ど34……モンスターと呼玉《よびだま》
それから順に、寄生型の植物系モンスター(呼玉に苔が張り付くように植物が絡みついていたので物理的に引き剥がした=不快な奇声を上げられた)。
続いて狸みたいな小型のモンスター・ニットリーにも挑んだ。
前に出会ったテールラビットより一回り大きい。
苦戦しつつもアドバイスをもらいつつ一人討伐に成功した。
でもやはり捌くのは気持ち的に堪えた……ナイフのおかげで固い皮もすんなり切れるけど、血合の関係にはまだまだ慣れそうにない。
水魔法が使えると血を先に抜いてから開けるとか……残念。僕には無理。
……思わず目を背けて、うぬ~と唸ってしまった。
まだまだ精進が必要なようだ。
それでも何とか皮と肉と呼玉(白)としっぽに分ける。この狸はしっぽが対象部位に当たるらしい。
何とかこなしたところにキリトピオルさんが丸い鳥を捕ってきた。名前はターマゲットだそう……知らない名前。
「……」
思わずツッコミを入れたくなったが、僕は堪えた!!
この鳥は赤い呼玉を持つモンスターで、美味い上に野営の際には重宝されるとか。
狩りから料理に移行していく過程で呼玉についても教わった。
植物系モンスターは無色(風属性
草食系モンスターは赤色(火属性
肉食系モンスターは青色(水属性
水中モンスターは黄色(土属性
雑食モンスターは白色(音属性
無機物モンスターは緑色(木属性
を持っている。
そして呼玉を内に持っていても狂暴化しなかった者は精霊と言われている。らしい。
精霊になると体内の呼玉は自然に紫色に変わり、元の属性+夜行性になるそうだ。
「例外ですが、リルミドの植物系モンスターは各地域に精霊樹があり統括することで人を襲わないんですよ? 寄生型は別ですが」
リィシフルさんが竪琴を弾きながら言い、音色が終わると何か空気が変わった気がした。
不思議に思ってそのまま聞くと微笑まれた。
――――――――――---‐767字・ターマゲットは雷鳥です。雷(音)魔法を使います。……そう聴こえるんだもの……私のせいじゃない!
「風属性をお持ちなんですね。嬉しいです。
これは技スキルの【風海】で、私は音の響く空気の波の範囲を結界で覆います。楽器だと範囲を広げられます。
広げた音に星の力を乗せないといけないので調整に注意が必要ですが」
「食事中に邪魔者が入るのが嫌なんで、いつも頼んでるんだ」
当然のようにキリトピオルさんが言うけど、凄い!
見えない音に力を乗せる?……まだ僕には想像できないスキルみたい。
難しい顔をしている僕にリィシフルさんが苦笑した。
「これはやはり経験でしょうね。……折角ですから彼が呼玉を使う所を見学してはいかがですか?」
話を変えるように促されて見ると、キリトピオルさんがかまどを組んで中に薪を組み上げ終わったところだった。
周りを見回していた彼と僕の目が合って、手招きされる。
「いいんですか? 見ていても?」
「ああ。特に赤い呼玉を使うとこはなかなか見られないからな。他言されなければ減るもんでもない」
そう言って頭に被っていたバンダナを外して首にかけたよ。
現れた髪は予想通りの赤い髪。でもかなり癖が強いらしく多方向に飛び跳ねた天然パーマだ。
長さはバンダナで隠せるくらいの短髪なのに、天パだと長く見えるね。
ほうほうと天然パーマの様子に見入っていると、キリトピオルさんに首を傾げられた。
強い天然パーマが珍しいと言うと、見てるとこが違うなと笑われた。
どうして?
「俺はカルルヒの生まれなんだよ」
カルルヒ……あの墓穴を掘った火の精霊の守護を受けている国だね。
「人の髪の色は国色に近いほどその属性の星の力が強いと言われているんだ。そしてカルルヒは」
「確か……赤ですよね」
僕が町に来たキャラバンの旗の色を思い出して言うと、首は縦に振られた。
キリトピオルさんの話では、現在のカルルヒで赤い髪の子供が生まれると人攫いに子供を盗られると国中の親は警戒するほどの状況らしい。
――――――――――---‐770字・攫われた子はほぼ魔法を酷使させられる生活を送ることになる運命。
キリトピオルもそんな子供時代を送っていましたが、
既に過去の話なので安心してください。




