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お坊っちゃまは末っ子次男  作者: みやきみつる
6/11

ドライブ

実家にでも帰るか…。


亮は着ている服を脱いで、Vネックの白いTシャツとジーンズに着替えた。


スマートフォンが鳴る。


電話に出ると、素奈子だった。


「金曜日に、派遣会社にタイムシートを出さなきゃいけなかったのに、部長にハンコをもらうの忘れちゃったんです…」


素奈子は月曜の朝は学校があるので、出来れば今日中にハンコを押してほしいと言う。

電話番号は村田さんに聞いたそうだ。


亮は実家に帰るところでもあったので、素奈子の住む世田谷のアパートに寄ることにした。


持って帰ってきた、忌々しい「ひよっこ饅頭」の紙袋が目に入る。


会社に出勤してきたら、柔軟剤や液体洗剤を詰めて持って帰らせ、家に着く頃には手をビリビリさせてやろうか(怒)


亮はくすんだ青色のナイロンパーカーを羽織り、スニーカーを履いて家を出る。


駐車場に停めてある国産の愛車に乗り込んで、世田谷に向かった。



********


都道と国道を通って、20分くらいで素奈子の住むアパート前にたどり着いた。


素奈子は亮に言われた通り、アパート前に立って待っていた。


ナイロンのシャツにショートパンツ、サンダルを履いた素奈子が亮の車に近づく。


亮は車のドアを開けて、素奈子を助手席に座らせる。


「待った?」


「いえ、全然…。言われた時間に出てきて…立ってたのは一、二分くらいです」


「そう」


亮が手を差し出すと素奈子は、クリップボードに挟んだタイムシートを手渡した。


タイムシートは一日ごとに承認のハンコを押さなければならないらしく、空欄が並んでいた。


「空いてる所でいいの? 多いね…」


こんなに、押さなきゃいけないんだ…。


「いつも、まとめて押してもらってるんです」


安定感はないが、インクが付いているタイプの紙にポンと押すだけのハンコなので、亮はハンコをポンポンついていく。


最後まで押して、クリップボードを素奈子に返す。

素奈子は「ありがとうございます」と言ってクリップボードを受け取った。

素奈子はもう一度、お礼を言ってドアを開ける。


素奈子はドアを開けて、車から降りる前に、亮の私服を「センスがいいですね」と褒めた。


「まあね」


気の利いたこともいえるんだ。


「きょうは一日、休みなんだ」


素奈子は目を丸くする。


「ドライブ行こうか?」



********


「横浜ベイブリッジが見えてきたよ」


「わー! 大きい!これが横浜ベイブリッジ?!」


素奈子は子供みたいに、目をキラキラさせている。


二人の前には、白い柱が天に向かって伸びる吊り橋が見える。快晴の空に白い色が映える。


亮の横で素奈子がはしゃいでいる。


天気がいい日はドライブが楽しい。


亮も自然と笑顔になる。


亮の趣味はドライブと読書、お酒にゴルフだ。ゴルフとお酒は付き合いだと言ってはばからない。


高速を降りて、家に向かう間に亮は山下公園、マリンタワーなどの話をする。

話を聞きいた素奈子は「ふーん」とか「そうなんですか」「へえー!」とか感心して相槌を打っていた。


亮がちゃんと話しかけてくれるので、素奈子は癖である妄想をする暇がなかった。

ホテルの横を通ったとき、素奈子はホテルのバーで亮に口説かれる、自分を想像してニヤニヤした。


「車停めるから、先に降りてて」


亮は大きな店の前に、素奈子を降ろすと車を出して、見えなくなった。


「りゅうかくろう?」


お城の門のような入口の上に


龍角楼


と書いた看板が掲げてあった。

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