は33……モンスター退治とは
「とりあえず行動してみるのもアリだと思いますよ」
表情が曇ったままの僕を見てリィシフルさんがアドバイスを投げてきた。
とりあえず?
「私たちが付いて来たキャラバンは青星の輸入商なので納品と仕入れを終えたらジルミに戻るでしょうが、明日一日は最低でも滞在だとは聞いています」
「……やりたいけど一人では不安がある仕事とかあるなら、付き合えるな」
リィシフルさんが言い出してどうしたいのか把握したキリトピオルさんが後を引き継いだ。
え!?
「……モンスターと戦って勝つ……とか?」
おずおずと僕がささやかな望みを口に出すと、二人には温かな目で微笑まれた。
……何か恥ずかしい。
――――――――――---‐
翌日休みを取った僕は旅人の二人と外壁の外にいた。
何となく既視感……ああ~イフェリオちゃんと出かけた時だ。
●モンスター退治とは。
呼玉を体内に持つ害獣を退治して報酬を得ること。
「役所で指定された種類を狩る場合、持ち込み方は二種類。
一つ目が役所で指定した体の一部を数集めて提出する。
もう一つが狩った本体をそのまま提出する方法だ。
狩場でさばくか肉屋に持ち込んで(有料で)さばけば呼玉と毛皮や肉等の部位は狩った者の儲けになり,
本体のままだと体が大きいモンスターだと数を運べない上、体内の呼玉含めすべての権利は役所に持って行かれる」
そう淡々と説明してくれるのはキリトピオルさん。
「時たま丸ごとって指定があるが、そうでない場合は部位のみで集めるのが基本だ。
誰だって自分の手元にある物が金を生むのがわかってて安く売り叩く訳が無い。
そう言う訳で、まずはさばけるようになれ」
町では全く自炊していなかった僕は、新たなハードルに不安でいっぱいになった。
僕の様子にリィシフルさんが微笑んだ。
――――――――――---‐736字・ささやかな望みは前進の第一歩!
「内臓の無いモンスターは呼玉を取り出さないと止まらないので、そちらから練習しましょう」
「じゃあ、水場にいるアイツからだな」
連れて行かれた近くの川には半透明の生き物がウゾウゾと動き回っていた。
アバと言う呼玉の周りに水が集まって出来たモンスターだそうだ。意外な事に持っている呼玉は青。肉食動物系モンスターと同じらしい。
仮説では呼玉を持ったまま死んだモンスターからこぼれた呼玉が水に何らかの要因で寄生した姿ではないかと言われているそうだ。なので稀に他の色を持つ種が発見されるとか。
確かに初めての敵としては狩りやすいかも。
顔はないけど怖く見えない。
「アバの呼玉は外から見えるから狙いやすいです。呼玉の周辺の拳二つ分の部位は水薬の材料になるので持っていくと売れますよ。加減がわからない場合は大きめに取って持ち込むと良いです」
「アイツらは弱いから気負うことなく行くといい」
「はい!」
僕は言われるままアバに近づくと大きさがわかる。だいたい高さ60cm位かな?
持っていたナイフで呼玉に向かって突きを入れたのに若干体をずらしてかわされた!
それでも刺したナイフを切り上げると頭部が半分に割れた。
斬った感触は固めのゼラチン。刃を入れると裂ける感じがそっくりだ。
僕の脳内でアバはゼラチンと置き換わったからか、裂けた部分を空いた手で引き倒す事に躊躇しなかった。
それでも倒しただけではかなり暴れて、逃れようとするのを抑えつけるのにかなり苦労した。
「呼玉を取らないと此方のスタミナが切れて逃げられますよ!手早く!」
リィシフルからの指示が飛び、僕が抑え付けていた手を放して代わりにナイフを突き立て、空いた手を裂け目に突っ込んで呼玉を取り出すとアバののたうっていた体が完全に動きを止めた。
倒せたらしい。
二人に教わりながら売れる部位を切り出し、皮の袋に入れる。
呼玉は別の袋だ。一緒に入れるとまたアバになる可能性があるらしい。それは少し怖い。
――――――――――---‐809字・アバを倒した!コツは手早く!




