★70……動物たちがスゴイ!
舞台に目を戻すと三人の団員の中央に目立つスーツを着た恰幅の良い男が立っていた。
「本日は当一座の公演にご来場いただきありがとうございます。
このひと時をお楽しみいただけましたら幸いです。
よろしければ最後までご覧くださいませ」
男が深く頭を下げると囲んでいた三人の持つ旗先に花が咲き、その旗が振られることで舞台上に花吹雪を舞い踊らせた。
それに目を奪われていると男は消えていた。
これで開幕らしく、楽器のファンファーレが鳴り響いた。
旗の三人と入れ替わりで舞台に上がってきたのは輪くぐりしながら行進してくる色々な大きさのワンちゃん達。
可愛いなぁっ!
全員くぐった後は先頭がボールを転がし、その背中に前足を乗せた体勢の数珠繋ぎの行進。
あのよたよたと体を横に振りながら歩く様子は可愛いよな?
思わず僕は肩にいるオピに同意を求めてしまった。
そんなオピの背中にはサーカスの子達と区別するために、僕とおそろいの黄色いバンダナを付けいていた。
始めに銅に巻いて腹巻かな?とか至近距離で言ってたら、あごにアッパー頭突きをくらった!
仕方なく多い毛をまさぐっていくとちゃんと首があるのが分かって、そこにバンダナを巻いたら半分埋もれて背中からバンダナが生えてるように見える。
そんなテールラビットマンは犬たちを見て大仰に頷いて、マネして体を横に揺らして見せる。
自分もだって!だね。はいはい。
そんな和みの時間かと思っていたら、犬の一匹が輪を持っている人に向かって火の玉を噴いた!!
火の玉は人の持っていた輪に当たり燃やした。
人が慌てて輪を放すと、火吹き犬が床に落ちる前にキャッチして掲げ上げた。
観客が「火だぞ!」とざわついている中、赤毛の火吹き犬の輪を勝手を知っているらしい犬達がジャンプしてくぐっていく。
おおーっと言う歓声が起こり、最後の一匹も飛ぶのかと思ったら何か白い玉を噴き飛ばして火を消してから悠々とくぐっていき、火吹き犬がくわえていた輪を取り落とすと笑いが起こった。
ふむ、あれは霧の玉かな。散っても舞台を汚さない工夫だね。
――――――――――---‐843字・ファンタジー世界の犬も頑張る!
落ちた輪を白い玉を噴いた犬が後ろ足で蹴ると、輪は見事に元の人の方へ飛んでいく。
輪の勢いを殺すように腕で何回か回転させて手に取った人は、自分の前に並んでいた犬たちの足元に向けて輪を横なぎにする。
危ないっ!
とっさに思ったのに、後ろからの一撃に対しても犬達は平静でジャンプでかわしていく。
余裕のある子は宙返しまで披露していた。
こっちの犬は機敏で猫みたいだなぁと感心してしまった。
大きいのは狼かもしれないね。
そのあとあいさつ代わりの二足立ちを全員で披露してダーッと帰って行った。
次は木の円盤をたくさん乗せた台を押す人と、ナイフをたくさん乗せた台を押す人の登場。
その後ろから腕としっぽの長い猿が五匹出て来た。
まずは見本のようで一枚投げてナイフが刺さって落下してくる円盤を一匹の猿がジャンピングキャッチ!
それを見た猿達が喜んでいるのかキャッキャとジャンプしながら舞台の端にばらけて駆けて行った。
円盤は上に投げたとしてもナイフはどうしても横に投擲する事になり、刺さった円盤は客席の方に飛ぶことになる。
それを猿達がギリギリでキャッチする。というスリルを味合わせる技のようだ。
あの猿達は信用されているんだなぁ。興味深い。
最高同時投擲枚数七枚。
端数の二枚は身体能力の高い猿のとこにちゃんと飛ばされているようで、同時のはずがわずかな差を見極めて一枚目を取ると、それを足場にジャンプして二枚目をキャッチ。
一枚目はしっぽでしっかり確保していた。
あんな空中機動までこなすのか~これは調教では説明できないレベルの動きだね。
何がそこまで猿達を掻き立てているんだろう。
「キーッ!」
今、何となく「肉!」って叫んだ気がした。
――――――――――---‐793字・餌付けは有効




