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お坊っちゃまは末っ子次男  作者: みやきみつる
4/11

金曜日の夜

営業会議が終わって会議室を出ると、エレベーターで丁度、素奈子に出くわした。


素奈子はエレベーターのボタンを押し、ドアを開けて、営業部長と亮をエレベーターに乗せる。


「おはようございます」


もう午後じゃねえか…。あと少しで就業時間も終わるぞ。


営業部長が素奈子に話かける。


「大島さん、仕事慣れた?」

「はい」

「学校終わってからでも、間に合うんだね」

「家に帰らずに、そのまま来てます」


いつも同じ時間に終わるわけじゃないだろ〜。


そんな会話をしている間に、会議室のある2階フロアから、3階に着く。


素奈子は、すかさずエレベーターの「開」のボタンを押して、二人を降ろすと、自身も二人のあとについて降りた。


「社長!」


亮は素奈子に呼び止められて、足を止める。営業部長も一緒に留まる。


素奈子は「ひよっこ饅頭」と印字された紙袋を亮に差し出す。

紙袋の中には、キチンと畳まれた白いワイシャツが入っている。

袋の中から、ほのかににフローラルな香りがした。


素奈子は「ご迷惑をおかけしました」などと頭を下げた。


部長が訝しげな顔をしていたが、説明が面倒くさいので、そのまま二人で社長室にに向かう。


研修会の報告を受けなければ、ならないからだ。


営業部長との面談が、済む頃には18時30分になっていた。


亮の会社も残業は、なるべく減らす努力をしている。

急ぎの仕事でなければ、19時には帰るように指示してある。


亮は他の人が帰ってからも、仕事をすることが多かった。


とにかく目を通して、おかなければならない報告書や資料が、山ほどあるのだ。



********


夜は悪友、宇佐美拓也と飲みに行くため愛車で目黒に向かった。


「車で迎えにくるなんて、珍しいな、飲まねえの?」


「お友達の家の駐車場を、貸してもらうんですよ♪」


「女のところか?」


「まあね」


「店の前で降ろすから、先入っててよ」


「ああ」


宇佐美は足元にある「ひよっこ饅頭」の紙袋を目ざとく見つけると、持ち上げて「なんだ、こりゃ?」と袋の口をひろげる。


ふわっと、フローラルな、いい香りがする。


「これ、持っていくのか? 着替え?」


「いや、それはうちの会社の清掃員の子が、洗ってくれたもんだ」


「ふーん」


「そういえば、この間の温泉旅行どうだった?」


「それがよ…押し倒されちゃって」


「へえ…」


「驚いてさ、開いた口が…塞がるんだよ……口に、おっぱい入れてくるから!」


「またまた」


亮は目尻に皺を寄せて笑う。


「ほんっとだって〜、信じてないだろ〜!!」


「わかった、信じるよ」


亮は苦笑いしながら、答える。


店の前で宇佐美を降ろして、恋人のマンションに向かった。



********


終わった…のかな?


反応を見ながら、しているけど最後が、イマイチよくわからない。


恋人のマンションに泊まった、亮は久し振りに彼女を抱いた。

商社に務めている子で、練馬区に実家のある子だが、一人暮らしをしている。

亮より二歳、年下だ。


彼女を見下ろしたままで、聞いてみる。


「うん、イッたよ」


大丈夫だったみたい。

とりあえず「可」だ。


ベッドの上で少し、まどろむと、そのまま寝てしまった。



朝になり二人で、朝食を食べる。


「両親に交際届けを出そうと、思うんだ」


彼女は口答え一つしない、大人しい子だ。まだ先のことだが、結婚するには申し分ない。


亮はコーヒーを飲みながら、彼女の返事を待つ。


彼女は、


「ちょっと待って、それは困る」


と眉を顰めて、落ち着いた声で答えた。


「………」


「交際してることは、黙っててほしいの」


「何で?!」


「じゃあ、もう付き合えないっ!」



********


自身満々で告白したのに、あっさり振られてしまった亮は、愛車を運転して自宅マンションに帰った。


車の中で少し泣いた。


昔、振った女が目の前で、メソメソ泣いたのを思い出した。


終わった女だが、可愛いところもあったと思えた。




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