19……炭←薪→板
2-19、0311投稿初日ユニ数17人。3/13までのアクセス数24回、ユニ数18回。
2-20、0313投稿初日ユニ数19人。3/13のアクセス数21回。
「目的の木こりの家はあそこよ」
ファイさんが指し示したのは町が広がっている山の後ろ、森を挟んだ向こう側に見える岩山だ。
よく見ると山の上から細い煙が何本も立ち上がっているのが見える。
「あの煙は?」
「炭焼きの煙ね。街の中や森の中では危ないから木の無い岩山に木こりの集落があるのよ」
「へぇ~」
遠そうに見えたが街道をまっすぐ進めば岩山行きの道もキチンと整備されていて、思ったより早く岩山に到着した。
まあ、おおよそ一時間くらいだと思う。
そういえばこちらの時計って見たことがないなぁ。
ファイさんに尋ねたら「太陽を見ればいいのよ」と言われた。僕の腕時計は隠しといたほうがいいのかもしれない……。
道中炭焼きについて聞いて驚いた。
火魔法が使えないばかりか、火を燃え上がらせる事自体が難しいらしい。
だから炭を使い調理に使用するんだそうだ。
製造は土属性の魔法を使うらしいけど、かなり高温にされた石で囲んで蒸し焼きにするんだって。
魔法の熟練度で製品に個人差があって、値段はピンからキリまであるらしい。
固い木で造られた炭は長持ちするから人気があるらしい。
「炭は特にうちの国の特産ってわけじゃないわ。どの国でも作ってる。皆が必要なものだから」
ファイさんのいう事はもっともだね。
炭作りに特化した国は国土が枯れ果てかねないよね。分担で正解だと思う。
その炭焼きの為の木の伐採で板や材木に使う木も作っているらしい。
僕はそこから安く譲ってもらうのだという話だ。
岩山を登って辿り着いた木こりの炭焼き村は、構えはあったが特に周りを囲う柵などはなくていくつも点在するドーム状のかまどと材木を置く小屋があるだけの場所だった。
尋ねてみたら、伐採してきた丸太を運び込む時に、柵があると邪魔なんだそうだ。
熱いかまどがあるから野生動物も近づいてこないらしい。
なるほどだ。
――――――――――----757字・火が無くても料理は出来る!
「こんにちは。マテバシーさんいます~?」
ファイさんが一つの材木小屋に声をかける。
するとすぐに小屋から枯葉色の髪のおじさんが顔を出した。髪型はいがぐりが少し伸びたようなベリーショート。
顔は優しげだったのだが、出てきてその上半身の筋肉に驚いた。
重労働特化したような体系だ。顔との落差に僕は反応に困って苦笑してしまった。
「おや。ファイーシャじゃないか、珍しいなこんなとこまで」
「押しかけてごめんなさいね。余り物でいいの、小さめの板がないかしら?」
「ん?」
ファイさんは持って来ていた背負子の図面を取り出して、この位の大きさで~と説明する。
ついでに僕も紹介された。付いて来ただけの僕は申し訳なさでいっぱいだったけど。
「出来るだけ予算を抑えたいのよ。良い素材はあるかしら?」
「ああ、サイズ指定の材木の切れ端なら薪小屋に放り込んであるが、それでよかったら見てみるか?」
「それで十分です。見せて頂いていいですか?」
僕もお願いして薪小屋に連れて行ってもらう。
後ろから付いて行くが、マテバシーさん重量級なのか……動きに重みを感じる。
そして歩くたびに何故か鈴の音が聞こえた。
よく見ると、腰に下げられた道具達とともに雫型の鈴がぶら下がっていた。
何か意味がある物なんだろうか? 特に聞きはしなかったけど。
連れて行かれた小屋……そこには思った以上に焼く前の炭候補が積み上げられていた。
「炭の形やサイズをこちらでは特にこだわっていないんですか?」
「良いとこに卸す分は良い形のを選ぶさ。でも普通の家で使う分はちゃんと燃えれば誰もこだわらない。安いのが一番だな」
「そうですか。でも売れるならここから僕が譲ってもらっても大丈夫なんでしょうか?」
「炭焼きだって労力を使うんだ。その前の段階で売れるなら、それに越した事はない。微々たるもんでもな」
そう言ってマテバシーさんは口の端を持ち上げて笑い、積まれている中から厚みのある板を一枚抜き出してきた。
――――――――――----803字・マテバシイは固い炭になる木の名前です。




