恋
カウンターに一人、取り残された素奈子は残った焼きプリンを食べる。食べ終わった素奈子は、厨房に入ったまま、戻ってこない亮を待つことになった。
店内を見渡すと、四角いテーブルが14席くらい並んでいて、休日のランチタイムだからだろうか、どの席も人でうまっている。さっきメニューを取りにきたウェイターが店内をせわしなく、動いている。
素奈子はスマホを取り出して、自分が働いている会社の、ブログがあるかどうか、調べる。
ラーメンと居酒屋のチェーンがあることは知っていたが、他のお店のことは、ほとんど知らなかった。
会社概要とか経営理念のほかに沿革などが書いてあり、店舗情報のリンクを開くと、ずらりと直営店の情報が並んだ。
店は関東、名古屋、大阪、福岡などの都市部集中してあるようだ。
沿革を読んでいると、素奈子はあることに気がついた。
ラーメンのお店は、最初は郊外に作って、それから徐々に都市部に出店していたみたいだ。
ふーん、何か意味があるのかな?
(素奈子の妄想)
ライバル会社の居酒屋の偵察にきた素奈子と亮。
でも本当は、お忍びデート♡
二人はテーブルに並んで座り、注文した料理を食べる。亮はビールを飲んでいて、ほろ酔い気分だ。
「あなたは合コンでこういう所にも来たりするんでしょ?」
「合コン? ううん、誘われないから、行かないよ」
「そう」
素奈子が合コンに行かないと聞いて、亮は顔をくしゃくしゃにして、嬉しそうに笑う。
「可愛いな♪」
素奈子の頭をポンポンと叩く。
二人は見つめ合って、テーブルの下でお互いの指を絡ませる。
「もうそろそろ、出ようか…」と言って、亮は素奈子の手を離す。
「うん」と頬を赤く染めた素奈子も、素直に頷く。
店の外に出た二人は並んで歩く。
人通りの少ない、マンションの立ち並ぶ場所を通るとき、突然、亮が素奈子の手をひいて、通りから見えない場所に連れて行かれる。
「ここでもキスは出来るよ」
素奈子が顔をあげると、亮が素奈子の唇を奪う。素奈子目を閉じる。
二人は正面で向き合って、素奈子は腰骨のあたりに手を添えられ、長いキスをする。
素奈子が妄想に耽って、ぼんやりしていると
「子猿さん、じゃん!」
と、すぐ側で声がした。
素奈子が声の主を見ると、素奈子と同じくらいの小柄だけど、がっちりした体型の女が立っていた。
女は自分のことを、常栄亮の許嫁だと言った。