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分配しましょう!

登場人物


・私

新卒の司書補助員。


・阿南さん

図書館の中堅の司書。


・沢さん

司書補助員3年目。


○───<◇>─<◆>─<◇>───○


初めての勤務日、午前中のレクリエーションを終えて休憩です。

私は実家が近くにあるのでお昼ご飯は家に帰って食べました。主に車で出勤している人は裏の控え室でお昼ご飯を食べるようですが、家が近くにある人は皆、家でお昼ご飯を食べるみたいです。はからずとも私もその一人でした。

家では祖父母が食事をしている最中で、それに混ざって私も食事を行いました。職場の雰囲気などを聞かれた記憶はあるのですが、1日目にして雰囲気を感じ取れるようであれば私は立派なエスパーです。祖父がつけたキャベツの浅漬けをあてに昼ご飯を食べて、ニュースを見ていたらすでにお昼休みも残りわずかです。祖父母に別れを告げ、また図書館へと向かいました。


今度は自転車で通勤することにしました。どうやら、普段から利用者と同じ駐輪場を使ってよいそうなので、利用者入口から一番遠い場所に止めることにしました。図書館の裏手には小さな公園があったことも、周りに少し大きめのマンションがあることもこの駐輪場に来て初めて認識しました。私はふるさとの街を知っているようで知らなかったようです。

朝に阿南さんに教えてもらったように番号を打ち込み、今回はそつなく入ることができました。

ふふん!

これで今後、入ることができずに路頭に迷うことはありません。

廊下をたどって事務所に行くと、各々がうたた寝をしたり日記を書いたり本を読んだり好きなことをしていました。この職場の昼休みはしっかり1時間取れるのでリズムが作りやすいです。


午後1時になると全員がカウンター集合です。今日は全員出勤日なので、集まると大人数になります。

「これからブックポストの処理をします~。自分のやりたい仕事がある人はそっちを優先してください~」

阿南さんの指示で数人が事務所に入っていきました。

さて、私たちは先ほど言われたようにブックポストのところへ向かいます。図書館には本を載せる専用のワゴンがあります。ここのワゴンは三段組みのキャスター付きになっており、各段が奥に向かって深く倒れていて本が落ちてこないように、背表紙が見やすいように工夫されています。

ごりょごりょごりょ~

移動させるだけですごい音がします。休みの図書館の分、その騒音が響きます。周りの皆さんが動じていないということは、この騒音は毎回のことなのでしょう。私もこの大きな音になれなければなりません。

ブックポストの回収窓口は利用者入り口である自動ドアの隣の扉にありました。外から見ると壁に埋め込まれているポストの口ですが、内側ではその口から回転滑り台が伸びており、クッションのついたカゴに行き着きます。いつの時間でも本を返却できるシステムも裏側から見てみるとアナログです。

「さぁ、拾いましょうか」

音頭を取ってくれたのは確か・・・沢さんという先輩です。自己紹介で系列の図書館にいたこともあるとおっしゃっていたはずです。数名で拾おうとしますが、カゴから拾うことができる辺は滑り台がない3つです。私は拾う係、沢さんは拾ったものを整えてワゴンに乗せる組になりました。数名で来ることは作業が早く終わるのでいいのかもしれませんが、この作業においては多すぎても動く場所が少ないのであまり意味が無いのかもしれません。

「まずは子供の本と大人の本を分けます。背表紙のラベルが黒っぽくないのが子供用です」

読者の皆様は図書館の本を想像できるできますでしょうか?図書館の本の背表紙には分類の番号などが書かれたラベル、本の裏表紙にはその本別個に割り振られたバーコードがついています。

「後でラベルの内容で分けますけど、今のところは子供図書担当の方々に引き継ぐものだけ外しましょう」

ひたすら背表紙を見て色のついたラベルのものだけを外していきます。大人用のものはラベルの枠が黒に近い紺色です。子供用のものは緑や黄色、赤色があります。これらは図書館の奥の部屋にある子供図書コーナーへ行くようです。中には紙芝居や大型絵本があってバリエーションがおもしろいです。先輩達は背表紙を見ずとも、タイトルやデザインだけで子供の本を分類していきます。

大人の本の中心は小説と時期柄の旅行本が多いです。大きな本はできるだけ上の段にまとめて、小さな文庫本は一番下の段に二列にして置いていきます。ほとんどの本が読んだことはありませんでしたが、旅行ガイドはよく見る銘柄なものばかりでした。

「この中には人気な本はありますか?」

せっかくですので先輩との会話がてら、質問をしてみました。人気の本を覚えておきたいと言うよりも、会話の糸口を見つけたかったのです。

「この村上海賊の娘はよくでてますね。返却したらすぐに次の予約に回っていくでしょう」

ふむふむ

分類の手を休めないように注意しながら先輩の話を聞きます。

「あとはコアなファンが多い村上春樹や宮部みゆきは予約が尽きません」

「やはり、映画になったりする作品は人気があるんですね」

「話題が本に反映されやすいので、この職場は世の中の流れがわかりやすいですよ」

なるほど、単に本を貸す仕事ではなく、そういった細かいところからも学ぶことができる職場なのですね。仕事の初日ですので意外な発見が多くて楽しくなっています。こうしてブックポスト返却本のピックアップは10分ほど続けられたのでした。


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