こ110……万能毒消しの作り方
まず思うのは傍に居てはいけない。って事かな。
でもここから逃げ出してその後どうする?
今は旅の途中だ、さらに現在は野営するくらい町や村から離れている。
受けた毒を癒す手段もわからない……いや待て、僕はスープの器を持って立ち上がると、先生に背を向けて離れながら鞄から旅人証を出した。
旅人証を額に当て、考える。
今まで受けて来た講習の中で毒に当たった時の対処法は無かったか?
特に料理講習で!
『サバイバル料理は絶対安全とは言えないのが難点よね。
だから食あたり等の毒物、状態異常を起こす毒物を緩和させる薬は作り方を覚えておくといいわよ』
あ、講師の言葉と一緒に材料を思い出した。
必要なのは……水、ピコーの原液、パイスの原液、ここまでだと気付け薬の材料。
それに加えて麻酔薬のアイハーブの原液、水を聖水にするプードスピコーの花弁。
アイハーブは口に入っても平気なオピヨンクリームで代用出来てもプードスピコーがない。
作り方は教わっただけで現物を見てもいない。
そんな薬に頼るのは普通ではない。
現在、内から湧いてくる恐怖から何もせずにはいられない為の現象としか思えない。
とりあえず食べかけのスープを気合いで粉化して(あちこち顆粒状なのは僕の精神状態の影響)捨てないで革袋に仕舞う。
証拠確保!
空になった器に手持ちのピコーとパイスを放り込んで食品用判別棒をすりこぎ代わりにすりつぶし、オピヨンクリーム(見た目はバター)を練り合わせる。
そこに泉の水を注いで液状化させれば完成。
プードスピコーが入ってない上に……この黄土色……飲みたくない色だね。
でも仕方ない。水の漏れない革袋に入れる。
そしてオピを手招き。
「キュ?」
「オピ。これを肩掛け鞄に入れておくから、僕が倒れたり動かなくなったりしたら飲ませるなり、ぶっかけるなりしてくれ。頼む」
オピはわかりやすく溜息をつくと頷いてくれた。
ふがいない主でゴメンよ。
――――――――――---‐801字・旅人証の記憶の引き出し効果発動です!
空の器を持ったまま先生のいる体温調整用のたき火の前に戻って、わざと目の前で鞄にしまうと今度は持って来た寝袋(ファイさん作)を出すとトカゲに登っていく。
「食べ過ぎて苦しいので先に休ませてください」
「大丈夫?薬とかは……」
「い、いいです。消化すれば治まる程度なので」
「そう?じゃあゆっくり休むといいよ」
被せる勢いで言ってしまったので不審に思われてないかとハラハラしながらトカゲに登り、籠に上ると見せかけて反対側に隠れる。
先生に悪意が無ければそれに越したことは無いけど、今の僕は先生と一緒に居たくないって気持ちが消えない。
籠の中には一応寝袋を残していく。誤魔化し用。
もったいないけど背に腹は代えられないよ。
しばらくは様子を見ながら森に向かってゆっくり離れていたけど、先生側に動きがないのを確認してからは走っていく。
とにかく隠れたい。
森に入ってからは草を揺らす音を気にしてしまい速度が遅くなったけど、その分後ろを注意できたから良しとしよう。
……もう木立でトカゲが見えないね。
もういいかなと近くの木の下に座り込む。
必死だったからあんまり気にしていなかったけど、こんなに動いたら毒の回りが早くなるかな?
あ、それはヘビに噛まれて血液に毒が入った場合か~。
僕が食べたスープの毒はどんな症状が出るんだろう……あ、考えてたら身体が震えてきた。
そんな僕を困ったように見ていたオピが、ふと顔を上げ普段は隠れている耳を上げて鼻をヒクヒクさせていた。
どうしたのか眼だけで追っていると、僕の頭に登り始めた。
頭に登ったオピの後ろ足の力が強くなったところを見ると、後ろ足で立ち上がっているのかな?
僕の頭を蹴らない様に転がって降りたオピは僕の足をタシタシ叩いて見上げて来た。
何だろう?
――――――――――---‐724字・寝袋は32話で購入した品です。




