の46……プロによる野草講習
街づくりゲームのデータを操作ミスで丸ごと消しちゃう夢を見た!!
(夢でも)すごいショックだった!!
「それでは、町にこちらの彼女の事を報告して対処をお願いしましょう。このまま進んでこちらが誘拐犯などにされてはたまりませんからね」
ビスコースさんは皆の視線をサラリと流して宣言する。
その指示で護衛の一人が馬車とは別の護衛用の馬を使ってフィロープまで早馬を出した。
馬には負担が大きいが昼過ぎには着くだろうという事。
往復には最低でも明日まではここで待機だね。
……僕のせいみたいでキャラバンが停滞するとか思っちゃって、居心地が悪い。
イフェリオちゃんは見たことがない物ばかりなのではしゃいでいる。
これでよく一日黙ってほろの上にいたなぁ。まあ日中は走ってたからだろうけどね。
そして僕はなぜか子守を命じられて、イフェリオちゃんについて歩く事に……。
僕も初めての場所だから街道脇の林とはいえ慎重になるのは仕方がないと思う。
そんな僕の気持ちを他所に、遠くに行かないように注意してもずんずん林に入っていくイフェリオちゃん。
「食べられる草、あったよ」
「あ、そうなんですね」
……木属性の強いイフェリオちゃんは野草探しのプロでした。
しかも、ちょっと奥まで行ったら果物まで見つけた。けどモンスターだった!
近付くと噛みつこうとしてきた!
「果物のモンスターはこちらを食べようとしてるんじゃなくて、生存本能で近付いた物につかまろうとしているだけ。普通の植物より活動的なだけでしょ?」
「それでも見つけるなら安全な物にしてもらいたかったです」
「でもモンスターの方が移動に力を使う分、体内の栄養価が高いの。おいしいの」
「そっちが本音ですね。僕にも倒せますかね?」
「果物は頭のてっぺんを叩くと割れやすいかも」
「了解です。やってみます」
「本体の木は倒さないでね。せっかくの果物が育たなくなるのはもったいない」
「はは、なるほどです」
「適量でやめるから、こちらの体力が少なくなったら距離を置いて追ってくる分だけにするね」
イフェリオちゃんの作戦で、徐々に距離を取って行きながら相手にする数を減らしていく。
そうして集めた果実は呼玉と果肉に分けられ、果肉の半分ほどには「糸化木」をかけてドライフルーツに。
もう半分は生のフルーツとしてキャラバンに納めたよ。
――――――――――---‐900字・プロ作のドライフルーツ
ドライフルーツを短時間で作成した事でビスコースさんに若干目をつけられた。
水魔法にも蒸発の魔法はあるらしい。
海水を塩とにがりに分けたりするのだそうだ。
と、豆腐あるの? ……あ~でも醤油無いし、無いほうが心の傷は浅くて済むかな。
作った事ないし仕方ないか。
モンスター狩って、加工してたら一日が終わってしまった!
充実してたと言えるのかな?
翌日、朝からイフェリオちゃんによる野草講座を受けている。
まあ、暇だったんでいいんだけど、暗記は無理だから手持ちの雑紙のメモ帳に書き込んでいく。
薬の材料は採集で覚えたけど、料理しないから視野にも入ってなかった野草の中には薬材料にはならないけど薬代わりになる草が色々あるらしい。
噛むとビリビリするワサビみたいな葉っぱ。
気付け薬代わりになる苦い草とかも野草なんだよね。掘るのが大変な根っこがお茶になるらしい。
それ位なら自作してみたいな。
ポプリとかはあるのかな?
水を弾く葉っぱとかで湿布を作ったりもするって。
アバゼリーを患部に貼るだけでひえぴたになるらしい。
あー、あの時売る分だけ取って他の部分は捨ててきたのは勿体なかったって事かな?
でもあの時は大きい鞄なかったし持てないか……。
話を聞いて思ったのが狩りや採集には無駄がないって事かな。
そんな昼下がり、馬が戻って来た!
しかも一頭じゃない……よく見たらファイさんだよ!
颯爽と馬を操っているファイさんの姿を捉えたイフェリオちゃんは早めに僕の後ろに隠れていた。
ここに居るのわかってるんだから、意味がない気がする。
キャラバンのすぐ前で護衛達と話をして、馬を引いてこちらに確実に向かってくる。
「イフェリオ」
皆が集まった場所でファイさんが少し低い声で呼ぶ。
あ、これは怒ってるなぁ。
イフェリオちゃんもわかったようで、すごすごと出てきてお説教モードに突入。
そして抱き締められた。
王道パターンですね。
――――――――――---‐794字・苦い草はタンポポです。




