11……森の木のあいさつ
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そんな訳で簡単な打ち合わせをした翌日の早朝。
僕はイフェリオちゃんと町の外にある森まで来ている。
学校もあるらしいが、実地訓練という登録を学校でしておくと出席扱いになるらしい。
後日その証明が必要になるが、求人の修了証のコピーを提出すればいいそうだ。
求人受けたのはそういう意味があったのか!
そして、フィロープの町は山の斜面に沿って造られているので山の裏側は大自然の森がそのまま残っていて、布のリュックを背負っただけの僕ら二人の前に立ちはだかっていた。
「まずは軽くてモリヤさんにあった木を探す。何かヒントになる事はある?」
「ヒントですか? 役に立つかわからないけどファイさんに僕の名前が植物と同じだと聞きました」
「そう? モリヤなんて植物あった?」
「あ~森谷は家名で、植物と同じなのは個人名の方です。周と言います」
「メグル? そう~なるほど。じゃあメグルの木を第一候補として探す!」
話を聞いてすぐイフェリオちゃんは足場の悪い森の中をスタスタと進んでいく。
そして、まず見せるためだと言って一本の白茶色の木の前で僕を振り向いた。
「これがメグルの木」
白茶色の幹で薄い広葉を茂らせたまだ若い木のようだ。
この木から枝をもらうのは、確かにかわいそうな気がした。
僕の感想を聞くとイフェリオちゃんも頷いて、もらうのは枝を剪定しても心配無い位の大きな幹の木にしたいそうだ。
「でも今の感想は森の木達には好印象になる」
あ~イフェリオちゃんは木の了承を取ってから枝をもらうんだろうな。
好印象なら良かった。
「森の木達は独特のネットワークを持ってて、嫌な相手が来たら森を迷わせた挙句放り出すとか、よくあるみたい」
それはおっかね~(恐ろしい)。
でも口にはしないよ。触らぬ何とかに祟りなし!
――――――――――---‐732字・森のトレントは人を迷わせる~よくある話。
「それで、メグルの木は軽い木なんですか?」
「軽いと一概に言ってもそれぞれの特性で軽さは色々~でもメグルの木は頑丈な方?」
「日用品なので丈夫なのは大事ですね。でも軽めだともっと嬉しいかな……」
最後の方は小さな呟きになってしまった。
初めての森で初めて会う感情を持った木から枝をくださいって頼むのに、そこまで図々しいのはどうかと思ったからだ。
頼み事には見返りが必要だと思うし、だからファイさんだってツケだけどお金取るわけだし。バイトだって労働に見合ったお金しかもらえない。
見返りか……植物に対しての見返りって何だろう……。
知らずに考え込みながら歩いていると、クイクイと服の裾を引っ張られた。
ん?
足下のイフェリオちゃんの手には太い蔓が握られていて、近くの木にグルグル絡まっている蔦らしい。
「もらえる宛が見つかったから、ここから崖を降る。付いて来て」
すぐ近くに低め(と言っても約三階建て相当)の崖があり、そこを降るらしい。
何だか凄いサバイバル感が増して来たんだけど……
イフェリオちゃんの話では、僕が考え込んでいた間にすでに森ネットワークを通し取引可能な木が選ばれたらしい。早いな。
でもそこまでは自力で行かざるを得ないという事だ。
そりゃそうか。向こうは木なんだし、動けないもんね。
「でもそんなに遠くではないんでしょう?」
僕的には森の中では右も左もわからないから、町まで帰り着かないなんて事にならないか心配してしまうのは許して欲しい。
「崖を降りる前なら見える。あの木」
イフェリオちゃんが崖の下にある更なる森の中程を指差す。
……見分けがつきません!
渋い顔で顎をつかんでいたらイフェリオちゃんが首を傾げて近くの木に寄って行った。
「そのまま下を見てて」
……えっと~森を見てればいいのかな?
取りあえず頷いて指差された辺りを見ていると、一本の若草色の木の葉だけが風もないのにワサワサと揺れ動きだした!!
な! 何あれ!!?
――――――――――---‐797字・固有魔法はバッシブ。トレントは踊る。
驚いて森から目を離し、イフェリオちゃんに目で訴えてみる。
「わかった?」
「イフェリオちゃんがやったの?」
「違う。あたしは身体を揺らしてって頼んだだけ」
「ええっっ!! 木って自分で身体を揺らせるんですか??」
……イフェリオちゃんによれば全部の木が出来るわけでもなく、会話して頼みでもしなければ動く事はないって!そりゃそうでしょうね。
人が通るたび木が揺れてたら(向こうは挨拶のつもりでも)ホラーだよ!
でも(あくまで幹や枝を揺らす程度でも)動ける木は長生きで大きく育つので素材としては一級品らしい。
おまけに木なのに心臓とおぼしき石を内包しているそうだ。
イフェリオちゃんは声が聞こえるから自分の手で伐採とかはかわいそうで出来ないって言ってたけど。
う~ん。それは確かに躊躇するだろうね。
「でも今回は枝だから大丈夫!」
「それで今回の目的地にあるメグルの木は友好的そうですか?」
「それは確認済。じゃなかったらこっちに居場所を教えてくれたりしない」
「なら少し安心ですね。目的地まではどんな感じですか?」
先程の話だと蔦を使って崖の下に降るって言ってたけど……僕はそこまでアウトドアを愛してはいないんだよなぁ。
「崖を降りてまっすぐメグルの木に向かうけど、途中で何かに遭遇する可能性もないとは言えない」
え!? 何か怖い動物とか居るのかな?
「ただの動物なら食欲にのみ従順だから怖くはない。モンスター化している奴に会ったらちょっと危ない」
「モンスターって?」
「木の中に石があるって言ったけど、動物にもそういうのがいるの。それがモンスター。普通の動物より凶暴で攻撃的。草食動物がモンスター化すると回避能力が上がるから倒しづらい」
「肉食獣だと?」
「攻撃能力が上がる。一撃でミンチの可能性もある」
「何ですかそれ! そんなのが居る森に入って大丈夫なんですか!?」
――――――――――---‐760字・モンスターは悪いものではないので魔物とは呼びません。




