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段ボールの底はどこですか?  作者: きりみっ
ジルミ
82/187

す82……僕の初パニック

 ――――――――――---‐

 じゃあ『浮』の①に書いてある言葉から

  『漂』に行こう。

  ①ふわふわと浮かぶ。ただよう。

  ② 水や薬品でさらす。すすぐ。

  ③つむじ風で巻き上がる。ひるがえる。軽い様子。


 うん。

 良いかもしれない。

 土の【変化】で空中に漂わせる水。と言う感じで。

 本当は水の動きだけで出来ればいいんだろうけど、あの水の集まり具合では無理そうだしね。

 土の効果に期待だね。


 実験は危なそうなので、公園の噴水傍で手桶の水に向かって青い呼玉をかざして呪文をつぶやく。


「……漂土水ヒョードスィ


 ぷるんと水の表面が少し波立ったけど、そのままだった。

 あれ?

 浮かばない?

 水に触ってみるけど水のままみたい……また失敗か~良い漢字だと思ったんだけどなぁ。

 仕方ないか~桶の水をその場の地面にひっくり返そうと縁をつかんだら重かった。

 あれ? 動かない?


 水をつついてみると指は刺さる。

 じゃあと両手で鷲づかみにしてみると、すり抜けた。

 手は水の中に入ったままだけど、水の圧力しか感じない。

 ゼリーのようなドロッと感もない。


 今度はナイフで横に切りつけて見ると突き抜けただけだった。


 次は手の平で分断するようにすくい上げて見ると、採れたかなと見た手の中の水が霧散した。

 これは、魔法をかけた位置に漂い固定されているのかな?

 このままでは手桶を部屋に持って帰れないので持って来た棒を出す。

 魔法解除は風の【拡散】のかかった木の棒を刺すと調べたから準備してきた。

  (木工工房スィーバーツに売ってた)


 解除の棒を刺して手桶が持ち上がるのを確認してから、今度は水の入った手桶を片手に持ったまま魔法をかけてみる。


漂土水ヒョードスィ


 その後そーっと手桶を下に移動していくと、水だけがその場、つまり空中に浮かんでいた。

 浮いてくれたけど……何だか微妙だ。


――――――――――---‐742字・触手が生えてクラゲにならなかっただけ字の選択は良かった。


 その形は上からの重力に何とか逆らおうとしてか、丸みのある弾頭型。つまりまるでアバのような形になっていたよ。

 風が当たると裾の方がヒラヒラするのが似ているね。


 そして手や手桶で押そうとしても水の中に入るだけで位置が動かない。

 これは使い勝手が悪いよね。


「動かせないのはダメだね」


 僕は浮いていた水の塊に解除の棒を突き立てる。

 途端にソレはただの水に戻って下に構えられていた桶に飛び込んでいった。


 もう一字足すべきかな?

 でも合いそうな漢字を調べてないし、確か字数が多くなると制御が難しくなるんだっけ?

 そう聞いてたから四字魔法は僕は使ったことがない。


 でも……思い浮かぶ漢字はあるから試してみようか?


漂宙土水ヒョーチュードスィ


 言うと手桶の水がフワフワと舞い上がって喜んだけど、すぐ霧散してしまった。

 爆発しないだけマシだったね。


 もう一つ。


漂気土水ヒョーキドスィ


 これも浮かんだけど、こっちは水じゃなく霧の塊みたいになっていた。

 上手くいかないもんだね。


 あとは何があるだろうと考えていたら、ガクンと足の力が抜けた。


 あれ?

 足に力が入らない。

 腰が抜けた?

 何で今?

 心の中でパニックになっていたけど、もう遅い時間だし周りに人がいないので自然回復を待つ為に月の反射スキルを使おうとして、発動しなくてさらにパニックになった。


「何してるんだ?」


 そんな暗い中、寄って来る人物がいた。

 ジグさんだった。


「ジグさん……」


 見知った顔を見て僕は胸をなでおろした。

 僕の顔が歪んだのを見て、ジグさんはポンポンと頭を叩いて来た。


 パニックになっていて早口になる僕の話をジグさんは黙って聞き、内容が不安な部分だけ聞き返してくれた。

そして話を聞き終わったジグさんに担がれて、一つのテントに連れて行かれた。


「外で無理をするものではないですよ?」


 そこにはサーカスの前向上と終了の挨拶をした恰幅の良い男がいた。

 サーカスの団長さんだそうだ。


 ――――――――――---‐791字・【反射】は光学迷彩にも使えます。

相変わらず森谷君の魔法は迷走しています。

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