灰かぶり姫
常栄亮は中華街にある人気、中華料理店の次男坊として生を受ける。
10歳上の長男、4歳上の長女、2歳上の次女の四人兄弟の末っ子だ。
おじいさん代から続く、中華料理店を切り盛りする両親は忙しく、一番上の兄も子供の頃から、店を手伝っていた。
必然的に家事は、残りの姉弟で分担しなければならない。
「亮! 部屋の掃除は済んだの?(私の)」
「ちょっとー、庭の草むしりがまだ終わってないじゃないのよー!」
「亮、私の代わりにトイレ掃除しておいてー」
自己中で意地悪な姉達は、自分の仕事を私に押し付けた。断ると砂を投げつけるとか、怖い幽霊話をでっちあげるとか…とにかく様々な嫌がらせを受けるのだ。
長女よりは四つも下なのに、姉二人の宿題をやらされることもあった。知能指数は高かったのだろう、小学校一年のときに高学年の子が読むような、本を読んでいた。
姉の教科書を見て、宿題の問題を解いていたのだ。
「宿題は自分でやらないと、バカになるぞー! バカだといい大学に入れなくて、いい会社に就職できないんだっ!! 」
「だって私達は可愛いから、お金持ちの男の人のところへ、嫁にいけばいいのよ」
「そうよー、可愛いとみんなが助けてくれるの」
姉達は宣言通り、お金持ちの男を見つけて、とっとと嫁に行った。嫁ぎ先から、料理が出来ない、気が利かないと言われることもなかった。あんな女に限って、やれば出来たりするのだ。
兄は店を継ぎ、私が大学生の頃にはテレビにも出演するような、有名料理人になった。
店も2号店、3号店とできるようになり、経営も忙しくなってくる。私は大学を卒業後、店の経営を任されるようになり、いまに至る。
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昨夜の事件のあと、亮の下した決定は
「えーっ!!! わ、私がクビ〜?!」
警備員の村田と共社長室に呼ばれた、大島素奈子に無慈悲な回答が
伝えられる。
理由は正社員を殴ったこと、村田に頼まれたからといって、勝手に行動したことが理由だ。
「警備員がいるのに、暴力まで振るったんだ。まあ、相手に非があるから、貴方が咎められるものではないんですけど…」
「しかし…社長、これは止む得ないことで…正当防衛ですよ」
「三上さんも解雇って…本当ですか?」
「彼女は少し、休んだほうがいいだろうし…事件のことも双方の弁護士を交えての話し合いになるだろうね」
「私達がクビで、池山みたいなのが、会社に残るなんて…理不尽よ!! 取り消して下さい!」
「社長〜、私からも頼みます。クビにしないであげて下さい」
「お金無いんです!!」
今時珍しい、苦学生か…。じゃあしょうがないや。
「貴方が平気なら…私は構いませんよ」
亮が素奈子にそう告げると、素奈子は八重歯を見せて笑った。
「ありがとうございます!」
素奈子は元気よく、お礼を言い、村田は頭を下げて社長室を出ていった。
あんなのもいるんだな…女子大生しては…
頭悪そうだな…。