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段ボールの底はどこですか?  作者: きりみっ
ジルミ
76/187

の76……妄想は自由

 水運びのバイトをしつつスキル付きで削り続けた腕輪に違和感を覚えたのはかなり後だった。


「なんだろ、これ」


 つい呟いちゃったよ。

 全くではないけど、スキルをまとって削ろうとするとすごく削りづらい。

 夜だけちまちま削っていたので中々滑らかなリングにならなかったが、ここに来て引っかかるとは。

 ふしでも出て来たかな?

 ん~今更だよね~。

 節は木の表面に出来るものだしね。


 じゃあ他に……あ!

 僕は思い出してリーフさんのいるはずの木工工房に夜だけど押しかける事に。


「スミマセン! 判定石貸してください!」


「あ、はい」


 僕の勢いに若干引かれてしまった。

 店を閉めるくらい夜も遅かったけど僕の気持ちがわかってもらえたみたいで、奥から持って来てくれた。

 出された判定石はプレートに付けられていて、そのプレートの角を該当の製品に触れさせると、品名とスキル名と耐久力がプレートに表示される。


 ――――――――――---‐


  シイの木の腕輪

  耐久力・15/15

  スキル・【変化】重力-20


 ――――――――――---‐


 やった!

 これで二つにして手袋に付ければ……て


「あ、これって二つに割ったらスキルはどうなるんですか?」


「ん~スキルによって消えちゃうもの、効果が半減するもの、それからさらにスキル付きで彫ることで効果を補強出来るものがあるけど、効果が持続するものは無いかな」


 そう言いつつリーフさんは欠伸をかみ殺していた。


「この重力はどうですか?」


「おそらく半減タイプ。でも補強はやってみないとわからないね」


 半減か……それでも-10でもまあまあだよね。

 二つになっての相乗効果にも期待したいところだし。

 まあ、彫りづらくはあるけどきっちりキレイな飾り彫りを入れてやるぞ!

 あ、その前に残っているを凸凹を平坦にしないといけないね。


 ――――――――――---‐733字・後から折るのは同じ効果の物が二つ欲しいからです。


「スキルが付いてからの商品生成はスキル付けないで削ればいいよ~」


 欠伸をしながらリーフさんが言ってくれたのでお礼を言って宿に戻った。

 そして高くなったテンションのまま半分に折ろうとして、オピに横っ面に突撃された。

 痛い。


 ふと窓の外を見た。真っ暗だ。

 あ、思うに任せて行動するより、一呼吸でも置いてから行った方が成功率が上がるかな?

 ん。今日はこのまま休んで明日の楽しみにしよう。

 ありがとな、オピ。


 オピがどことなくホッとした様子だった。


 その翌日のバイトは夜の工作が楽しみでウキウキしていた。

 朝に腕輪を手に取ろうとして、顔面にオピのジャンプ突進を受けてのけ反ってしまうくらい。


「キュイ!(遅刻するだろが!)」



「……あれは痛かった」


「何が?」


 すぐ隣を歩いていたソニカさんが僕のつぶやきに反応して来たので、僕は背負子の上のオピの入った袋をチラ見して首を横に振った。


「何でもないです」


「何か嬉しい事でもあった? ん? でも痛いって……痴話喧嘩?」


「違います。どうしてそんな妄想に?」


「顔がにやけてるわ。でも痛い目にあったんでしょ?

 そうすると何かしらラッキースケベな状況に遭遇したかな~と」


「そんなに緩んでます?」


「思いっきり」


 そんな見た目の感想を聞かされて、ちょっと眉をしかめてソニカさんの色っぽい作業着姿を見た。

 はあ~。


「はあ~そんな事に、僕も遭遇したいです」


「じゃあ、違うの?」


「はい。違います。彼女もいませんし」


 僕的にはなんてことない感じに言うと、ソニカさんは何か考えるようにうつむいてしまった。


「そう……じゃあ何でそんな顔していたの?」


「今、木工に手を出してまして、良い所まで進んでいるんです。それでですよ」


「そうなの?」


「はい今晩折るのが楽しみです!」


「お、折ったら壊れるんじゃ……」


 ――――――――――---‐758字・相手はテールラビット?(笑)

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