それは正しい追放物語……の筈、だったのに。
伝説に描かれる様な、英雄達。そんな彼らの中に、一人だけ飛び抜けて駄目な奴が居た。それが、私である。
白い髪と水色の瞳を持つ、白狼族の故郷から飛び出して、問題を起こして追われていた所で英雄と呼ばれる前のパーティーの仲間達に拾われた。
何やかんやとありながらも実績を積み上げ、正攻法で英雄と呼ばれ始めた彼らの顔色は少し暗い。
「おい。本当に良いのかよ。レーウィンも、ラスィだって納得してねぇってのに。」
「仕方無いだろう?あの子は足手纏いなんだから。」
「ま、それで後悔しないってんなら良いけどよ。アイツも猫獣人の割には頑張ったと思うけどなあ。」
ピクピクと頭の上の三角耳が揺れる。ふあぁ、と欠伸を溢しながら伸びをして起き上がった。
もうこの宿には英雄パーティのリーダーとスカウトの男しか居ないらしい。
どうやら、私をここに連れて来たのも独断の様だ。成る程。休息期間に二人に連れ出されて街で遊んでいた時に、やけに財布の紐が緩いと思ったら、最後に良い思いをさせてやろうと言う彼らの心意気だったのか。納得したが、今の私にそんな価値は無いのに。
それよりも、二人とも、私の耳が猫よりも鋭く高性能な事を知らないんだろうな。
狼種にとってのマタタビとも呼ばれるサイロアベリー茶を鱈腹飲んで寝こけてしまった後の記憶が無い。
シャッ、と音を立てて開けたカーテンの向こうに見えた日の当たり具合からしても数時間が経過しただけと言う所か。
他の同種だったら半日以上は潰れていただろうが、祖母の仕込みでウチの系統は耐性が付いていたからそれだけで済んだのだ。と言うか、最近、毒慣らしもしていなかったとバレたら雷が落ちそうだ。またやるか、と、遠い目をして頭の裏を掻いた。
二人の気配がこの宿から無くなった。サイロアベリー茶を飲んでいた時に、重々しく話し出された通り、私は追放された様だ。正解だと思う。
「でも、べろんべろんに酔ってて記憶が無かったら泣きそうなものなんだけど。猫族だと思い込んでるから気付かなかったのかな。そこら辺も含めて好きだったんだけどな。」
さて、明日から何をするか決めないと。
私が居なくなった事で、魔法師は常に防御結界を私に掛けなくて良くなったし、スカウトは普通に死ぬ様な攻撃を避け切れない私を小脇に抱えて回避させなくても良いし、更には、他の仲間、いや、英雄パーティー全員のお荷物が居なくなった事で効率は上がるだろう。
ーーしかし、この時、英雄達も、そして、私自身も知らない誤算があった。
天狼とも呼ばれていた、白狼族の水色の目を持つ者にのみ与えられた加護の強大な力によって、これまで、彼らは、かなり楽をして旅をして来れた事を。
事実は闇に葬られるのか、はたまた、幸運バフが消えた英雄達が沈むのかはまだ誰も知らない未来の話。




