か113……食中毒の後は体力が落ちます
あとは手を放してほしいなと思っていたら腰に圧迫感を感じて、体をよじって見たらヤンツェダンモフが貼り付いていた。
もきもきと腰のベルトに沿って横腹付近まで来たところで、奴は僕の服に手をかけた。
上手いこと後ろ足の吸盤と口を使い上着をたくし上げ(その姿は尺取虫みたいだ)、出来たスリットの隙間から身体をねじ込ませていく。
「ちょ、ちょっと?」
ヤンツェダンモフは主にへその周りに吸盤状の足をぺたぺたしながらグルグルしてた。
くすぐったい。
何かに満足したのか服の中から出て来たヤンツェダンモフは、ベルトの上でシャキンと赤い棘と突き立てた。
それが合図だったのか、手が自由になって僕はホッとした。
『使者殿の食べた物を吸い出したので、以降この麻痺毒が表面化することは無いだろう』
そう声が聞こえて木の横を漂う黄色い物質が目についた。
僕が食べたスープ?
身体の中から取り出せたの?
信じられなくてお腹をさすってみる。
何となくお腹が空いてる気がする。
「これで毒の症状が出ないんですか?」
『ああ、大丈夫だ。ヤンツェダンモフに調べさせたがそれ以前の食料には毒成分がなかったようだしな』
あ、さっきのへそグルグルで腸の辺りを聴診していたのかな?
でも……良かった……足の力が抜けて木に寄りかかってズルズルと座り込む。
なんだろう身体から力が抜ける。震えも出て来た。
※身体を傷つけずに吸着を行ったため体内の星の力を強制的に消費しています。(無自覚)
「キュ~!(怒)」
『……若干は身体が取り込んでいる分もあるだろう。ここで休んでいくと良い』
「そうですね。時間経ってるし少しはあるかも……」
『だが使者殿がキチンと対策をしていたから、その程度で済んでいるのだよ』
「対策?」
『状態異常を軽減させる道具を身に着けているだろう?』
ちょっと考えて僕は腰に手をやった。
旅芸人の一座のソニカさんとお揃いで作った菱花弁模様のお守り根付が確か『外因性状態異常軽減』付だったはずだ。
――――――――――---‐826字・菱花弁模様は、見様で花弁が重なった薔薇みたいに見える模様だよ。(86話に絵入り)
エミュラは今服のベルトに通してあったはずだね。
うん、ちゃんと房飾りが手に触れているから付いてるね。
これが効果を発揮しているって事?
でも道具がキチンと仕事したのを初めて感じた。
それならこの今現在体が震えるのはどこから来てるんだろう。
「この震えは状態異常ではないんですか?」
「キュ~!(怒)」
『……身体を傷つけずに内容物を吸い出したため、使者殿の星の力も消費している。
急を要したのでな、伝えずに行ってしまい申し訳なかった』
あ~風邪の菌を追い出すのに熱を出して体力を使うみたいなもんかな?
タダでこんな処置してもらえるほど甘くないって事か。
「いいえ。僕には出来ない事でした。不安を取り除いていただきありがとうございました」
『そう言ってもらえると助かる』
精霊樹様の言葉を受け取り、僕はまだ震える身体を抱きしめる。
現状毒の脅威は去ってくれたけど、あのまま身体が麻痺していたらどうなっていたんだろう。
先生が悪意を持っていたら、どこかに売られていたかもしれない。
影室の利用価値を説いていたのが先生だし、在り得なくはない。
治安が緩いのは感じていたけど、契約とかあると言っていた先生がこんなことするとは思いたくなかった。
今までは運が良かったのかな?
……人が怖くなっちゃうな。
自然とため息が出てしまう。
すると上から木の実が落ちて来た。
皮の固いメグルの実だ。
という事はこの木はメグルの木なんだね。
木を見上げて、同じ名前なのに僕はこんなに堂々としていないなと落ち込んだ。
「僕はどうしたらいいんですか?」
「キュ~…」
顔を覆って吐き出すように言うと、オピが心配そうに鳴いた。
『……許されよ。誘優月』
精霊樹様の声が聞こえて、頭がぼんやりとしてくる。
僕に向かって魔法を?
精霊樹もモンスターの一種だから人を襲うのかな?
あ~木のモンスターがおとなしいのはリルミドだけだったね。
忘れてたよ……僕の意識は闇の中に落ちて行った。
――――――――――---‐800字・誘優月は強制睡眠魔法。
人でなくたって知恵と声のある生き物は魔法が使えます。(念話可)




