か53……スキル【熱吸収】?
今は食事の準備が終わってたき火に移された炭の中に芋を一つ押し込む。
たき火に飛び込もうとジタバタしてるテールラビットを空いてる方の手で押さえつけているけど、その姿はかなり必至だ。
「今飛び込むのはダメ! 炭じゃないのを用意してるから」
「キィ?」
クリップの効果かこちらの言葉というか指示のようなものを理解させることが出来るようになっていて、何とか暴れなくなった。
でも油断はできないので押さえる手は放さない。
たき火を見つめる顔を見ると、口が半開きでよだれが流れ落ちそうになっていた。
あ~あ~
ふと周りを見渡して、皆は体力回復に静かにしつつこちらを見ていたので騒がしくして恥ずかしい気持ちになった。
それでもその場から動かずたき火の奥の様子に耳を澄ませる。
かすかにシューと空気の抜けるような音がして、たき火の中に長い棒を突き立ててみる。
「ん。大丈夫そうです」
引き抜いた棒の先には表面が若干焦げた芋が刺さっていた。
「はい、どうぞ」
目の前に芋を差し出し、押さえていた手を放すとテールラビットは僕を見上げた。
「君の為に作ったんですから食べてください。熱いの好きでしょう?」
「キュィッ!」
熱いのを確認するためか鼻を近付けて匂いを嗅いで納得したテールラビットが芋に歯を立てた瞬間、芋を中心に空気中に強く広がっていた熱量が一気に下がった感じがした。
ん~炭が好きと言うか熱を食べてるんじゃないか?
控えめな温度になったそれをガツガツ食べ進める様子にちょっと和んだ。
でもこの子がいるとなると常に温かい食べ物が必須だね。
僕の使える属性でいくと木よりも土かな?
熱が必要なら石を焼く魔法を覚えるのが良いかな?
……いや
テールラビット自身が過熱してそれを吸収するという方法なら効率が良いかな?
――――――――――---‐729字・更に明かされる不思議生物ぶり
でも、お腹が空いている時に自分で作るのはめんどいね。うん。
考え込んでいたら食べ終わってコロコロしてたテールラビットがにじり寄ってきて、僕のお腹にへばりついた。
上にコートを着てるから、まるで中年のビール腹みたいに見えるよ(苦笑)。
でも温かいから、その日はそのままハンモックに潜った。……あったかい。
☆★
翌朝
早速石を集める。
出来るだけ丸いのを。
キャラバンは停まっているわけにはいかないので、馬車の中で石を焼く魔法を考える為だよ。
土属性のスキルで加熱するのがあるかと思ったけど硬さを変えるのしか(教本に)ないみたいだからやっぱり魔法だね。
まずは石の加工は土魔法なので三文字目の【土】は決定。
熱い石と言えば溶岩だけど、あれは流動体だからまとめる感じの言葉が欲しい。
……難しく考えるのがいけないのかな?
普通に【加熱】で行ってみるか?
温度調整はどうしたらいいんだろう?
込める力の強弱かな?
ハテナだらけだし、まあまずは試してみてからかな。
馬車の床を焦がしちゃいけないから、石を金属の器に入れて更に木の板の上に乗せる。
よし、行くぞ!
「……加熱土」
初めてだから星の力を加減して石に込めていく。
……この加減だと熱を持たないっぽい。
このまま力の量を増やせるかな?
……熱くなれ、熱くなれ、熱くなれ!
お
良い感じかもしれない!
よし、この石の上にミニトマトっぽい野菜を並べる。
……あれ?
トマトを乗せたのに石の熱が消えてないか?
手をかざしてみると、やっぱり熱が無くなってる。
仕方ない。もう一回「加熱土」。
ん~良い温度になったので力を込めるのをやめると、点いたばかりの火種に竹筒で空気を送ってたのをやめちゃった時みたいにしおしおと熱量が下がっていく。
ああ~この魔法は欠陥だ。漢字的に加熱させるけど持続はしない魔法になってる。
つまり、力を止めると冷める。
――――――――――---‐765字・良い加熱魔法がないでしょうか!?
失敗続きの魔法(笑)




