底47……税務調査
その後どうなったかって? もちろん連れ戻されたよ。
流石に八才に旅は無理でしょう。
そして
「あげる」
僕はイフェリオちゃんから蓮華石のクラスターを渡される。
「水を垂らすと光る石なの。暗くて怖くても手元が明るいと落ち着けるから」
「そんなに心配ですか?」
「うん」
即答されて項垂れた僕の肩をキリトピオルさんが叩く。
振り向いて見た顔は口には出さないが目は笑っていた。
「しっかりしたお嬢ちゃんだな。キャラバンにいるうちは俺等も見てるから大丈夫だって」
「知らない土地でフラフラしたら、水魔法使えないしのたれ死ぬかも……」
「そこまで心配なのか」
あごに手を当てて溜め息をつくイフェリオちゃんを見て、キリトピオルさんが呆れる。
そこまでじゃないと思うよ。
「僕は自分で決めたんだし、大丈夫ですよ?」
「……うん。わかった」
何とかイフェリオちゃんとファイさんを送り出し、キャラバン再出発。
もちろん馬車内外の見回りは強化されたね。
予定通り昼には一つ目の村に着き、先発馬車が配達は済ませてくれていたので商人さん達が伝票を確認していた。
後続分の降ろす木箱を次々と背負子に乗せる。
(段ボールは荷物袋の仕切りに使われている)
案内されて運んでいると驚かれた。
結構かさばっていたけど縦積みにしてかなりの量を背負って行ったからね。
それ以外は村から荷車を出してもらった。
代わりに村の作物を買い付ける。
訪問販売だから売値は高く買値は安い。
利益はキャラバンの運営費に消えるそう。儲かっているかは僕にはわからないけど、物品が回るのは良い事だと思う。
僕が運搬から戻ると、ビスコースさんから今日の分の賃金をもらう。
食費が引かれているからお小遣い程度だけど、思った以上に運べたからって金一封みたいな感じかな?
――――――――――---‐734字・やっと仕事らしい仕事
その分、村の調査に人を回せたとか言ってた。
作物の生育状況、天災での災害状況を調べて上に報告すると喜ばれるそうだ。
辺境の生活を国の役人が見るのは大変なので、せめてもと街道沿いは委託されるとか。
税務調査を任されるなんて流石プリークレット!
街道から外れるような僻地はそこ専用の調査員が税務から出るみたい。
難しい事はわからないけどね。
お金は貯めて置こう。
旅の準備に結構使ったし、次ももらえるとは限らないしね。
この小さい村はそんなに珍しい物はなかった。
特産品もフィロープと被る。木工品、布製品など。
でもファイさんが作った服ほどの一品は見られなかった。
イフェリオちゃんもファイさんもある種チートだったんだねぇ。
一人旅に出なくて正解だったよねぇ、拐われたら大変だ!
僕は内緒にしとくよ、もちろん!
そんな村でうろついていて目についたのは紙だったよ。
辺境は荒れ地が多い。
それに伴い、荒れ地の草を集めてお湯で煮とかして紙を作るのに有効な土地だね。
そこでメモ帳を買う。白くなくとも安ければいいよ。
覚える言葉色々あるし、メモにしといて後で日記に落とす。(日記と言っても所詮メモ帳だけど)
書くと忘れづらいので日記はいい。何もなければそう書けばいい。
何も無さすぎて書き忘れる事もあるけど、日記だし強制するもんでもないしね。
そのうち鉋も見つけたい。
鉋くずだって上手に削れば即席の紙の出来上がりだよ!
(そんな訳あるかって? 僕がそう見えるんだからいいんだよ)
あ~マテバシーさんの仕事場になら材木削り用の鉋があったかもしれないね。
近代的な木で囲われた鉋じゃなくて、コの字型の両手で引っ張るタイプでもいいから欲しいな。
(アルプスの山小屋のおじいさんが使ってたやつだよ)
初期投資しても先を考えると良いかもしれない。
最初は上手く出来ないかもしれないけど、経験は何かしらの役に立つかもだしね。
――――――――――---‐795字・タダで紙を手に入れたい為の妄想




