で66……魚に昆布だし
とにかく二回運んで昼休み。
リーダーがバイト達を連れて上手いお店に連れてってくれる事になった。
ここで六人のうち三人がバイトと判明。
メンバーは、僕、ソニカさん、大きいおじさん。
おじさんもソニカさんのとこの旅芸人さんだった!
リーダーにペット同伴出来るか確認して、店で席に落ち着いてから背負っていた背負子の横にぶら下げていた袋をツンツンすると、中からキュウキュウと声がした。
あ、これは寝ぼけてるな。
「おやつの時間だよ」
僕が小さくつぶやくと、袋が動いて口の部分から動物の鼻先が! ヒクヒクしている。
続いて袋の口が締められていたので間延びした顔が出て来た。
プッ面白い顔だ。
見守っているとスポンと袋を抜けたテールラビットのオピの登場。
食堂で料理が出てくるまでの待ち時間に持って来ていたおやつ用の野菜を与えておく。
他のお客さんのお邪魔にならないように、布を引いた僕のひざの上でだよ。
「カワイイ~ッ」
一緒に来ていたソニカさんがオピを見て緩んだ顔をしている。
テールラビットは火属性なので水は飲まない。
野菜の水分で間に合うらしい。
食べ終わったオピは膝の上で普段は見られない形に伸びていた。
いつもは球体に近いのに、今は太ももに密着して潰れていて……まがりせんべい? 瓦せんべいかな?
内臓的に大丈夫なのか少し心配して平らになった背中を撫でる。
「キュユユユユユ~」
くつろいでるようだよ。
短い足で僕の太ももをペシペシしている。
僕は伸びたオピを膝に乗せたまま、出て来た料理を楽しんでいく。
大きな川があるからか魚料理がメインだった。
魚の唐揚げのあんかけと、小骨がアクセントのつみれと握り団子のスープ。
あとはサラダとかの野菜類。
こっそりスープに持参のだしを振りかけて見たら、うまみが倍増した!
煮干しと昆布だから魚料理に合うんだね。
――――――――――---‐745字・かぼちゃの煮物に入れると変な味になります。
この店はあっさり系のようだけど、そのうちだしの使い方を覚えそうだね。
環境的に。
甘みのある野菜とかの料理には向かないよね。
なぜか肉料理にも合わない。
でも今回は美味かった。
おまけの握り団子だけど、まとまる位に練った粉を手の平の中で握りつぶして歪になったまま汁の中に入れて火を通したものだよ。
凸凹してるから中まで火が通りやすいマカロニ構造だね。
これがこの辺りの主食なのかな?
この団子用の粉欲しいな。
粉だし日持ちするしね。
……料理の話ばっかりじゃなく、ソニカさん達の旅芸人一座の話も聞いたよ。
大きいおじさんは重い物を持って見せる芸人さんで、名前はジグさん。
ソニカさんはそんなジグおじさんを支柱にして舞いを見せる軽業師なんだって。
ソニカさんの青い長髪が舞いに合わせて流れる様子は美しいだろうなぁ。
一座は三日前から公演を始めていて、先の三日間はソニカさんも出演していたとか。
三日ごとの変更で十八日間公演。
見てくれる人の回転率を考えて一日二回公演だって。
「良かったら見に来てね」
「考えときます」
仕事を始めたばっかりだし最初位は真面目に働いて、四日目の午後位がいいかな?
ソニカさんの出演日だしね。
うん、そうしよう。
じゃあ楽しみも出来たし午後の仕事も頑張ろうか。
事務所に持っていたアバの入った袋を預けて背負子を空にすると、空樽を乗せた荷車のところに行く。
午後用には二台が準備されていた。
この時間は人が集まりやすいそうだ。
腹ごなしかな?
……午前のリーダーはいなかった。
けどソニカさんとジグおじさんはいたので、何となく近くにいて同じ荷車に付いた。
「よろしくね」
「よろしくです」
午前と同じように魔法を使った水汲み要員が決められ、荷車に乗せたままの空樽に水を詰めていく。
――――――――――---‐727字・旅芸人はサーカスみたいなもの
ソニカさんは本編キャラの四人目です。
ジグ=誘導器具。現在はルアーの呼称にもされています。




