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お坊っちゃまは末っ子次男  作者: みやきみつる
11/11

告白

「うーん、その人…やめたほうがいいんじゃない?」


素奈子は同級生の麻衣と聡と一緒に学校近くのフターバックスに来ていた。

最近元気のない素奈子を、心配した二人が誘ってくれたのだ。


「うーん…」


「新しい出会いを求めたほうがいいよ」


麻衣が言う。


「もっとさあ、素奈子のことを好きになってくれる人と、付き合ったほうがいいって!」


聡が言う。


「合コンとか参加してみたら?」


「出会い系サイトとかもいいよ、友達も使ってるって言ってたし」


「ちょっとー、出会い系はヤバイでしょー」


「そう? だって素奈子はエッチする相手もいたほうがいいよー」


「そんなところじゃなくても、出会いはあるよ! 素奈子、一人旅とかもいいよ」


麻衣と聡がどんどん言う。


「一人旅って…温泉?」


「ババアかよっ!」


麻衣が突っ込む。


「いいじゃん温泉、女一人よりもさあ、女二人のほうが、男も声かけやすいよ。二人で言ったらいいじゃん」


「えー、じゃあレンタカー借りてさあ、聡が運転してよ。三人で行こうよ」


「うん、それでもいいよー」


「ね、素奈子、そうしよー」


ひどい…。


「二人ともひどいよ…少しは私の気持ちも考えてよ」


「だってさあ、無理だってえー」


「俺も、もっといい人いると思うんだよねー」


「ほかの人も見て、気が合う人と付き合ったほうがいいよ」


「ほんっと、そうだよ」


ひどい…(涙目)


「でも、私と付き合ってるって思われても、迷惑じゃないって言ってくれたし…」


「うーん」


「とりあえず、今よりももっと、仲良くなりたいの」


「うーん」


素奈子は泣きそうな顔だが、二人はどうしても、素奈子の恋を応援する気持ちにはなれない。


社長に翌朝メールを打ったら、(風邪は良くなりました。食べるものはあります)と返事があって、それだけだった。


素奈子には二人の言うことは、もっともなことのようにも、聞こえる。

だから尚更、泣きたくなるのだ。


素奈子はか細い声で


「私、可愛くなかったのかな? アパートに来てくれたときも、ショーパン履いて頑張ったのに…」


と言ってることが変だと自分でもわかっているが、止まらなくなっていいつづける。


「社長に好かれてないんだ…私」


二人は困惑の表情で、黙って素奈子の話を聞く。


「私って…魅力的じゃないんだ…ブスなんだ…」


二人が否定しないので、素奈子はさらに落ち込む。


両方の手のひらで顔を覆って、素奈子は俯く。


わーん。


涙目の素奈子は心の中では大泣きだ。


「とにかくさ、合コン行こっ!」


「俺、セッティングしてあげるよ」


「元気出して、素奈子」


そんなこんなで、素奈子は人生初の合コンに参加することになった。



******


「社長、私、土曜日合コンに行くんです」


帰ろうとする社長を呼び止めて、素奈子は合コンに行くことを伝える。


「……おめでとうございます。たしか、初めての合コンですね。頑張って下さい」


「私…社長のことが好きなんです!」


モップを持ったままで素奈子が告白したので、亮は可笑しくなった。


「どうも…(笑) 」


亮は微笑みながら「お疲れ様です」と言い、素奈子の前を通り過ぎる。


「好きー…です!」


素奈子は亮の背中に向かって、もう一度、気持ちをぶつける。


「はい」


亮は笑顔で振り向いて、素っ気ない返事を返すと、そのまま立ち去った。



どうも。


はい。


(好きでいても、かまわないよ)ってことかな…。


……………そんなことないか。


麻衣と聡の顔が脳裏をよぎる。


「いい人はほかに、いるよー」


「出会い系サイトを使えよー」


ついでにウシタウマコ(牛田紅葉)も!


「身分相応なのと付き合えー!!」


三人の言葉が重なる。


「常栄亮は、あんたには無理よ(無理だ) ブスだから!」


ブスだから


ブスだから


(ブスだから)が脳内にこだまする。


う〜。


素奈子は葉を食いしばって、泣きそうなのを我慢したが、目尻から涙が溢れてこぼれた。女子トイレに隠れてひとしきり泣いた。


村田は別の階にいるのだろう、姿が見えない。


素奈子は涙を拭って、村田に泣いたことがバレないように、カバンに常備しているマスクを付けて、赤くなった鼻を隠した。

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