?54……焼け石にテールラビット
なかなか話が進まないのはキャラクターがしゃべりたいことを全部しゃべらせようとしている為です。
読みづらかったらスミマセン。
「生き残りのテールラビット達に差し入れしたかったけど、難しいか……」
「キュイ?」
お腹のテールラビットが降りてきて僕の顔を見るので見つめ返す。
どうした?
とっとっとっと金属の器の隣に寄り添ってまた見上げてくる。
「手伝ってくれるのかい?」
「キュイ!」
言うが早いか器の中に飛び込んで耳を石の下に差し込むとプルプルし始める。
すると耳の先から火花が出て、石が熱を帯び始める。
「キュイ~」
満足いくまで温めたのかそのまま器の中でまったりしていた。
熱くないのかなと思ったが本人が良いなら構わないだろう。
その姿はまるで岩盤トマト風呂にくつろぐ湯治客のようで笑ってしまいそうになったけど。
すぐにトマトから蒸気が出始めて、さすがにまずいかなとテールラビットを器からつまみ出す。
思った以上に上手くいったみたいだね。
休憩の時に動物用の馬車に木の板に乗せたままの器を持って訪ねていって、管理の人に言ってアツアツのミニトマトを差し入れする許可をもらう。
柵の鍵を開けてもらって器ごと中に置いて見る。
中の子達は器から遠い位置の柵に体を預けるように遠ざかろうとしていた。
戦ってつかまったんだから怖がって当たり前だよね。
「キュイ~」
その柵の前に僕の連れて来た子が立つ。
柵に向かって短い前足を上げて犬かきのようにパタパタする様子は……可愛い。
柵の中の気を引き、目の前でミニトマトを食べて見せた。
それを見ていた柵の中の子達がそろりそろりと器に近付いて、一匹がシュバッて勢いでミニトマトをくわえて退避していく。
それを見ていた他の子も順に手を出していく。
やっぱりお腹は空いていたみたいだね。
食欲があるのは良い事だけど、毛が赤いからケガをしていてもよくわからないのは少し心配だね。
戦いの後なんだからケガが全くないはずがない。
――――――――――---‐737字・洗面器岩盤浴(笑)
警戒されているから近付けないにしても、ひどいケガの子はわかるといいな。
「ねえ」
僕は目の前で柵の中を眺めているテールラビットの頭を人差し指の腹でトントンと叩く。
振り向いて、無い首で首をかしげる姿がいちいち可愛い。
フクロウとかが顔を回転させて首をかしげるのにそっくりだ。……でも九十度以上回すのはやめてね。
「ケガの酷い子がわかるかな? わかるなら教えてほしいんだけど」
言われたテールラビットは隠していた耳をピコッと立てて柵の周りを小刻みに飛び跳ね、一周で終わらず二周して戻ってきた。
後ろ足で立ち上がり、短い前足でビシッと柵を指差す。
もしかしてドヤ顔してる?
「ゴメン。それじゃわからない」
言われたテールラビットはゴロリとその場に転がって、後ろ足を空中に何度も蹴り上げて満足したら起き上がって柵に向かって歩き出した。
一人ボケつっこみ?
何かストレス発散してるようにも見えた。
僕がわからないのが悪いのか?
「キィ!」
柵の後ろの方に行って鳴いたので怖がって逃げられないように遠巻きにそちらを見ると、自分の身体を一生懸命に舐める子がいた。
同じ場所ばかり舐めているので、これは確かにケガの可能性が高いね。
でも問題は、警戒心が強くて手を出せそうにない事かな。
試しにその子に手を伸ばしたら、他の子が大移動をしたので一緒に動かれて失敗。
その動きの前面に回り込んで手をかざすと、思いっきり威嚇され手の平をひっかかれた。
地味に痛い。
痛がっていると後ろから含み笑いが聞こえたので振り向くと、リィシフルさんがクスクス笑っていた。
「手当てしたいなら目的の子を眠らせるといいですよ」
あ~町に入り込んだ動物を麻酔銃で眠らせる感覚だね。
すぐ野生に帰すならそれで問題ないかもしれない。
けど今回のこの子達の行先は家畜の販売所らしいので、それが逆効果で人を嫌いになると言う可能性が高いかな。
――――――――――---‐770字・勝手に架空の敵に蹴りを入れるテールラビット
キュイは優しい声
キィは怒った声
です
テールラビットの可愛さが伝わるといいな。




