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エピソード1-1:強い意志~その1~

~前回までのあらすじ~ 私は、稲田ちよ子、70キロ。痩せたい女子高生。あだ名はチョコ。憧れのまさる先輩(本名、江藤大えとうまさる)には50キロものダイエットに成功していたという秘密があった!先輩の部屋に二人きり、伝授されたのは真実のダイエット法…『カオスダイエット』!?

その時、鍵をかけてあるはずの部屋のドアが大きく開かれた___。


エピソード1-1:強い意志~その1~


名は体を表すという。

確かに私の名前だってそうね。

稲田ちよ子。あだ名はちょこだもの。太ってないとおかしいぐらいの名前だわ。

だけど・・・私の学校にはそれ以上に名が体を表す女子がいた。そして、今彼女は私の目の前にいる。


「天照さん・・・。」

「マリア!」


扉の向こうにいたのは、腰まで伸びるブロンドの髪、ハーフでモデルの背の高い女。その名も天照マリア。

そう、先輩の彼女だ。


「これには理由が・・・!」


彼女は名前どおりの圧倒的な神々しさで、赤いピンヒールを脱ぎ捨て、制服の胸元の赤いリボンを戒めを解くように抜き取り、豊かな胸元のボタンをこぼれんばかりに外して、黒いランジェリーを魅せながら、モナリザのような微笑を浮かべ、こちらへ歩いてくる。


(まさか、これが、憧れの修羅場か・・・!)


私は彼女が一足歩くたびに、打たれるであろうビンタや、食らわされるであろう回転蹴りを想像した。

きっとこんなに綺麗な人に打ちのめされるのは、少し気持ち良いかもしれない、と思ったりした。

これまでの人生、私の人生には何もなかった。いや、食べ物しかなかった。

恋人と喧嘩したとか、浮気されたとか言う、友達の恋話に相槌を打ちながら、羨ましいやら悔しいやらで、せんべいは進んだ。山盛りポテトフライは進んだ。パフェのスプーンは深くまで突き刺さった。

私を慰めてくれるのは、食べ物たちだけであった。

でも今私は、こんな素晴らしい美男美女に挟まれる形で、修羅場に巻き込まれるのだ。

死んでも本望だ!

そんなくだらないことを思っているうちに、マリアが私の目の前に来て、私に真正面から顔を突きつけた。


「この部屋、臭うわ。家畜の臭い。メス豚の臭い。」


マリアは赤い長い爪で、私の首を掴みあげる。まるで子豚をつまみあげるように。その爪が私の肉にメリメリと食い込んでいく。


「あなたはこんな女が好みなの?」


彼女は手に掴んでいたスーパーの袋の中から、おもむろに惣菜のとんかつを取り出し、私の口の中へ突っ込む。


「や、やめてくださ、モグ・・・モグモグ。」

「マリア! やめろ!!」


まさるが叫ぶと、マリアは真っ赤なルージュの唇を、U字に微笑ませて言う。


「見て、まさる!

豚がとんかつを食べているわ、いいえ、とんかつが豚を食べているのかしら。ああ、一体どこまでが豚で、どこまでがとんかつかしら、見分けがつかない。」


そうしてマリアは私をにらみつける。


「豚小屋にお帰り、メス豚。」


(ぶひーぶひぶひー!!)


私は声にならない声で鳴きながら、いや、泣きながら、まさるの部屋を逃げ出した。

後ろで、マリアの高笑いが聞こえた。


続く

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