1……宅配業者の倉庫・イラ森谷あり
20151225短編にて投稿開始。
1、1225投稿初日ユニ数20人。1/31までのアクセス数90回、ユニ数56回。
2、1227投稿初日ユニ数30人。1/31までのアクセス数75回、ユニ数49回。評1-10
今日も僕は段ボールを運んでいる。
よく言う宅配便の配達員を目指しているけど、まだ僕は倉庫での仕分けの仕事しかやらせてもらえない下っ端。
サッと降りて、サッと渡して、サッと路上から去る。
そんな見本のような動きは僕はまだ出来ないから……仕方がない。
でも……今日は何だか大きめの箱が多い。
しかも結構軽い。
何が入ってるんだろう?
思わず一番手前の箱の宛名ラベルを見る。
「かつら」
かつらか……確かに最近のかつらは軽いらしいからね。
バリエーションも多いとか……詳しいわけじゃないけど。
とにかく、せっせと仕分け。
この大きな箱たちは明日の朝一のトラックに乗せる分。
乗せやすいようにシャッターのすぐ前に積み上げて置く。
「お疲れ様です」
今日の集荷が終わり、制服から私服に着替えて帰り支度。
帰ろうとして、ふとガラス越しの倉庫を見た僕の前を何かの影が横切った。
小さな影だ。
ね、ねずみ!?
唐突にそう思った僕は倉庫の中に帰り支度のまま入って見る。
もし、段ボールをかじられたりしたらクレームが起こる。
もしそうなら阻止しなくては!!
居なかったら居なかったで僕の気が治まるから軽い気持ちだった。
明日用の段ボールは、あのかつらの箱の山以外は少数なのですぐ見回ることが出来た。
そして問題のかつらの箱たちの前に立つ。
食べ物じゃないから回るのは最後にした。
そして箱の間をひょいと通り過ぎながら横目で見た僕の前に……それがいた!
しかも前足を箱にかけ、張り付くような恰好をしている……ぎゃあ!!
僕はその時何も考えていなかった。
ただやみくもに身に着けていた肩掛け鞄を握りしめネズミに向かって振り下ろしていた。
その行動で軽い段ボールたちはバランスを崩し僕に向かって崩れ落ちてくる……班長ゴメンナサイ
――――――――――---‐749文字・思いつき投稿の開始。
「大丈夫?」
外から声がかかり僕は意識を浮き上がらせ、やっと気が付いた。
自分が段ボールを被っていることに。
わーっ!!お客さんの荷物がっ!!
瞬間的に段ボールの穴から頭を引き抜こうと両手で箱をつかんで違和感を覚えた。
手触りが違う……これって木材の表面な感じ。
持ち上げてみた重みで確信する。これって木箱だ。
倉庫で何故に木箱?
でもまずこれは被ったままじゃまずいでしょ。木箱を持ち上げる。
しかし、視界は回復しなかった。
な、なんと重ねて中に段ボールも被っていた。
箱を二重に被った男を見て、声をかけてきた人はどう思うだろう……恥ずかしい!
慌てて段ボールを外す。あれ? 眩しい……
「ほんとに大丈夫?」
よく聞くと女の人の声だ。あれ?うちの倉庫の従業員で女の人は電話番のおばちゃんだけのはず。
聞き覚えがない……
しかし明るい……倉庫にも電気はあったけど、それとは違う明るさ。
仕事終わりは夕方で、退社のあいさつは済ませた後に倉庫に入ったから……もしかして長めに気絶してて一晩経ってたとか?
だとしたら恥だ……
周りにはきっと同僚たちがニヤニヤ顔で見ているに違いない。
お客さんの荷物である段ボールをバラバラに崩した上、穴をあけるとか……クレーム必至だ!
ま、まずは班長に速攻で謝らないと!!
ネズミが出た事も伝えないと!!(言い訳に取られる可能性は高いが)
そうして覚悟を決めて次第に見えるようになっていく視界に目を瞬かせること数秒。
あれ?
僕は固まった。
どこ?ここ……。
僕の目の前には心配そうな顔をした知らない女性が一人。
そして周辺を見回してみて明らかになったのは、ここが女性向けのブティックの中だという事だった。
――――――――――---‐687文字・きっと②での彼の体感時間は1~2分だと思う。