ど79……時間の経過に思うところ
「昨日で作っていた木工品が完成したので、今日はつい付けてきちゃいました」
「それが?」
ついソニカさんに自慢する。
昨日作ったステアデリュードは重量軽減付けたから早速樽で試してみる。
水の入った樽。
腰を落として腕に力を入れて持ち上げてみる。
「おお」
持ち上がった!
手袋の力を借りているとはいえ、嬉しい!
荷車の上の段に樽を乗せて僕は満足した。
仕事はしっかりこなして夕方には『スィーバーツ』に向かう。
「いらっしゃいませ」
「今日もよろしくお願いします!」
「今日で最後で、ちょっと寂しいけどよろしくね」
今日は頼んでた木のU型加工が終わったので背負子の修理を実地で教えてもらう。
まずは今の部品に巻いてある紐を全部外す作業から。
この紐で横に倒れないようにしていたから、僕の背負子では重要な部分。
紐が切れたら荷物が崩れてしまうからね。
で、外してみたらやっぱりU型枝は左右に倒れてしまった。
「ここで倒れるって事は部品的には細かったんだね。今度のはきちんと合わせたし細工もしたから紐無しでも倒れないと思うよ」
「そうだったんですか」
まあ欲しいからって勝手に作った品だし、職人の作品と比較できるはずもないけどね。
新しいのを買ってもよかったけど、手作りで思い入れがあったから直すんだし。
「じゃあ、外して僕の作った方を組み込んでいきましょう」
「はい」
倒れたU型枝を引き抜き、きちんとU型になった枝を受け取る。少し良い匂い。
よく見ると端の方に一つずつ穴が開いている。
「これは?」
「そこに外側から杭を打つことで下にも横にも動かなくなるんだよ。ちょっとした工夫だねっ」
そう言って差し込む杭を渡される。
杭と言っていたけど微妙に厚さが違う。細い方から穴に打ち込むのだそうだ。
言われるまま木づちで打ち込む。
底板からはみ出さないように入れてから、リーフさんを確認すると頷かれた。
――――――――――---‐770字・背負子は少し進化した!
これで良いらしい。
結構簡単だった。
「今回はここだけで済んだけど、底板に支障が出たらまたちゃんと木工職人に頼むんだよ?」
「次は底板が弱りそうですか?」
「ん~底以外は人為的に作られた素材みたいだから凄い丈夫になっているってとこかな?」
「今回の枝部分は?」
「これはただの加工だから、人為的素材よりは弱いよ」
他の部分と言うと、
イフェリオちゃんに作ってもらったL型軸枝。
ファイーシャさんに作ってもらった背布と紐かな。
二人が丈夫にしてくれたんだね。
ありがたや、ありがたや。
紐を改めて巻きなおして修理は完了。
「底板の時は紐と枝と全部外せば軸枝から外せるから難しくはないと思うよ」
「はい。ありがとうございます」
……これって講習代高上りじゃなかったか?
あ、でもヴラートの時は料金取られなかったな。それでチャラかな。
うん。そうしよう。
今晩から宿に戻って水を浮かす練習を多めにする習慣に戻せそうだね。
こっちもきっと……。
☆★☆
「え?」
「あれ?言ってなかったかしら?」
「聞いてませんよ!」
「最初からわかってることじゃない。私達『旅芸人の一座』なんだし」
「それはそうなんでしょうけど……」
仲良くなってきたな~と思ったのに、ソニカさん達の一座が町を移動する日数が近付いてきていた。
この頃は午後の仕事はしないで旅用の保存食づくりをしているらしい。
「一度見学に行ってもいいでしょうか?」
「いいわよ~」
保存食にも興味があったので、午後の二回目の仕事を休んで見学に行ってみた。
サーカステントの裏手にもともとあったらしい噴水の横に小さなテントがあって、そこで干物を作っているらしい。
本当は天日干しの方がおいしく出来るみたいだけど、移動の多い仕事柄早く作る方法を考え出したんだって。
(天日干しを盗りに来た獲物の収益がおいしいのか、干物がおいしいのかどちらなのかは不明)
――――――――――---‐783字・長旅には保存食(燻製もどき)




