エピソード1-2:目標を定めよう~その2~
エピソード1-2:目標を定めよう~その2~
おとぎの城の前で、私はお姫様だった。
「チヨコ、オー、我ガ姫ヨ! 僕ト結婚シテクーードゥサイ!」
黒人の少年は、片膝をついて手を差し出す。
そこでとんでもないハイテンションの白人メイドは、彼の前に立ちふさがる。
「マイクロ王子、その前にお父上ウガンダ様のご命令をお忘れになったのですか。
この女が本当に我らゴンドワナ王国の姫に相応しいかどうか、チェックを。」
「ハーーーーッ! ソウデアッタナ! クワッ!」
黒人の少年は目をむき出しにすると私を上から下まで品定めし、一本指で私を差し雄叫びをあげる。
「コノオンナガアアアアアア、理想ノプリンセスカアアアア、ドゥウカアアアアア!!!」
ちょうどその時横を歩いていた黄色い犬の着ぐるみが、怯えた様子で遠くへ逃げていくのを私は横目で見つめた。通報されるかもしれない。
メイドが私に近づいて、電卓をアゴに銃のように突きつけ問いかける。
「体重を教えろ。さもなくば殺す。」
私はわらの家に閉じこもり震える子豚のように、そっと耳打ちする。
「70キロです。」
「うそをつくなー!!」
白人メイドは白雪姫の魔女のように顔に青筋を立てて怒り狂い、電卓で私の頭を何度も殴りつけ、私に真実の数値を問いかける。
私は、魔法の鏡が魔女にお前は二番目に美しいと恐れながら告げるような気持ちで、真実を告げる。
「・・・76よ。」
メイドは電卓にその数字を叩きつけた。
「コノオンナガアアアア、トップアイドルのぴちぴちの体、カドウカアアアア」
黒人の少年は、ジャクソン5のころのマイケルジャクソンのように全身をくねらせながら、さらに雄叫びを続ける。
メイドがそれに答えて、赤ずきんの狼のように躍り出る。
「身長を教えろ、さもなくば殺す!」
「153センチです。」
メイドはまた電卓に数値を刻む。
私はその電卓をおそるおそる覗き込む。糸車に手をかけた眠り姫のように(脳内のみ。外見は子豚)。
「マイクロ王子、出ました!」
「出タクワッ! リエータ! コノ女ガスーパーモデルノホッソリナ体カドウカ!!」
甲子園の観客席、9回裏応援団の応援のように、大股開きで体をしならせ、メイドは宣言する。
「この女のーー! Body Mass Indexは」
英語の部分だけ発音が流暢だ。
「32.5です。」
「オウマイゴオオオオオオオオオオオオ」
幼い頃のマイケルジャクソンが、いや、自称タケルがのた打ち回っている。
いや、メイドはさっきこの黒人の少年を、マイクロ王子と呼んでいた。
「ノオオオオオオオオ、ノオオオオオオオオ。アイキャントビリービット! リエータ!
チヨコ イズ シュワルツェネッガー カモシレナイ!」
気がつくと、周りに人だかりが出来ている。
(残念ね、これは公開プロポーズなんかじゃあ、ないのよ。)
私は運命を受け入れ、何か突き抜けたような余裕な様子で、哀しげに彼らを見つめた。
___続く。