の31……黒旗のキャラバン
根元は柔らかいようでトゲが三本ほど一度に地面に転がり、トゲの無い部分が出来る。
それを見越した黄色いゴーグルに白い前掛けで鉈を握った人が前に飛び出し、隙間を狙って鉈を振り下ろす!
こちらからだと顔は見えないけど動きからして嬉々としている。
動きを止めたオーチェンに足をかけガッツポーズを見せた。
でもすぐ呼ばれたのか足元のオーチェンを扉の方に投げるとそちらに向かう。
全員の動きに躊躇が無い。
オーチェン雪崩が治まるとトゲの無くなった本体とバラされたトゲをを砦内に運び込む。
代わりに修理工たちが仕事を始める。面白い連携だと思った。
石が積み終わったら土魔法で隙間を埋めて固めるのだと誰かが言ってた。
資材運搬員は砦でお昼をおごってもらえるそうで、……毎日ほぼウニづくしだそうです……。
僕はあんまり好きじゃないんだけど……生と焼きは避けてハンバーグとそぼろかけ麺をいただいた。
せっかく作ってもらったけど内臓系は全般苦手です。
うまみを出す素材としてしか僕には認められない……。
町に戻る僕らはオーチェンのトゲの束を運ぶ仕事を引き受ける。この分も役所に収めればお金になって、わかっているからか皆率先して荷造りする。
僕は石を詰めてきた袋にトゲの束を詰めていく。この袋かなり効率がいい。
報酬をもらう段階になって、こんなに良い仕事が続く訳がない!と気持ちを引き締める自分もいた。
現在の宿も『ウォールタワー』なんだ。
事情を話したら、食事抜きにして部屋を狭いとこにすることで低価格に抑えてくれた。一人なので食事を簡素にすることは節約に効率が良かった。少し寂しいけどね。
時々豪華にする事も生活の中の彩りにできる!
――――――――――---‐696字・生ものは好みが分かれます
おかげで【夜鏡】の修練は進んでいるよ。
部屋に財布を置いて、わざと外で食事をすることで買い物のたびに鏡の出番。
【夜鏡】の熟練者が【影室】習得の条件らしいので、使う回数は多いに越した事はないね。
仕事して、スキルの修練して、食事買って宿で寝る。
そんな生活がマイナー化した頃、僕はふと思った。
……何か楽しい事ないかな。
バイトでお金を貯めるのは目に見えるけど、スキルの修練は目に見えないもので、時間もかかる事が僕の心を少し憂鬱にしているみたいだ。
魔法も面白いかもしれない。
そんな事を思って生活をしていると、町に僕が初め見るキャラバンが訪れた。
町に来たキャラバンは黒いベース型の旗だった。黒は全国展開する商家の色だそうでこの旗の家名はスフ。
各町で【プリークレット】という輸入販売の請負業者をやっているらしい。
星の数で種別がわかる上にどこの支店かが一目でわかるように星の方に国色が付いていて、このキャラバンの星は青。
その上今回のキャラバンには同行者がいた。旅人らしい。
彼らは吟遊詩人と剣士の二人連れ。
吟遊詩人の方がサラサラストレートの明るい金髪に深みのある琥珀色の瞳の長身の美人さんだ。男なのが不思議なくらい!
剣士の方は頭にバンダナを被っていて髪の全体は把握できないが見えている部分からすると赤い髪みたい。濃い紫水晶色の瞳は猫を思わせる。剣士だけど結構細身だ。
僕が二人をまじまじと見たのは宿である『ウォールタワー』に彼らが現れたから。
詩人さんは美人の自覚があるようで、宿代の値切り交渉をしてた。
スコッチさんがタジタジになってた。頑張れ!
ここを宿に決めたのはやはり見晴らしが良いからだって。話してるのを聞いただけだけど。
ちなみに今の僕の部屋は見晴らしの関係ない下の階の安い部屋。良い景色なら探せば見れる。
例えば『トランスポート』の三階とか。
あ、スコッチさんが食堂で一曲弾いてくれるように頼んでいるみたい。
普段はガヤガヤしている食堂に弦を爪弾く音が響くと、声が自然と静まっていく。
耳を澄ましちゃうのは人の好奇心ゆえかな。
中休み中の僕は今日はここでお昼にしよう。
スコッチさんの狙いに絡め捕られました!(笑)
――――――――――---‐894字・プリークレットは英語で血小板です。
ベース型黒旗キャラバンの家名の【スフ】は布の名前で通常はレーヨンと言いますね。
それに伴い素材の名前がそれぞれの国のプリークレット管理者の名前になる予定です。
登場したら説明を入れますね。




