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段ボールの底はどこですか?  作者: きりみっ
リルミド
41/187

彡41……踏み出した第一歩

 そんな僕らの後ろをつけてくる姿があったのに気付いていなかったのは失敗だった……。

 僕が馬車に荷物を運び込んでいるうちに、その枯草色のローブの人物は馬車に使われている板に緑色の呼玉を持った手を当ててつぶやいた。


瘤梯木リューテーモク


 呪文が終わると馬車のほろを支えるために付けられている枠材からポコッと木のコブが出た。

 しかも上に向かって一つずつ増えていった。

 ローブの人はそれを足場にしてほろの上に乗った。


 通常の馬車ならほろの上に乗れば中にいる人達に一発でわかるはずなのだが、この馬車は天井近くにロフト板が付けられていて軽いものを収納していた為に気付く事はなかった。

 もう一度呪文を唱えるとコブはきれいに消えていた。


 ローブの人はほろの上の枠材を器用に渡り、ハンモックのようなものを枠材に固定してその場に居場所を作り上げると腰を下ろした。

 その姿はローブの中にリュックを背負っているので、ずんぐりむっくり。

 馬車の中から僕が出てくるとほろの上で見降ろしていた。


 僕は背負子しょいこを背負い馬車を出ると、まだ積み込みが済んでいない馬車に寄って行って積み込みの手伝いをする。

 今日からお世話になるので顔合わせの意味も兼ねている。

 その馬車担当の商人さんが伝票チェックを行っていた。


 プリークレットのキャラバンは馬車一つに対して御者兼見習い1、商人2、見習い1、護衛2が配置されている。

 馬車ごとに積まれる商品に関連性があり、移動中に教育をすることが出来る環境を作っているのだとか。


 僕が乗せてもらう馬車は食料品用で、乗っている商人も料理人を兼任している人達になる。

 兵糧を落とされないようにちゃんと護衛も付くけど、料理人達の戦闘能力も高いらしい。

 売り物ではないから運搬は自分達で行うので、ポーターの僕は最適とみなされたみたい。


 ――――――――――---‐748字・この馬車はほろの外側にも枠板が貼られています。


「じゃあ、まずは移動がてら何がどこに仕舞ってあるか覚えてくれ。補充の時に楽だからな」


 そう言った料理長の頭には黄色のゴーグル。

 何か見覚えが……あ、オーチェン狩りの人と同じ装備だ!……知り合いまたは同業者かもしれない。

 炭の束を馬車内の棚上の隙間に詰めながら了解する。


 種類別の箱の中、さらに仕入日の書かれた札もつけられている。

 古い順に使えるように工夫しているようだね。

 あと気になったことがある。

 棚は縦長のカラーBOX風なのだけど、並べられた棚同士の隙間にロール巻きされた布が挟まっていた。

 一つじゃなく隙間毎に二つはある。

 棚は上段でほろの枠板に結わえているので転倒防止ではない。

 商人さんにあの布は何?と聞くと、後でな。と笑われた。困ってるのを面白がってるね。

 後の楽しみにして置こう。


 人と物資が揃ったという事でキャラバンの隊列は管理塔をぐるりと回って大通りを下っていく。

 荷馬車には窓がないので御者台の方の暖簾のれんをめくって外を見る。

 いつも歩いてゆっくり流れていた風景があっという間に通り過ぎていく。


 ……あー何だろう。何かが無くなった感じ……一カ月程度しかいなかったのに寂しい?

 ……感傷的になってしまった。僕はこんなにこの街に愛着があったんだなぁ。


 無言で離れていく町を見ていると、ほろの上で同じくローブの人が町の方向を見つめていた。


 ☆★


 その後の一日の行程は順調だった。

 街道横に作られた野営地の一つに一泊して翌日の昼には一つ目の村に着く予定だと野営地に着いたときに教えてもらった。

 視界の半分は街道の為に拓けていて、あと半分は林が広がっていた。

 その野営地で馬車の車体で円陣を組み、中央部分で人々が暖を取っている。


 暖と言っても炎は作れないので(キリトピオルさんが火魔法使えるのは内緒)、料理に使った後の熱を持った炭に木属性の回復魔法を仕込んで熱を発散させて、その熱に当たる者に回復の効果を与えるみたい。


 ――――――――――---‐810字・黄色は血の色を黒く見せます。

魔法解説

瘤悌木リューテイモク

木の表面に瘤を作る成長魔法。

星の力の範囲で使い方により数を増やしたり、大きくしたり出来ます。

逆に引っ込めることも可能。

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