 僕は入口近くにいたので奥に促す。

 受付譲にすぐ奥に通されるのを見つつ、行動力を尊敬するよ。

 今回ボーテックスに同伴するのは、おそらく護衛の節約だろうから。

 自分で護衛を雇うよりボーテックスに仲介料を払う方が安上がりだったんだろうね。

 護衛の当たり外れがあってもボーテックスに言えばいい。

 もしかしたらその場合の違約金を勘定に入れてるのかな?

 ん~逆に「ハズレ」を会社から除外できるならボーテックスにしても有効的な関係になるかもしれないね。


 人間性の読みあいはなかなか難しいから……僕だって向こうでも働いてたからわかるよ!


 すぐにみんな集まって来た。

 報酬が多いからか、かなりの人数が集まってるね。

 荷馬車に積む数は決まっているので人数割りにすると報酬は少なくなる。

 それを補う背負う形での個人報酬で、何とか文句の出ない手取りが手に入る……かな?


「毎回こんなものですよ」


 僕の歩みに並行する馬車を操るビスコースさんが軽い感じで言い、馬車の周りを歩く従業員達の背中に積まれた空の樽を見回す。

 僕より多いよね。

 僕は背負子の大きさの都合で四つが限界だったので、一樽小判貨一枚×四=四十ダルで我慢だね。


「今回の湧き水はもうすぐ来るゼ国行きのキャラバンに持たせる予定なんですよ」


「ゼ国……ゼルカって国ですね」


「そう。ここから北に広がってる国で、聖水の需要は魔法が発達しているゼ国が一番多いね」


 どうしてかと聞いたら、聖水を飲むと星の力を強制的に回復させることが出来るのだとか。

 魔法を多く使うためにはどうしても必要って話だね。


「魔法を発見して本を作る、それが楽しいって言う研究資質の高い人が多い国ですよ」


「へ~」


「聖水は、ゼ国と大きな湾を挟んだ西にあるテ国に渡ると鍛冶に用いられて良い金属を鍛えられるらしいですよ」


 さらにティルダの情報も出て来た。

 聖水は色んな用途があるみたいだね。

 僕が良く知ってる邪気払いみたいな効果はないもよう。


――――――――――---‐861字・本日の予想報酬最低40ダル+荷馬車一つ分280ダル÷(およそ)六人の金額。(ダルは100円です)バイトですから。

田舎だと、これでもまあまあの手取りです。

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