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第10話「起動」

少し間があいてしまってすみません。この話でようやく第一部の核心へ迫ります。


ピー、と電子音が鳴り響き、赤い文字がテンキーの上にあったウィンドウに浮かび上がる。

「ダメ……開かない。ここだけロックが強固すぎるわ……」

「だろうな。ここが『神の間』。不可侵の領域だからだ」

 アルファとエミネは螺旋階段を上がり、神の間、その入り口まで到達していた。背後には二体のアイゼントルーパーが横たわっている。どちらもカメラアイと胸部の電源装置が破壊されていた。

「そんな……ここまで来て」

「どけ。ここからは俺の仕事だ」

 アルファは懐からあの巨大で無骨な銃を取り出す。

「……!」

 近距離で初めてまじまじとその銃を見て絶句するエミネ。

「目を閉じておけ」

 マジックバレットガン。この世界にはリアルバレットガンとマジックバレットガンの大きく分けて二種類の銃が存在する。前者は文字通り実弾を使用する銃のことだ。後者はエネルギー弾を使用する特殊なもので、威力を変えることなどができる前大戦での産物である。

 ただアルファの持つものは拳銃という規格から大きく外れたものであるのは、素人のエミネにもはっきりとわかった。彼の手にも収まりきらないグリップ、そしてやたら厚い銃身には十字架を模したような装飾がほどこされている。

 ズドン!

 

 扉が開錠用のテンキーごと吹き飛ばされる。ばらばらと瓦礫と粉塵が舞う中、二人は神の間へと進む。

「ここが……」

「『神の間』だ。神官でもそう易々と入れる場所じゃない」

 下層と同じく純白を基調とした、礼拝堂のような空間。ここにもパイプオルガンがあり、そのパイプが壁を伝っている。

そしてエミネの目を奪ったのはオルガンの前に鎮座した巨大な機械だった。ずんぐりとした胴体を四対八本の脚のようなものが支えている。胴体下部からは何本もパイプが伸び、それがオルガンとつながっていた。

「あれ……は?」

「……この世界の人間が『神』と崇めているモノだ」

『神』―――それは旧大戦中の思考型多脚戦車だった。ただそのことを知らないエミネは眉をひそめる。

「旧大戦の遺物だ、これもまた、な。大戦中は、学校で習ったかも知れないが、様々な兵器が生まれた。今の時代のものに比べたら……いや、おそらくそれまでの時代のものと比べても、最も発展したものが生まれたのだろう。その一つがこの思考型多脚戦車だ。自律式AIを搭載した兵器。自ら考え、より効果的な方法で戦争を行うための兵器だ。まぁ、正確にはこいつの後ろにある演算機が『神』と呼ばれているわけだがな」

「そ、そんなものが存在するというの……?」

「現に目の前にあるだろ」

 アルファの言葉にエミネは唖然とした。

『兵器』が『神』? この世界の人間は、こんな世界にした大戦の兵器を『神』としているの?

「驚くのも無理はない。こいつらは戦争で使われたものだが、その次の時代にまで使われることとなったんだからな。……旧大戦は世界のほとんどを焼き払い、戦争が終わっても世界は混沌としていた。その世界の統一のために用いられたのが思考型兵器とそのバックアップのための演算機だ。なにせ、そのころは人間よりも早く、緻密に物事を考えるまでに進化していたらしい。そして思考型兵器を保持していた軍部が世界の政治の実権を握ることにもなった」

「こんな……ものを……?」

 立ち尽くすエミネの横でアルファが冷静に、淡々と言葉を続ける。

「そう、こんなものだ。ただこんなものでも国家……世界政府の最高機密でもあるんだ、極刑は免れないだろうな」

「そんな! 私はただ――」

「残念。時間切れだ」

 アルファは扉を吹き飛ばした銃を持った手とは反対の手にも同様のマジックバレットガンを握った。

 

 ―ン――ヴヴヴヴゥゥゥ……………

 


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