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お坊っちゃまは末っ子次男  作者: みやきみつる
9/11

恋のライバル

「あんたさあ、さっきの人と付き合ってんの?」


「ちがいますっ! 誤解で…私はただのアルバイトですっ!」


素奈子は慌てて否定する。


「そっかあ」


許嫁(フィアンセ)かあ…。

ちょっと彼女いないかもって思ったから…ショック大きい(涙目)


「まあ、許嫁って言っても、こっちも、まだデートもしてないんだけどさ」



「はあ」


「親同士のコネっていうかさ」


コネ???


「ほら、昔よくあったじゃん、テレビとかでも…」


「あ、親の決めた相手のことですか?」


「そう、それ〜!」


あ、そうなんだ(涙目)


「あー、常栄亮のことが好きなんだ!」


ひどい。


どうしてこの人は失恋した私に止めを刺すようなことを言うんだろう…。


「顔はあんまり、好みじゃないんだけど〜、親が見合いしろってうるさくてさあ」


はあ…。


「私とかお金持ちのお嬢じゃん? 親は変な虫がつく前に、追い出したいんだよね〜」


「はい」


「まあ、あんたもさあ、身分違いよりは手頃なの探して幸せになりなよ」


ムッ!!!!


「よ、余計なお世話ですっ!!」


素奈子は席を立ち上がる。


「……」


し、しまった〜。


「とにかく…こっちは邪魔されると気分悪いんだよね。大人しくしててよね、子猿さん」


「大島ですっ!!」


「私は牛田紅葉(もみじ)よっ!」


牛田紅葉は「ベーっだっ」と言って舌を出した。


くっそお〜(怒)

何が牛田紅葉だあ!!


お前なんか、ウシタウマコの方があってんじゃん!!!



******


「葉山さん、今ちょっといいか?」


「はい」


「お疲れ様です」


デザートを担当している料理人、葉山は亮を見ると、作業の手を止めて「お疲れ様です」と頭を下げた。


「社長さっきのデザートどうでしたか?」


「新作ですか?」


「はい」


「美味しかったよ、ココナッツとプリンは相性がいいんだね」


「はい、海外研修で行った香港で食べた、デザートを参考にして作りました」


葉山は黒髪を後ろで束ねている、龍角楼でただ一人の女の調理師だ。


「兄さん、このデザート、ランチで出すの?」


「そう思ってるよ」


チェーン展開している、お店以外はメニューを料理長と担当者で決めている。


「デザートだけでも、他と変わっていれば、また客足が伸びるだろうね」


「そうそう」


「し、社長…。お客様がお呼びでして…」


「私?」


「はい」


「あの…社長のお知り合いと、おっしゃっていまして…」


誰だろう?


亮は首を傾げる。


「連れてきた女の子じゃないの?」


「いいえ、それが…」


「まあ、行きましょう」


亮は兄の孝に「もう行くよ、ありがとう」と言って客席のあるフロアに向かった。



******


「あー、常栄亮だ」


あー、誰だっけな?


黒髪のボブで髪を真ん中から分けている、小柄だががっしりした体の女の横で、素奈子がふくれっ面をしている。


「失礼ですが…どちらでお会いしたのか、少々、思い出せなくて…」


仕事じゃないよなー?


「あー、お見合い写真見てないな〜」


なあに?


お見合い写真?


「私達、お見合いすることに、なってんのよ、お父さんとお母さんから聞いてないの〜?」


亮は記憶の糸を手繰り寄せる。


「………」


先月…。


(亮の回想)


「亮〜、叔父さんがねえ、頼みたいことがあるんだって〜」


「何?」


「うん、お見合いしないかって」


「えー、お見合いなんて、いいよー!」


思い出した…。


「すみません、それはお断りしたはずです」


亮の言葉を聞いて、素奈子のウロのようになった瞳は、再び輝きを取り戻す。


「何それー、そっちから話もってきたんじゃん」


「そうは言われても…」


「こっちのメンツ丸潰れよ!」


めんどくさーい…どうしよっか…。


「お付き合いしてる人がいるんです」


亮は素奈子の肩を抱く。


「彼女の大島さんです」


「嘘つき! さっきただのバイトだって言ってたよ」


「付き合ってます!」


素奈子は背筋を伸ばして、うわずった声で叫ぶ。


「さっ、行くぞ」亮は素奈子の肩を抱いて、不満を漏らす紅葉を尻目に、素奈子を店内から連れだす。


素奈子は亮に手をひかれて、亮の自宅前まで連れていかれ、車に乗せられる。


車が高速に乗ったところで、素奈子が口を開いた。


「あの、社長…私でいいんでしょうか?」


「何で?」


「私と付き合ってると思われたら、困るんじゃないですか?」


数秒の間が空いたあとに、


「そうでもないよ」


と亮が言うので、


素奈子は頬を染めて、亮が話しかけるまでの間、ずっと俯いていた。

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