ボ58……一人になってホッと一息
なんてこった!
四日目ギリギリ!!
役場の窓口、アドバイザーさんに早速尋ねに行く。
「宿ですね?」
「はい。動物同伴可能で、安めの所が良いです」
「キュイ!」
テールラビットが自己主張するように僕の肩の上でふんぞり返っている。
「それでしたら、こちらなどいかがですか?」
それを見たアドバイザーさんが微笑んで、広げたガイドMAPで一つの宿屋を指差した。
店の名前はバジェット。店主はアプトさんと言うらしい。
室内に動物の同伴が可能なのは、店内にペットがいるかららしい。
それを納得して怖がらなければ、中々の宿とか。
「ありがとうございます。それから、ここに来たばかりの僕でも出来そうな運搬の仕事は無いでしょうか?」
「そうですね……」
アドバイザーさんは僕を上から下まで見てから、首をかしげた。
「力仕事でも大丈夫なのでしょうか?」
「はい、ある程度なら」
僕は背中に背負った大きなカバンを載せたままの背負子を、体を傾けて見せた。
もちろん背負子に重力軽減のスキルが付いている事も内緒でと言いおいて伝える。
「それでしたら、何件かありますので宿で検討されるといいかと思います」
「ありがとうございます」
アドバイザーさんオススメの何件かが書かれた紙を渡される。
じっくり検討させていただきます。
とは言え、まずは宿。
『手頃な』宿バジェット。予算って意味じゃないよ。
ペットがいるって話だったから和やかなとこだといいな。
とか思ってました!
ごめんなさい!
こっち見ないでください!
宿のカウンターの横でお座りしていたのは、狼でした! しかもデカい!!
「いらっしゃいませ」
「あ、あのですね……こちらは動物も部屋に入れていい宿だと聞いてきたんですが、あってますか?」
「はい、あってますよ。お連れはそちらの兎さんで?」
「はい。一泊いくらですか?」
「そちらでしたら宿泊料は一人分で結構ですよ。一人部屋で素泊まり五ダルですね」
――――――――――---‐764字・町に入ったらまず宿屋。
小貨五枚ですね。確かにお手頃価格。
だからと言って黙って泊まっていたらすぐ手持ちのお金は枯渇するはず。
気を引き締めないとね!
「素泊まりに食事が付かないのは知ってますが、何か付いているサービスはありますか?」
これを確認するのは重要!
無いと思ってたらあったって事は、あり得る話だし。
「料金内でだったら、ペットの手足を洗う為に桶と手ぬぐい、あとは毛布と小さめの蝋燭は貸し出せますよ。井戸は宿の裏です」
「じゃあそれを全部つけてお願いできますか?」
「いいですよ。宿代は先払いでいただきます」
アプトさんがそう言うと狼がこっちをジッと見て来た。
そんなに睨まなくてもちゃんと払いますよっ!
小貨五枚、500円相当を払い部屋の鍵をもらう。
桶と手ぬぐいは鍵と一緒に渡された。
早速背負子と荷物だけ部屋に残し、裏の井戸に行く。
コートの表面を乾拭きして汚れた手ぬぐいをすすいで絞ると、テールラビットを浅く水の張った桶の中に立たせて足を水の中で洗う。
お腹が水に付かないように後ろ足を伸ばして立っている姿が可愛い。
逆に顔が水に付きそうだ。
余りに必死そうだったので、桶の縁に前足を乗せさせて絞った手ぬぐいで背中を拭いてやる。
何度もすすぎながら拭いていたから、どことなくすすけた感じが減った気がするかな?
「このくらいでいいかな。ホントは丸洗いしたいけど嫌だろ?」
「キュ?」
よくわかってないみたいだ。
今度は膝の上に仰向きに抱えて足の水を拭き取ってやり、キレイにしたコートの肩に乗せる。
汚れた水をきれいな水に替えて部屋に持っていく。
待ち構えていたようにアプトさんが毛布と蝋燭を持って来てくれた。
早速身に着けていた服を脱いでいく。
馬車では常時警戒してて薄着になんてなれなかったから、やっと一息ついた感じだ。
――――――――――---‐766字・宿のチェックは重要!
手頃な=バジェット
〃 =アプト




