|44……捕り物は小物
前回遅れた分今回は二日で更新です。
まあ、僕の寝る予定の馬車の上で捕り物があったら気になるね。素直に頷いた。
安全の為にビスコースさんの指示で寝るのは別の馬車になった。
でも、基本的には作りは同じらしく、あっちの馬車の中にあったと同じような布巻きがあってそれを皆が解いていた。
「それ、何ですか?」
「聞いてなかったのか? ハンモックだ」
何と! これが寝床だった!
伸ばした端のひもを向かい側の支柱板に結び付けて適当に布を広げたら完成。
好みで毛布を引いたりすればいいのだそうだ。
足がつく高さなのがいいね。コケてもちゃんと支えられた。(笑)
そんな初ハンモック体験は、加減しながら横向きミノムシを作ることに成功した。
天井のほろを見上げてみるけど、あの上に乗ろうって気持ちは僕には思い浮かばなかった。
護衛達が警戒しながらの夜が明け日が昇り始めると、ほろの上に有った花に日が当たった。
それは白い花。
しかもそのたった五枚の花弁の縁から大量の糸が噴出してそこにあるハンモックを覆っていたのだが、光に当たると糸がクシュクシュと縮んで花の内側までくるまって花はつぼみに戻り、さらに外側に固いがくが伸びてきて終いには種のようになってハンモックの上に残った。
……イメージはカラスウリの花です。(作者・著)
「花がつぼみに戻りました」
僕も早起きしてキリトピオルさん達のとこに来ていると、馬車を見張っていた護衛が報告に来た。
二人で見ていたので、もう一人はまだ現場らしい。
何でもその『花』というのが防御特化の植物らしく、夜行性で発芽に力を注いだ人の周りに花を開いて外敵を排除する肉食植物だったのだそうだ。
どうりで夜のうちに動かないわけだね。
その花は日の光に当たると勝手にしぼんで種に戻るので、それを待っていたみたい。
――――――――――---‐713字・ハンモック体験
「中の人物に動きは?」
ビスコースさんが問うと、ありません。と返ってきた。
「では確保の方向で。抵抗を見せるかもしれませんから慎重にお願いします」
護衛の依頼主であるビスコースさんの一言で護衛達が動き出す。
抵抗して暴れられたりしたら、下になってる馬車の中の食料が被害を受けるかもしれない。
「あの~」
僕は一つ提案してみることにした。
……用意してもらう物は長い棒。本当は手持ちの棍棒でも可能だけど、上の人に威嚇にとられないように棒にした。
立ち位置は馬車と太陽を挟んだ位置で、太陽に背を向ける。
日が昇ったばかりで影が長いのか好条件だ。
僕は自分の影になっている長い棒に視線を送る。
すると棒の影はヘビのようにうねうねと動いて馬車の上に登っていく。
昨日はそこまでの話をしなかったが、僕の影で捕まえる意志を込めて接触されたものは、そこから動けなくなる。
昨日の鞄も僕が持っているうちは、引っ張ってもそこにぶら下がったまま動かせなかったはず。
試さなかったけど。
それで【影動】を使ってほろ上のハンモックを固定すれば暴れないだろう作戦を話したんだ。
馬車の向う側では馬車の影が地面に伸びているはずだから、皆にも影に近付かないように言っておいて、ハンモックの影に棒の影が接触したのが見えたら影に当たらない部分から馬車に登ってもらう。
上って確保可能な位置に護衛の人が来たら影を引っ込めて即時捕獲。
「確保完了しました……商隊長。上に有ったのは旅用のハンモックで、中にいるのは子供のようです」
商隊長のビスコースさんが渋い顔をする。
おまけに今は日の出したばかりの時間なのでまだ寝ていたって。
影を使ったのは過剰だったみたい。
「……降ろして話を聞きたいが起きてからにしましょう。モリヤくん、逃げないように押さえていてください」
――――――――――---‐741字・影のお仕事
カラスウリは本来、肉食ではありません。




